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2015年9月11日

フラワー・オブ・ライフ(著:よしながふみ)に出てくるのは「どの」白血病か

「白血病」にかかり、姉からの「骨髄移植」を経て高1に復帰した主人公・春太郎を中心に、高校一年生の一年間を書いたよしながふみ先生の名作「フラワー・オブ・ライフ」(単行本版で全4巻、文庫版で全3巻)を読みました。以下、クライマックスについてネタバレがありますので未読の方はこのまま本屋に行ってご購入・読破の上でご笑覧ください。


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CML患者としては、どの白血病なのかが一患者としては気になるところであります。単行本版1巻の出版年月が2004年4月なので、慢性骨髄性白血病なら既にグリベックが2001年に承認されているのでおそらく造血幹細胞移植には至らないでしょう。とすると、「急性白血病と慢性白血病の比は約4:1で」あり、「急性白血病の内、骨髄性とリンパ性の比は、成人では約4:1、小児では逆に約1:4」であることから、マンガのケースは小児でもあるので急性リンパ性白血病(ALL)でしょうか(日本成人白血病治療共同研究グループ) 。

小児ですと、現在では「小児の急性リンパ性白血病は、現在では90%が治癒可能になっており、そのうち70%以上は化学療法のみで治癒します。残りの20%弱は、造血幹細胞移植を併用して治癒」するそうです(gooヘルスケア)。残念ながら移植後の生存率までは調べられませんでしたが、概ねマンガの示すところ(5年90%)あたりとすると、初期のイマチニブの結果(7年93%)に近いものがあります。(ノバルティス, 2008年)
「死亡率は一割」という言霊(フラワー・オブ・ライフ (4) , 2007年)

このクライマックスのシーンではその主人公の受け止め方がなんで自分が告知されたときとこんなに違うかな、と一瞬違和感がありましたが、あくまで骨髄移植という大変な選択をしたうえでのこの率なので、ただ毎日グリベックを飲むだけの自分が受け止めた「7年で1割が死ぬ」という確率論とはまた全然違うんだろうなとすぐに思い至りました。

同じ「白血病」患者でもこれだけ受け止め方が違うということでしょう。2015年の今ではグリベック服用のCML患者の死亡率は一般集団と変わらないという研究結果がいくつもあり、副作用さえひどくなければ気を病む必要が全くないので、そのギャップもあると思います。


でも、ここでのタイトルの意味を明らかにするくだりは本当に見事でした。
「10%なんてあんまりだ」という心の声(フラワー・オブ・ライフ (4) , 2007年)
(都立)高校生のいい意味でのきゃぴきゃぴ感をずっと描いてきた「フラワー・オブ・ライフ」という華やかなタイトルに実は込められていた死との対比をここで差し込んだからこそ、それを飲み込んだ最終回の春太郎と親友・翔太のやり取りと、最後の桜の散る下を歩く二人は、タイトルそのままの意味にふさわしい美しいエンディングでした。入学式を「グローバル・スタンダード」に合わせて9月にという議論もありますが、別れと出会いの季節に桜が重なることを考えると、やっぱり3月卒業、4月入学がうつくしいようにおもえてなりません。

クリエイター(マンガ家)になること、家族との関係、友人関係、等々、短い4巻の間にぎゅっと無理なく詰め込んだ名作だと思います。よしながふみ先生、素晴らしい作品をありがとうございました。
桜の散る下を歩く二人(フラワー・オブ・ライフ (4) , 2007年)

2015年7月6日

記事紹介:低量被爆は白血病のリスクを高めるのか(毎日新聞)

毎日新聞の記事、「白血病:リスク、低線量被ばくでも増 欧米30万人調査」を読んで、本当にそうかと確認するため元の論文に当たりました。
(以下引用、下線は筆者)
チームは過去約60年間、フランスと英国、米国の原発や核燃料施設などで1年以上働いた約30万8300人の健康状態と被ばく線量の関係を統計的に分析した。結果は、被ばくがなくても白血病を発症する可能性を1とする「相対リスク」を考えた場合、1ミリシーベルトの被ばくごとに相対リスクが1000分の3程度上昇するという内容。100ミリシーベルト以下の低線量でもリスクはなくならないとした
高線量でのリスク増についてはもはや科学的には異論がないところであるので、果たして低線量でもリスクが線量に比例するのか、それとも身体の治癒能力がまさり低線量ではリスクが増えないのか、といった論で二分されていると理解していました。

元論文はおそらくこちらです。
Ionising radiation and risk of death from leukaemia and lymphoma in radiation-monitored workers (INWORKS): an international cohort study

そして問題のチャートがコチラ。横軸が累積線量(cumulative radiation dose)、縦軸が相対リスク( a 2-year exposure lag assumption and death caused by leukaemia excluding CLL)になります。
large img
Relative risk of leukaemia excluding chronic lymphocytic leukaemia associated with 2-year lagged cumulative red bone marrow dose

