2013年5月18日

がん細胞を生む「がん幹細胞」-白血病で薬剤候補化合物、機構解明が治療のカギ(日刊工業新聞)

抗がん剤で完治しないのは冬眠状態になっている白血病幹細胞があって、その状態を維持するたんぱく質を特定できたので、あとはそのたんぱく質を阻害するプロセスと化合物を特定して、通常の抗がん剤と一緒に飲めば完治するかも、という話ですね。生きている間には、CMLは本当に普通に完治する病気になりそうです。

以下日刊工業新聞より転載。
がん細胞を生む「がん幹細胞」-白血病で薬剤候補化合物、機構解明が治療のカギ
掲載日 2013年5月18日
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 がん細胞を生み出す元になる 「がん幹細胞」。 最近、血液のがんである白血病のがん幹細胞 (白血病幹細胞) に関連して、理化学研究所と九州大学から研究成果が報告された。 がん幹細胞を攻撃することで、がんの再発を防ぎ、根治に結びつくと期待されている。(陶山陽久)
 今月、急性骨髄性白血病 (AML) の原因となる白血病幹細胞を死滅させる化合物を特定することに、理研統合生命科学研究センターの石川文彦主任研究員らのグループが成功し、米科学誌に発表した。 既存の抗がん剤で白血病のがん細胞を攻撃しても、白血病幹細胞が残存していると再発の原因になると考えられており、今回の化合物は再発を繰り返すタイプの AML に有効となる可能性があるという。

投与した化合物の濃度に応じて患者
由来の白血病幹細胞(黒い塊)が死
滅(=理化学研究所提供)
 白血病幹細胞を標的にした治療法の開発に取り組んでいる同グループは、 2010 年に白血病幹細胞に特徴的な 25 種類の標的分子を見つけていた。 今回はその中で、リン酸化酵素 「HCK」 の働きを阻害する化合物を数万種類の候補化合物から特定した。
 わずかな投与量でも、効果的に白血病幹細胞を死滅させることができ、 「 HCK 以外の酵素活性には影響を与えにくいため副作用も少ないと考えられる」 (石川主任研究員) という。
 国立がん研究センター研究所造血器腫瘍研究分野の北林一生分野長によると、既存の抗がん剤で 8 割の AML 患者は病状が良くなる (寛解) が、そのうち半数は再発するという。 そのため、 「白血病幹細胞を標的にすることで根治に結びつく可能性がある」 (北林分野長) と指摘。 ただ、 「同じ AML でも発症原因の遺伝子変異の仕方でさまざまなタイプがあり、タイプに合わせた治療法や治療薬が求められる」 (同)。
 がん幹細胞に既存の抗がん剤が効きにくい原因は、がん幹細胞はがん細胞と異なる細胞周期を持ち、普段は冬眠状態のようになっているためと考えられている。 九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らのグループは、慢性骨髄性白血病 (CML) の原因となるがん幹細胞に関して、冬眠状態の維持に働くたんぱく質 「Fbxw7」 を特定したと 3 月に発表した。
 同たんぱく質を阻害することでがん幹細胞が静止期を脱してがん細胞になり、既存の抗がん剤治療や放射線療法が有効になると期待される。
 がん幹細胞の存在は胃がんや肝臓がんなどさまざまな臓器に発生するがんでも報告されている。 一方、がん幹細胞の詳しいメカニズムはよく分かっていない。 横浜市立大学の梁明秀教授はヒト iPS 細胞 (万能細胞) を使い、がん幹細胞を人工的に作り出すことに成功しており、今後、こうした技術を応用してがん幹細胞のメカニズム解明と新たな治療法の開発が求められている。