2014年1月29日

記事紹介:ノバルティス、白血病薬不正の隠せぬ証拠(東洋経済オンライン)

マスメディアは商売だからとりあえず風向きが悪い会社を叩けばいいのでしょうが、生死がかかっている患者からすれば、これでノバルティスが日本から撤退したらむしろそれを促した記事を書いているマスメディアをまとめて訴えたいですね。

ノバルティス、白血病薬不正の隠せぬ証拠 | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト:

この記事では製薬会社のみをたたいて医者側についてはあまり深堀して考察していませんが、医師主導治験自体が、のちの承認申請を前提として、薬物自体は企業から提供され、その後の引継ぎもスムーズになるように設計されているわけで、一回限りのゲームで終わらない以上、当然ながら企業側だけでなく医者側にも「薬効」を高く出したいインセンティブはあるはずです。

その観点では、医者の倫理を訴えても結局のところ利益の方向性が一致しているのだから実効性は薄く、アンケート回収を手伝うなどコントロールあるいはモニタリングコストの高いところでの線引きをするのではなく、その後のプロセスである承認申請の段階で審査機関たるPMDAに分析前のローデータまで提出させる(当然PMDAはそれに対応するだけの組織拡充が必要です)とか、事後に一定割合について抜き打ちでデータ回収方法の妥当性ヒアリングを行うだとか、そういったシステム全体としての再設計が必要なのだと思います。

2014年1月10日

記事紹介:CML悪化の仕組み解明?

「金沢大など、慢性骨髄性白血病悪化の仕組み解明」という題名の記事が日経新聞オンラインに出ていました。しかしながら、特に専門誌のフォローもないようなので飛ばし記事の可能性を疑っていましたが・・・

金沢大など、慢性骨髄性白血病悪化の仕組み解明 
2014/1/6 23:35日本経済新聞 電子版
(以下は記事より引用)
 研究チームはがん細胞を右の太ももの骨に植えたマウスを使い、詳しく調べた。がん細胞が出すCCL3の血液や骨髄中の量はいったん増え、左の太ももの骨にがんが転移した段階では減った。一方、CCL3を作らないようにしたがん細胞を移植すると転移が起こらず発症しなかった。
 (引用終わり)

元ネタらしい金沢大学のページがきちんとあり、研究論文もきちんと登録されているようです。

マウスのCMLモデルで、白血病細胞が産出するタンパク質CCL3が正常の正常造血幹/前駆細胞(hematopoietic stem/progenitor cells; HSPCs)を骨髄外に流出させてしまうため、白血病細胞が増殖するスペースが生じるメカニズムが特定でき、ヒトCML患者の骨髄内でもCCL3の過剰発現がみられるため、CCL3の発生を叩くことができればCML悪化を止めることができるかもしれない、ということのようです。

仮にこれが真実だったとしても、CCL3発現を止めて白血病細胞が駆逐されるわけではないとすれば(この点は説明では不明瞭ですし、ひょっとしたらまだ特定されていないのかも)、現状のチロシンキナーゼ阻害薬以上の効果(すなわち寛解ではなく完治)については期待薄なのではないでしょうか。

もしCCL3発現を止めることで白血病幹細胞が死ぬのであればこれは素晴らしい結果が期待できますが、いずれにせよ、これから適合する分子標的薬候補の化合物を色々と設計して、前臨床試験と臨床試験を通過して、となると早くても10年前後はかかるでしょうね。期待せず気長に待ちませう。

2014年1月7日

記事紹介:いよいよ第三世代のCML薬ボスチニブが日本にも到来

あけましておめでとうございます。無事に生きております。年末のニュースでしたが、いよいよ、日本のPMDAにも承認申請をするようです。ただし、ファイザー社のニュースリリースによると、実はすでに
「前治療薬に抵抗性又は不耐容のCML」を対象として、2013年12月に稀少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定
されていたようです。つまり、他の薬がダメだった場合には使えるようになっていましたが、それに加えて、ファーストライン(第一選択薬)としても使えるように、ということですね。
http://www.pfizer.co.jp/pfizer/company/press/2013/2013_12_25.html

(以下はニュースサイトより転記)
ファイザー 慢性骨髄性白血病薬ボスチニブを承認申請公開日時 2013/12/26 03:51


ファイザーは、12月25日、前治療薬に抵抗性または不耐容な慢性骨髄性白血病を適応として経口SRC/ABLチロシンキナーゼ阻害剤ボスチニブ(開発コード:PF5208763/SKI606)を承認申請したと発表した。同薬はファイザーの創製薬。今月、希少疾病用医薬品に指定されている。米国では12年9月に、EUでは13年3月に承認済み。

慢性骨髄性白血病は多能性造血幹細胞の異常により惹起される白血病。白血病細胞の増殖には、BCR-ABLチロシンキナーゼの恒常的な活性化が関与しているとされ、ボスチニブは、このBCR-ABL伝達系を阻害することで抗腫瘍効果を発揮する。

今回の申請は、海外および国内で実施されたフェーズ2/3に基づく。同社は、慢性骨髄性白血病でイマチニブ抵抗性または不耐容(2次治療)の患者、およびイマチニブ治療後のダサチニブまたはニロチニブ抵抗性または不耐容(3次治療以降)の患者で有効性が認められたとしている。

慢性骨髄性白血病の治療としては、現在、イマチニブ、ダサチニブまたはニロチニブによる薬物治療、または同種造血細胞移植が1次治療として実施されている。この治療で十分な治療効果が得られないか副作用などで投与中断を余儀なくされる患者がおり、同社は、「2次治療および3次治療以降のメディカルニーズは高い」と説明している。なお、国内の慢性骨髄性白血病の年間発症率は人口10万人に対して約1人とされる。