上下の幅は、相対リスクの90%信頼区間(統計的に10回に9回はこのレンジ内に収まる)ですが、論文では低線量と白血病の相関関係の強い証拠と結論付けていますが(this study provides strong evidence of an association between protracted low dose radiation exposure and leukaemia mortality.)、90%の統計的有意のレベル(10回に1回の誤差の可能性では高すぎるという判断で、通常は95%ないし99%というより高い信頼区間でサイエンスの議論はなされる)でも100mGy以下で傾きがゼロ(=低線量ではリスクが増えない)という仮説をこれでは棄却できていない要に見えます。

こういう議論は、一般記事になると漏れてしまうところですが、政策判断をする上では重要なことだと思うので、論文が結論付けるままのほぼコピペではなくもう少し正確ないし丁寧なコミュニケーションを、少なくとも大手マスメディアには期待したいところであります。

2014年6月26日

記事紹介:被爆2世:白血病発症に差 「早い誕生ほど危険」(毎日新聞)

白血病の発生率は人口10万人あたり6.3名(日本成人白血病治療共同研究グループ)、人生80年とすれば生涯発症率は0.5%弱(約200名に一人が罹る)になる。これと99%水準で統計的に有意に差があるというためには、それなりのサンプル数がいるよね(たとえばある集団の発症率が母集団平均より+1%だとすると、ある集団に必要なサンプル数は約800;+2%だと約300、+3%だと約200)

ある程度大規模な被爆2世の追跡調査でない限りは、文中にあるとおり、「2世への遺伝的影響がない」と言われてることを否定できないことはわかるものの、周りのサンプルバイアスではどう考えても身体が弱い気がするんだがなぁ。殆どの方が亡くなっているだろうし、今後どこまで追跡調査をできるのか、頑張ってほしいです。
被爆2世:白血病発症に差 「早い誕生ほど危険」
毎日新聞 2014年06月01日 23時00分
 白血病を発症した広島原爆の被爆2世のうち、父親が被爆し、戦後早い時期に生まれた人ほど、発症の危険性が高いとする研究結果を、鎌田七男・広島大名誉教授(血液内科学)らの研究グループがまとめた。1日に長崎市であった原子爆弾後障害研究会で報告した。
 鎌田氏らによると、原爆投下の1〜15年後に生まれた被爆2世の白血病患者54人ときょうだい95人の計149人について、親の被爆から誕生日までの日数などを分析。父が被爆した2世のグループで、被爆に近い時期に生まれた子どもほど、白血病にかかる確率が高い傾向があった。父親の被爆から誕生までの時間が経つほどこの傾向は弱まったという。
 原爆放射線の遺伝的影響については、日米共同研究機関・放射線影響研究所などが「認められない」としている。鎌田氏らは「2世への遺伝的影響をただちに示すものではないが『影響がない』とも言えないのではないか」と話した。【小畑英介】
出典:http://mainichi.jp/select/news/20140602k0000m040093000c.html

2014年1月29日

記事紹介:ノバルティス、白血病薬不正の隠せぬ証拠(東洋経済オンライン)

マスメディアは商売だからとりあえず風向きが悪い会社を叩けばいいのでしょうが、生死がかかっている患者からすれば、これでノバルティスが日本から撤退したらむしろそれを促した記事を書いているマスメディアをまとめて訴えたいですね。

ノバルティス、白血病薬不正の隠せぬ証拠 | 産業・業界 | 東洋経済オンライン | 新世代リーダーのためのビジネスサイト:

この記事では製薬会社のみをたたいて医者側についてはあまり深堀して考察していませんが、医師主導治験自体が、のちの承認申請を前提として、薬物自体は企業から提供され、その後の引継ぎもスムーズになるように設計されているわけで、一回限りのゲームで終わらない以上、当然ながら企業側だけでなく医者側にも「薬効」を高く出したいインセンティブはあるはずです。

その観点では、医者の倫理を訴えても結局のところ利益の方向性が一致しているのだから実効性は薄く、アンケート回収を手伝うなどコントロールあるいはモニタリングコストの高いところでの線引きをするのではなく、その後のプロセスである承認申請の段階で審査機関たるPMDAに分析前のローデータまで提出させる(当然PMDAはそれに対応するだけの組織拡充が必要です)とか、事後に一定割合について抜き打ちでデータ回収方法の妥当性ヒアリングを行うだとか、そういったシステム全体としての再設計が必要なのだと思います。

2013年5月18日

がん細胞を生む「がん幹細胞」-白血病で薬剤候補化合物、機構解明が治療のカギ(日刊工業新聞)

抗がん剤で完治しないのは冬眠状態になっている白血病幹細胞があって、その状態を維持するたんぱく質を特定できたので、あとはそのたんぱく質を阻害するプロセスと化合物を特定して、通常の抗がん剤と一緒に飲めば完治するかも、という話ですね。生きている間には、CMLは本当に普通に完治する病気になりそうです。

