2014年10月29日

記事紹介:白血病薬研究で不適切関与、ブリストル・マイヤーズ (日経新聞)

今度はスプリセルを出しているブリストルも、臨床研究への不適切な関与で引っかかってますね。
製薬会社ブリストル・マイヤーズ(東京)は27日、自社の慢性骨髄性白血病の治療薬「スプリセル(一般名ダサチニブ)」に関する東京大などの臨床研究で、研究計画の作成などに社員が不適切に関与し「国の倫理指針に違反する疑いが強い」とする第三者機関報告書を公表した。(中略)報告書によると、社員が研究計画の下書きを作成し、計5千万円の寄付をするなど準備段階から労務提供や経済的支援をした。一方で研究計画書には「製薬会社からの資金提供はない」などと記載し、患者にも説明がなかったとみられる。ブ社役員は研究への社員の関与を認識しており、組織的だった。
URL:http://www.nikkei.com/article/DGXLZO78961770X21C14A0CR8000/

第三者委員会による調査報告書の本文はこちら(PDF注意)です。P56からの引用になりますが、以下のノバルティス(文中ではQ社)のグリベック(Q1剤)とタシグナ(Q2剤)との競争環境によるインセンティブの誘因がすべてを物語っている気もします。

CML は症例数が限られた疾病であり、国内で承認されている治療薬は、Q 社の Q1剤及び Q2 剤と、BMKK のダサチニブしか存在せず、その中で、本件臨床研究の準備が行われていた 2010 年末から 2011 年上半期頃は、Q2 剤及びダサチニブがファーストライン(一次治療薬)としての効能について製造販売承認を取得した時期であって、第一世代の Q1 剤から第二世代の Q2 剤及びダサチニブへの切替えがまさにこれから行われるであろう時期であった。このような大きな構図の中で、Q1 剤を投与している既存の患者を Q2 剤に切り替えるかダサチニブに切り替えるか、あるいは毎年限られた数しか発生しない新規患者について Q2 剤を投与するかダサチニブを投与するか、という「取るか取られるか」の激しい競争関係が Q 社との間に存在した。
もちろん、本件臨床研究に BMKK が協力した背景には、製薬会社として医師に対して薬剤に関するより幅広い情報を豊富に提供できるよう、副作用を含めた多様な視点からのダサチニブに関するデータを収集するという目的があったことは事実である。
しかし、他方において、以上のような Q 社との CML 治療薬市場における激しいシェア獲得競争の中で、患者に一定期間ダサチニブを処方して行われる本件臨床研究がそれ自体シェア獲得のための手段として利用されていた側面は否定できない。
(強調・下線は当ブログが追加)

ビジネスとして考えれば、一人の「お客」(という書き方をあえてしますが)を奪えば毎年数百万円以上の売り上げが立ち、製造原価は少なくほとんどが粗利でしょうから、それこそCustomer Acqusionに一人当たり数十万円を突っ込んでも全然ペイする、いや死なずに慢性化することを考えると数百万円を支払っても全然ペイしてしまいますね。これだけライフタイムバリューの将来価値が大きい事業だと、プリンタや携帯電話のようにイニシャルコストを下げてプラスそれしか使えないようにして囲い込むのが事業戦略としてはまっとうなわけで、それと倫理の問題をどうすり合わせるのか、人の生き死にをお金にするには、大組織であることが(イノベーションという観点からもですが)もうこの業界には向いていない気もします。

2014年10月24日

ボシュリフの副作用(2014年9月作成の添付情報より転載)

ボシュリフ(一般名ボスチニブ)の副作用等が含まれた添付情報がPMDAのサイトにアップロードされていたので中身をみましたが、いよいよ強い薬のせいか、ほとんどの例(93.7%)で下痢になっているのと、副作用も肝機能障害(60.3%)や心障害(6.3%)、出血(15.9%)などヘビーなものが多いようです。あと、「未治療の慢性骨髄性白血病に対する本剤の有効性は確立していない。」とあくまでセカンド・サードラインとしての有効性である点も目に留まりました。