以下日刊工業新聞より転載。
がん細胞を生む「がん幹細胞」-白血病で薬剤候補化合物、機構解明が治療のカギ
掲載日 2013年5月18日
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 がん細胞を生み出す元になる 「がん幹細胞」。 最近、血液のがんである白血病のがん幹細胞 (白血病幹細胞) に関連して、理化学研究所と九州大学から研究成果が報告された。 がん幹細胞を攻撃することで、がんの再発を防ぎ、根治に結びつくと期待されている。(陶山陽久)
 今月、急性骨髄性白血病 (AML) の原因となる白血病幹細胞を死滅させる化合物を特定することに、理研統合生命科学研究センターの石川文彦主任研究員らのグループが成功し、米科学誌に発表した。 既存の抗がん剤で白血病のがん細胞を攻撃しても、白血病幹細胞が残存していると再発の原因になると考えられており、今回の化合物は再発を繰り返すタイプの AML に有効となる可能性があるという。

投与した化合物の濃度に応じて患者
由来の白血病幹細胞(黒い塊)が死
滅(=理化学研究所提供)
 白血病幹細胞を標的にした治療法の開発に取り組んでいる同グループは、 2010 年に白血病幹細胞に特徴的な 25 種類の標的分子を見つけていた。 今回はその中で、リン酸化酵素 「HCK」 の働きを阻害する化合物を数万種類の候補化合物から特定した。
 わずかな投与量でも、効果的に白血病幹細胞を死滅させることができ、 「 HCK 以外の酵素活性には影響を与えにくいため副作用も少ないと考えられる」 (石川主任研究員) という。
 国立がん研究センター研究所造血器腫瘍研究分野の北林一生分野長によると、既存の抗がん剤で 8 割の AML 患者は病状が良くなる (寛解) が、そのうち半数は再発するという。 そのため、 「白血病幹細胞を標的にすることで根治に結びつく可能性がある」 (北林分野長) と指摘。 ただ、 「同じ AML でも発症原因の遺伝子変異の仕方でさまざまなタイプがあり、タイプに合わせた治療法や治療薬が求められる」 (同)。
 がん幹細胞に既存の抗がん剤が効きにくい原因は、がん幹細胞はがん細胞と異なる細胞周期を持ち、普段は冬眠状態のようになっているためと考えられている。 九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授らのグループは、慢性骨髄性白血病 (CML) の原因となるがん幹細胞に関して、冬眠状態の維持に働くたんぱく質 「Fbxw7」 を特定したと 3 月に発表した。
 同たんぱく質を阻害することでがん幹細胞が静止期を脱してがん細胞になり、既存の抗がん剤治療や放射線療法が有効になると期待される。
 がん幹細胞の存在は胃がんや肝臓がんなどさまざまな臓器に発生するがんでも報告されている。 一方、がん幹細胞の詳しいメカニズムはよく分かっていない。 横浜市立大学の梁明秀教授はヒト iPS 細胞 (万能細胞) を使い、がん幹細胞を人工的に作り出すことに成功しており、今後、こうした技術を応用してがん幹細胞のメカニズム解明と新たな治療法の開発が求められている。
 

2012年10月23日

全がん協加盟施設の生存率共同調査(kapweb)と簡単な使い方・分析イメージ

全がん協加盟施設のがん生存率が計算できるサイトができたそうです。くわしいデータ画面から進むと、症例数・データ提供施設・非常に細かい単位での生存期間と確率・統計的優位な信頼区間など、統計好き的にはいろいろ分析したくなるデータを見ることができます。

統計的に優位な、正確な情報が出ることは大変望ましいことですが、CMLあるいは血液系の癌は、骨髄腫という大カテゴリでしかデータがないないようですね。素晴らしい取り組みだと思うので、信頼区間をグラフ上に出す、複数クエリの比較ができる、もっと細かいサブカテゴリ指定ができるようになる、などなど今後の拡張を望みます。

KapWebはこちら

以下、10/23 1:45 am時点での分析例です。

生存率について注)
がん患者さんはがん以外の病気で死亡する場合があり、高齢者ではその分生存率が低く見えます。「相対生存率」とはがん患者さんががん以外の病気で亡くなる分を実測生存率に「かさ上げ」した補正済みの生存率です。まれに過剰な補正の結果相対生存率が前年より上昇しますが、前年と同じ値であると解釈して下さい。

信頼区間について注)
少ない患者数から生存率を計算すると信頼性が落ちます。90%信頼区間とは計算した生存率は9割方この範囲の中にあるということを示しており、実用的にも問題がありません。また2つの生存率の信頼区間が重ならない場合は、90%以上の確率でその2つの生存率に差があるということを意味します。

分析例1)骨髄腫×男性
症例数 Cases:
58件
データ提供施設 Contributing hospitals:
岩手県立中央病院 茨城県立中央病院 群馬県立がんセンター 東京都立駒込病院 名古屋医療センター
滋賀県立成人病センター 大阪府立成人病センター 四国がんセンター 九州がんセンター 

生存率実測生存率相対生存率相対生存率の90%信頼区間(上限)相対生存率の90%信頼区間(下限)
1年生存率0.7550.7730.8680.677
2年生存率0.650.6810.790.572
3年生存率0.4390.4720.5880.356
4年生存率0.3510.3880.5030.273
5年生存率0.3160.3590.4740.244


分析例2)骨髄腫×女性
症例数 Cases:
41件
データ提供施設 Contributing hospitals:
岩手県立中央病院 茨城県立中央病院 群馬県立がんセンター 東京都立駒込病院 名古屋医療センター
滋賀県立成人病センター 大阪府立成人病センター 四国がんセンター 九州がんセンター 


生存率実測生存率相対生存率相対生存率の90%信頼区間(上限)相対生存率の90%信頼区間(下限)
1年生存率0.780.7890.8970.682
2年生存率0.7320.7490.8660.633
3年生存率0.5850.6080.7390.476
4年生存率0.4150.4370.570.303
5年生存率0.4150.437

2012年10月2日

医療費に関する経済的および精神的負担に関する調査

医療費に関する経済的および精神的負担に関する調査、をインターネットにて、東京大学医科学研究所が行っているようです。

調査設計にはいろいろ突っ込みどころ(例、インターネットによる母集団からの歪み、妥当な負担額の聞き方、精神的負担の項目)がありましたが、それにしても、患者が声を上げられる数少ない機会なので、もしCML患者の方でここを見られてまだ解凍されていない方がいらっしゃったら、以下のリンクからご回答下さい。

二次締め切りは10/10(水)、最終締め切りは10/31(火)のようなので、それまでにどうぞ。

https://krs.bz/umin/s/index

2012年6月5日

Why, Charlie Brown, Why?: a Story About What Happens When a Friend is Very Ill

全ての白血病患者の周りの人に読んでほしい、とても素敵な本です。


「もし友達がvery ill(この例では白血病)になったら」という状況に対して、人としてどうすべきか、Charlie Brownの仲間たちを通じて学ぶことができる、子供だけでないいろいろな人に読んでほしいとても素敵な絵本です。

2012年2月23日

ノバルティス、抗悪性腫瘍剤「グリベック錠100mg」の効能追加の承認を取得(プレスリリース)

以下ノバルティスのプレスリリースの日経プレスリリースの抜粋より。
グリベックの適用として好酸球増多症候群(HES)、慢性好酸球性白血病(CEL)へのt起用が増えたようです。改めて、色々な病態があるとともに、グリベックが満塁ホームラン的な大当たりなんだなと思います。

プレスリリース本文はコチラ

ノバルティス、抗悪性腫瘍剤「グリベック錠100mg」の効能追加の承認を取得

抗悪性腫瘍剤「グリベック(R)錠100mg」、公知申請により
FIP1L1-PDGFRα陽性の好酸球増多症候群,慢性好酸球性白血病の
治療薬として効能追加の承認を取得

 ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:三谷 宏幸)は、本日、効能追加の公知申請*1を行っていた抗悪性腫瘍剤「グリベック(R)錠100mg」(一般名:イマチニブメシル酸塩)について、「FIP1L1-PDGFRα陽性の好酸球増多症候群(HES), 慢性好酸球性白血病(CEL)」の効能又は効果、用法及び用量追加の承認を取得しました。
 
 血液がんの一種である好酸球増多症候群(Hypereosinophilic syndrome; HES), 慢性好酸球性白血病(Chronic eosinophilic leukemia; CEL)は、好酸球が過剰に増殖して正常な造血が阻害されたり、増殖した好酸球が心臓、肺、脾臓、皮膚および神経系などに浸潤することで、様々な臓器障害を引き起こす疾患です。中でも心筋への好酸球浸潤は約58%の患者さんに認められ、こうした患者さんは心不全を起こすことがあり、予後は不良です。早期診断や心合併症などに対する補助療法の進歩により、生存率に改善はみられるものの、依然として難治性の疾患であり、これまで国内では有効な治療法がありませんでした。今回の効能追加承認により、「グリベック」はHES,CELに対し日本で初めて承認された治療薬となります。
 
 今回の効能追加について、ノバルティス ファーマ株式会社 取締役 オンコロジー事業部 事業部長の淺川一雄は、次のように述べています。「『グリベック』は、慢性骨髄性白血病(CML)治療薬として2001年に発売して以来、多くの患者さんに投与され、それまでのCML治療を大きく変えた薬剤として高く評価いただいています。その後も、消化管間質腫瘍やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病と適応を拡大してきましたが、この度、有効な治療法のなかったHES,CELの患者さんにも、欧米ではすでに標準となっている治療選択肢をご提供できることを嬉しく思います」
 
 「グリベック」は、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議*2」での検討結果を受けて、HES,CELに関する効能追加について厚生労働省より開発の要請を受けていました。その後2011年4月に開催された薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会において、公知申請を行っても差し支えないと判断されたことを受け、「FIP1L1-PDGFRα陽性のHES, CEL」を適応として2011年5月18日に公知申請を行い、2012年2月22日に承認されました。
 