以下、探すのが面倒な添付文書より転記しております。副作用比較まとめページも更新しておきました。
副作用
副作用等発現状況の概要

国内第I/II相試験において、安全性評価対象例63例中、63例(100%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。その主な副作用は下痢59例(93.7%)、発疹30例(47.6%)、ALT(GPT)上昇24例(38.1%)等であった。(承認時)
海外第I/II相試験において、安全性評価対象例570例中、560例(98.2%)に副作用(臨床検査値異常を含む)が認められた。その主な副作用は下痢453例(79.5%)、悪心237例(41.6%)、嘔吐196例(34.4%)等であった。(承認時)
重大な副作用1. 肝炎(頻度不明注1))、肝機能障害(60.3%)肝炎、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、ビリルビン等の上昇を伴う肝機能障害等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
2. 重度の下痢(12.7%注2)重度の下痢があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
3. 骨髄抑制(57.1%)血小板減少(33.3%)、貧血(31.7%)、白血球減少(27.0%)、好中球減少(27.0%)、顆粒球減少(頻度不明注1))等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
4. 体液貯留(9.5%)心嚢液貯留(3.2%)、胸水(7.9%)、肺水腫(頻度不明注1))、末梢性浮腫(頻度不明注1))等があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
5. ショック、アナフィラキシー(頻度不明注1)アナフィラキシーを含む過敏症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置を行うこと。
6. 心障害(6.3%)QT間隔延長(1.6%)、不整脈(頻度不明注1))、心筋梗塞(頻度不明注1))、心房細動(頻度不明注1))等があらわれることがあるので、心電図検査や心機能検査を行う等、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
7. 感染症(36.5%)鼻咽頭炎(23.8%)、胃腸炎(4.8%)、肺炎(頻度不明注1))、尿路感染(1.6%)、敗血症(頻度不明注1))等の感染症があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施する等、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
8. 出血(15.9%)脳出血(頻度不明注1))、胃腸出血(頻度不明注1))、膣出血(頻度不明注1))、眼出血(頻度不明注1))、口腔内出血(頻度不明注1))等があらわれることがあるので、定期的に血液検査を実施する等、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
9. 膵炎(3.2%)膵炎があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
10. 間質性肺疾患(頻度不明注1)間質性肺疾患があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
11. 腎不全(頻度不明注1)腎不全があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には、休薬、減量又は投与を中止する等、適切な処置を行うこと。
12. 肺高血圧症(頻度不明注1)肺高血圧症があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止するとともに、他の病因(胸水、肺水腫等)との鑑別診断を実施した上で、適切な処置を行うこと。
13. 腫瘍崩壊症候群(頻度不明注1)腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるので、血清中電解質濃度及び腎機能検査を行う等、観察を十分に行うこと。異常が認められた場合には投与を中止し、適切な処置(生理食塩液、高尿酸血症治療剤の投与、透析等)を行うとともに、症状が回復するまで患者の状態を十分に観察すること。