*1 公知申請:医薬品(効能追加など)の承認申請において、当該医薬品の有効性や安全性が医学的に公知であるとして、臨床試験の全部または一部を新たに実施することなく承認申請を行うことが出来る制度
*2 医療上必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議:欧米では使用が認められているが、国内では承認されていない医薬品や適応について、医療上の必要性を評価するとともに、公知申請への該当性や、承認申請のために追加で実施が必要な試験の妥当性を確認すること等により、製薬企業による「未承認薬・適応外薬」の開発促進に資することを目的として設置された会議

医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議での検討結果を受けて
ノバルティス ファーマが開発要請を受けた医薬品とその対応状況 (2012年2月現在)

*以下、詳細は添付の関連資料を参照

2012年2月7日

【薬食審医薬品第二部会】初のATL治療薬を了承(薬事日報)

ATLの新薬とグリベックの新たな適用について、薬事日報についても記事になっていました。どちらも対象患者が2000人と100人少ないですが、そういうものでもちゃんと承認していく制度であってほしいと思います。

http://www.yakuji.co.jp/entry25445.html



  
 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は1日、協和発酵キリンが開発した、再発・難治性の成人T細胞白血病(ATL)治療薬「ポテリジオ」、ノバルティスファーマの慢性骨髄性白血病治療薬「グリベック」の効能追加を審議し、承認を了承した。現在、有効な治療法がないATLに対する治療薬の承認は初となる。
 「ポテリジオ点滴静注20mg」の有効成分はモガムリズマブ(遺伝子組み換え)。再発または難治性のCCR4陽性の成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。国内の推定患者数は2000人程度で、オーファンに指定されている。
 同剤は、ヒトモノクローナル抗体で、ATL患者の約9割に高い発現が認められるCCR4に結合することにより、ATLを引き起こす細胞を傷害する新規の作用機序を持つ。1週間間隔で計8回投与する。再審査期間は10年。承認条件として前例調査が付された。海外での承認はない。
 一方、「グリベック錠100mg」有効成分はイマチニブメシル酸塩。FIP1L1-PDGFRα陽性の好酸球増多症候群または慢性好酸球性白血病の効能・効果を追加する。
 同疾患は、好酸球が過剰に増殖することによって正常な造血が阻害されたり、心臓、肺、脾臓などに臓器障害を引き起こす。同剤は、疾患発症の原因となる腫瘍蛋白FIP1L1-PDGFRαの活性を阻害することで効果を示すとされている。国内の推定患者数は、100人程度で、オーファン指定されている。再審査期間は10年。

2012年2月3日

長期に高額な医療費を支払い続けている患者の負担改善に新たに必要となるのは550億円程度(医療ガバナンス学会)

グリベックについても調査をしてくださっていた東大の児玉有子さんの、今回の高額療養費制度に関するレビューを発見しました。

「長期に高額な医療費を支払い続けている患者の負担改善に新たに必要となるのは550億円程度」で、その前提では「月額2万円程度を自己負担してもらえば、必要な予算は250億程度ですみます。国民一人当たりに年間240円の負担です。4人家族で年間1000円」というところまで踏み込みまでされて提言されており、全体像を捉えるのに非常に参考になりました。

医師会にやられているばかりでなく、患者としても、もっと声を上げていかないといけないですね。


Vol.390 「高額療養費制度見直し」の議論を振り返って-医療費負担に平等を求めてはいけないのでしょうか

医療ガバナンス学会 (2012年2月 3日 06:00) | コメント(0) | トラックバック(0)
東京大学医科学研究所 
特任研究員・看護師 児玉有子
2012年2月3日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
私は2009年以来、高額療養費制度見直しの研究に従事しています。また、昨年11月からは、大谷貴子委員(全国骨髄バンク推進連絡協議会 前会長)の代理として、社保審医療保険部会に出席する機会を頂戴しました。
この会合に出席して感じたのは、いずれの委員も問題を深く理解してくださっていることでした。特に会議後の雑談の中で、樋口恵子委員(NPO法人高齢社会 をよくする女性の会、理事長)から「ほんとにかかった病気で差が出るなんておかしなことだと思うのよ」と声をかけてくださったことは、とても心強く、ありがたく思いました。とりまとめられた意見書でも「がんの患者など長期にわたって高額な医療をうける方が増えており、これらの方の負担を軽減し、医療保険の セーフティーネット機能の強化が求められている」と記されており、これは委員の総意だと思います。
ただ、このような委員の意見は、高額な医療費負担で悩む患者・家族の元には届いていません。今回は、この問題をご紹介させて頂きます。

2011年、高額療養費制度の問題は、社保審医療保険部会だけでなく、税と社会保障の一体改革や規制改革会議でも議論されました。
2010年までの議論のポイントは、「平成24年度から自己負担限度額を超える場合には、負担上限額を支払うだけにする」という新たな仕組みを導入するこ とでした。2010年12月に、この方針が発表されています。しかしながら、2011年、ここから一歩も議論は進みませんでした。それは財源について、コンセンサスが得られなかったからです。

2011年、厚労省から提示された案は、「受診ごとに各人から100円徴収し、それを財源として、低所得者層とされる区分において最初の3ヶ月が 80,100円から44,000円に、4ヶ月目以降は44,400円を35,000円に減額する。他の区分では、最初の3ヶ月が100~18,100円、 4ヶ月目以降は400円減額する。」というものでした。
この案は、一見良さそうに見えますが、今回の議論の発端となった「がんの患者など長期にわたって高額な医療を受ける方」には何の助けにもなりません。なぜなら、このような患者で問題となるのは、最初の3ヶ月の負担ではなく、4ヶ月目以降の毎月44,000円余りを払い続けなければならないことだからです。

最初の3回の負担が問題になるのは、大きな手術を受けた場合や突発的な怪我で手術した場合などが想定されます。しかしこのような場合には「高額療養費貸付 制度」(支払額の8―9割の貸し付けを受けることができる制度)の利用や民間保険の利用により、一時期な高額医療費支払いによる経済的負担の緩和が可能で す。
民間保険会社でも昨年から高額療養費制度の民間版とでもいう商品が売り出されました。しかし、すでにがんと診断されている人は使うことができません。

がん患者が求めた長期負担問題は、ここまでは全く手つかずのままです。この問題の代わりに、世間の耳目を集めたのは、患者の窓口100円負担でした。あたかも高額療養費問題解決のための財源確保のような報じられ方でした。財政破綻寸前の我が国では、国民皆保険を守るため、給付と負担の議論は避けられませ ん。患者の窓口負担はモラル・ハザードの問題、受診抑制の危険性と併せて、総合的に議論すべきです。財源の辻褄あわせに関する議論が先行したため、もっと大切な問題が放置されました。

それは、「平等に医療を受ける権利」です。実は、長期に渡り高額な医療費負担が考えられる疾患には高額療養費制度の他に、様々な医療費補助制度がありま す。たとえば、「肝炎治療医療費助成」「難病医療費支援制度」、「高額療養費制度の特定疾患(血液透析など)」です。これらの医療費補助制度の適応を受け ている疾患では、患者の医療費負担は「無料から毎月27,000円程度」となっています。どう見ても、これは不平等です。

私は、慢性骨髄性白血病(CML)の患者さんから意見を聞く機会が多いのですが、特効薬であるグリベックの他に、肝炎治療でも使用されるインターフェロン の投与を受けている方もおられます。インターフェロンを使っているCMLの患者さんは、高額療養費制度を利用しながら、44,400円を払い続けていま す。同じインターフェロンを使う肝炎の患者さんの自己負担は、無料から毎月27,000円です。病名が違えば、自己負担が違います。CMLの患者さんから 「肝炎だったらよかった」と言われた時、私は言葉を失いました。この問題を放置しておいていいのでしょうか。

窓口で徴収する金額を100円にした根拠は、1300億円に収入が見込まれるからだそうです。ちなみに、一昨年、厚労省は「制度改善に必要な予算は 2600億円」と発表していました。我々の試算( http://medg.jp/mt/2010/10/vol-321-2600.html )では、長期に高額な医療費を支払い続けている患者の負担改善に新たに必要となるのは550億円程度です。厚労省は情報開示を進め、もっと広く議論すべき です。

高額療養費の問題については、民主党は2009年のマニフェストで見直しを明言しています。他の政党は2010年マニフェストで見直しについて記しています。確かに、民主党は医療を重視しており、政権交代以後、大病院の診療報酬を引き上げ、勤務医の労働環境は改善されつつあります。一方で、患者の経済負担 は置き去りです。
現在、国会では社会保障と税の一体改革に関しての審議が行われています。これからの審議でどのように議論されるのか、多くの患者、家族、国民は注目しています。

最後に、本年4月から同一医療機関での同一月の窓口負担が高額療養費の自己負担限度額を超える場合は、窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる取扱い(「現物給付化」)が導入されます。これは調剤薬局や訪問看護にも適応されます。この改正により、窓口での一時的は大きな支払いをしなくてもよくなりま す。このことはかなりの前進であることに違いありません。無事に省令を改正してくださり、また改正に伴い、様々な準備をしてくださる保険者の皆様に心から 感謝申し上げます。

http://medg.jp/mt/2010/10/vol-321-2600.html

Vol. 321 高額療養費制度の見直しに2600億円も必要ですか: 厚労省見解に対する疑問

医療ガバナンス学会 (2010年10月12日 16:00) | コメント(0) | トラックバック(0)
高額療養費制度の見直しに2600億円も必要ですか: 厚労省見解に対する疑問