注1:海外で報告された副作用のため頻度不明。
注2:グレード3以上の副作用
その他の副作用
1. 皮膚(10%以上)
発疹(49.2%)
2. 皮膚(5%~10%未満)
そう痒症、脂漏性皮膚炎、ざ瘡
3. 皮膚(5%未満)
湿疹、皮脂欠乏性湿疹、白斑、光線過敏性反応、脱毛症、薬疹、皮膚乾燥、紅斑、過角化、色素沈着障害、全身紅斑、手足症候群、爪破損、丘疹、皮膚色素過剰、皮膚色素減少、蕁麻疹
4. 皮膚(頻度不明注)
多形紅斑、剥脱性発疹
5. 精神神経系(5%~10%未満)
頭痛
6. 精神神経系(5%未満)
傾眠、不安、浮動性めまい、味覚異常、不眠症、肋間神経痛、末梢性ニューロパチー、錯感覚、末梢性感覚ニューロパチー、可逆性後白質脳症症候群
7. 循環器(5%未満)
高血圧、浮腫、末梢冷感
8. 感染症(5%~10%未満)
気管支炎
9. 感染症(5%未満)
毛包炎、膀胱炎、感染、帯状疱疹、癜風、百日咳、呼吸器感染
10. 感覚器(5%未満)
結膜炎、眼乾燥、結膜充血、難聴、メニエール病、視神経乳頭浮腫、網膜色素沈着、回転性めまい
11. 感覚器(頻度不明注)
耳鳴
12. 呼吸器(5%未満)
咳嗽、発声障害、鼻閉、口腔咽頭痛、鼻漏
13. 呼吸器(頻度不明注)
呼吸困難、呼吸不全
14. 心血管系(5%未満)
心拡大、僧帽弁閉鎖不全症、心室性期外収縮
15. 心血管系(頻度不明注)
心膜炎
16. 血液(10%以上)
リンパ球減少(31.7%)
17. 血液(5%~10%未満)
好酸球増加症
18. 血液(5%未満)
フィブリノゲン増加、INR減少、INR増加、プロトロンビン時間延長、プロトロンビン時間短縮、白血球増加
19. 血液(頻度不明注)
発熱性好中球減少症
20. 消化器(10%以上)
下痢(93.7%)、悪心(36.5%)、嘔吐(36.5%)、腹痛、口内炎、胃炎
21. 消化器(5%~10%未満)
便秘、消化不良、歯肉炎
22. 消化器(5%未満)
腹部膨満、肛門周囲痛、口内乾燥、食道炎、歯周炎、腹部不快感、裂肛、口唇炎、消化管びらん、舌炎、口腔内白斑症、便潜血、歯痛
23. 消化器(頻度不明注)
鼓腸
24. 代謝(10%以上)
食欲減退(22.2%)、低リン酸血症
25. 代謝(5%~10%未満)
アルブミン減少、カルシウム減少
26. 代謝(5%未満)
カリウム減少、ナトリウム減少、高脂血症、総蛋白減少、アルブミン増加、カルシウム増加、クロール減少、コリンエステラーゼ減少、脱水、高血糖、抗利尿ホルモン不適合分泌
27. 代謝(頻度不明注)
高カリウム血症
28. 膵臓(10%以上)
リパーゼ増加(20.6%)
29. 膵臓(5%~10%未満)
アミラーゼ増加
30. 膵臓(5%未満)
アミラーゼ減少
31. 腎臓(10%以上)
クレアチニン増加
32. 腎臓(5%~10%未満)
腎機能障害
33. 腎臓(5%未満)
BUN増加、尿中糖陽性、尿中蛋白陽性、尿比重異常、尿酸増加
34. 筋骨格系(5%~10%未満)
クレアチンホスホキナーゼ増加
35. 筋骨格系(5%未満)
クレアチンホスホキナーゼ減少、背部痛、筋肉痛、関節痛、筋力低下、変形性関節症、骨壊死
36. 筋骨格系(頻度不明注)
骨痛
37. その他(10%以上)
疲労、発熱、体重減少
38. その他(5%~10%未満)
LDH増加、胸痛、血尿
39. その他(5%未満)
インフルエンザ、感覚消失、膀胱癌、悪寒、薬物過敏症、耳新生物、寝汗、胸膜炎、関節リウマチ、結膜出血、鼻出血、喀血、皮下出血
40. その他(頻度不明注)
無力症、疼痛
頻度は、国内第I/II相臨床試験に基づく。
注:海外で報告された副作用のため頻度不明。



2014年10月2日

第三世代ボスチニブがついに日本市場に

ファイザーのニュースリリースによると、9月26日付でボスチニブ(製品名ボシュリフ)の製造販売承認が得られたようです。アメリカで2012年9月、EUで2013年3月に承認されたうえで、日本で申請されたのが2013年12月(承認まで9か月、ただし同月に「前治療薬に抵抗性又は不耐容のCML」対象にオーファンドラッグ認証済み)、というのはファイザーにとっての優先順位を物語っているようで残念です。それでも、さらにCML患者、とくにグリベックもタシグナもスプリセルもダメになりそうな方にとっては朗報ですね。