東京大学医科学研究所 特任研究員 児玉有子

2010年10月12日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
年末の予算編成を控え、高額療養費の議論が盛り上がっています。去年の10月以降、高額療養費制度に関する記事は、毎日新聞40回、読売新聞33回、朝日新聞、日経新聞はそれぞれ26回、産経新聞23回と五大新聞は計148回掲載しました。地方紙を含むと382回です。
テレビでも、テレビ朝日報道ステーションやNHKで特集番組が放映され、国民の認知度は大きく向上したようです。
厚労省でも社会保障審議会 保険医療部会の議題にあがりました。ただ、来年度の概算要求では「事項要求」に留まっており、優先順位の高い課題ではなさそうです。現時点では問題解決の目途はたっていません。


【社保審で登場した2600億円は本当か?】
最近、厚労省のやる気を疑う出来事がありました。9月8日の社保審保険医療部会で、厚労省の事務方は、「高額療養費制度の見直しには2600億の予算が必要」との試算を示したのです。
これは、我が国の財政状況を考えれば「実現不可能」な数字です。果たして、この試算は正しいのでしょうか。ちなみに、厚労省は「粗い試算」と説明しただけで、その具体的根拠は示していません。今回は、この問題を考えたいと思います。


【高額療養費制度を使っても、毎年56万円も医療費がかかる】
患者の自己負担軽減策として、高額療養費制度があります。この制度では、自己負担が一定額を超えた場合に差額が払い戻されます。患者にとって素晴らしい制度ですが、現行制度には大きな欠陥があります。
それは、この制度が外科手術や事故のような短期間の入院を念頭において設計されたため、治療が長期化することを想定していないからです。しかしながら、 医学の進歩は目覚ましく、一部のがんや難病では特効薬が開発されました。このような患者さんでは、薬を飲んでいる限り、普通の生活を送れる場合がありま す。
問題は、このような薬が高価なことです。例えば、慢性骨髄性白血病の特効薬イマチニブ(商品名:グリベック、ノバルティスファーマ)の薬の値段は一錠約2800円です。多くの患者は毎日4錠服用するため、毎月の薬代は約33万円、自己負担は約10万円になります。
私と東大経済学部 松井彰彦教授たちとの共同研究では、慢性骨髄性白血病を患った患者さんたちの2008年の世帯の平均所得は389万円、医療費は年 122万円でした。2000年と比べ、所得は約140万円減少していましたが、医療費負担はかわりませんでした。ちなみに、2008年の国民全体の平均所 得は560万円、医療費13万円です。経済危機は、がん患者を直撃したようです。


【医療費助成における患者間の格差】
医療費が高額になる疾患としては、透析を要する慢性腎不全、肝炎、HIV、膠原病などの「難病」があります。しかし、これらの疾患には、高額療養費特定 疾病制度(透析、一部のHIV、血友病の3種のみ)、特定疾患治療研究事業・肝炎治療特別促進事業・身体障害者認定などによる医療費助成が整備され、自己 負担は月0-2万円程度で済みます。
この状況は慢性骨髄性白血病とは対照的です。慢性骨髄性白血病と似たような状況に置かれている疾患としては、リウマチ、1型糖尿病、癌があります。いず れも医療費の助成制度が整備されておらず、自己負担は高額です。罹った病気により自己負担が異なるという「格差」が存在します。
医療費の自己負担は、世界が頭を悩ませる難しい問題です。殆どの国で、不適切な受診を抑制するため、自己負担を設けています。我が国の特徴は、命に関わ る疾患で自己負担が高額なことです。これは世界でも例を見ません。例えば、グリベックは欧米では、ほとんど自己負担なしか、極めて少額です。


【高額療養費問題の解決に必要な財源:550億円程度】
患者の自己負担を軽減するには、どの程度の予算が必要なのでしょうか。我々の試算は、厚労省が示した2600億とは大きく乖離しました。
医療費の自己負担を押し上げているのは、グリベックのような分子標的薬やリウマチに用いられる生物製剤などの新薬です。
ところが、このような新薬の売り上げは、そんなに多くはありません。それは、多くの患者が亡くなってしまうからです。例えば、2009年の我が国の抗が ん剤の市場規模は約6200億円です。このなかで、長期投与が問題になりそうな抗がん剤の売り上げを合計すると、約3500億円になります。内訳は、 リュープリン(671億円)、グリベック(464億円)、カソデックス(446億円)、ゾラデックス(370億円)、ハーセプチン(297億円)、アバス チン(349億円)、エルブラッド(244億円)、TS-1(334億円)、リツキサン(221億)などです。
 さらに、がん治療では副作用対策に使用する薬も高額です。吐き気止めや疼痛対策、白血球減少時に使用する薬等の市場規模は約1100億円です。また、リウマチなどに使う生物製剤の総売り上げは860億円です。
 これらの薬剤の売り上げを合計すると5460億円です。全ての薬剤において、総売上と患者自己負担の比率がグリベックと同じ10%(我々の調査による)と仮定すれば、自己負担の総額は550億円程度と推定できます。これは厚労省推計の5分の1です。



【追加予算に伴う個人負担は年間240円~500円】
しかも、550億円は全額公費負担(自己負担なし)の場合に必要な金額です。しかしながら、多くの患者・家族は、そこまでは希望していません。私たちの 調査によれば、8割を超える患者・家族が月額2万円以下なら支払い可能と考えていました(http://www.pt-spt.umin.jp /sub1.html)。これは、いわゆる「難病」に対する医療費助成制度における自己負担とほぼ同レベルです。ちなみに、自己負担をなくして欲しい(0 円)と希望したのは、わずか1%でした。
もし、月額2万円程度を自己負担してもらえば、必要な予算は250億程度ですみます。国民一人当たりに年間240円の負担です。4人家族で年間1000円です。この程度なら、多くの国民は賛同するのではないでしょうか。


【今年度補正予算、ワクチン助成に2000億円盛り込まれる】
余談ですが、10月6日の首相代表質問答弁で、高額療養費問題に解決に向け社保審保険医療部会で検討が進んでいるとの答弁がありました。しかしながら、今週13日に開催予定の当該会議では議題から高額療養費の文字が消えています。これは何を意味するのでしょうか。
対照的に、子宮頚がんワクチンの助成は、櫻井充財務副大臣の尽力もあり、補正予算に盛り込まれるようです。さらにヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンの接種公費助成が進むようです。ワクチン助成の予算額は2000億円です。
ワクチンと高額療養費問題は、どこが違うのでしょうか。厚労省は、早急に試算根拠を示し、公開の場での議論が進むことを希望します。

2012年2月1日

成人T細胞白血病に新薬 厚労省部会が承認意見(日本経済新聞)

有効な治療法が確立されていないATLに対する画期的な第一歩となるとよいですね。

http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819695E2E3E2E6868DE2E3E2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;at=ALL

成人T細胞白血病に新薬 厚労省部会が承認意見 

2012/2/1 22:15
日本経済新聞 電子版
厚生労働省の医薬品第2部会は1日、再発した成人T細胞白血病(ATL)に対する協和発酵キリンの治療薬「ポテリジオ」、一般名「モガムリズマブ(遺伝子組換え)」の製造販売を承認してよいとする意見をまとめた。厚労省は早ければ2011年度中にも正式に承認する。
ATLに特化した治療薬の承認は初めて。これまでは複数の抗がん剤投与が一般的で、造血幹細胞移植しか有効な治療法がなかった。
ATLは、原因ウイルスのHTLV1が主に母乳を通じて母子感染し、感染後40年以上を経て起きる血液のがん。感染者は西日本を中心に全国に100万人以上いるとされ、年間約千人が発症する。
ポテリジオは、ATLのがん細胞の表面にある特定の受容体に結合する抗体薬。協和発酵キリンが独自技術で開発した。1週間間隔で8回、点滴投与する。臨床試験では、投与した患者の半数で、がん細胞がなくなったり減ったりした。〔共同〕

2012年1月9日

「2012/1/9 造血幹細胞移植研究 公開シンポジウム」の備忘録

造血幹細胞移植研究 公開シンポジウムを聴講して来ました。学会発表の抜粋のようんで手元資料がなく、理解が追いつかなかった点が結構ありましたが、ポイントだけでもメモしておきました。末梢血幹細胞移植についてかなりイメージが湧きましたが、一方で、昨年3月に本邦移植一号という点にも驚きました。

日時 2012年1月9日 3-5pm
場所 東京医科歯科大 湯島キャンパス

■厚生労働省 健康局 疾病対策課 臓器移植対策室 狭間
・とくに内容なし

■最近の移植傾向 名古屋大学 熱田由子
造血幹細胞移植とは難治性の血液悪性腫瘍の根治を目的に造血幹細胞を移植する再生医療の先駆け。造血幹細胞は骨髄だけでなく臍帯血、抹消血からも
・1974年から日本では移植開始、八十年代に免疫抑制剤の進化でドナーがレシピエントの白血病細胞を攻撃するGVL反応により予後が改善することがわかり、化学療法との組み合わせが進む
・直近でのおよその年間件数は自家移植が1500、同種移植が3000。同種移植のうち血縁者間は1000、非血縁者が2000。これは血縁で完全一致確率が1/3なので適正数
・また、同種移植のうち臍帯血移植は1000件でこれはヨーロッパ全土と同水準の多さ
・日本造血幹細胞移植学会の報告書で施設別移植件数を開示(年別報告書はコチラ、データの見方はコチラ

■新しい移植法 関西医科大学 池原進
・骨髄には造血幹細胞、間葉系幹細胞の二種類がある
骨髄移植では血液疾患や免疫不全のみならずリウマチなどの自己免疫疾患にも効果がある
・現在の骨髄移植の問題点は、移植片対宿主反応(GVHD)と生着不全(=拒否反応)の二つ
・GVHDを防ぐには、移植時に抹消血とその中にはいるリンパ球混入するのを防ぐ灌流法従来の腸骨に百本近い穿刺針を指して取らずに点滴ではない骨髄内骨髄移植
・生着不全を防ぐには、間葉系幹細胞も合わせて移植することで造血幹細胞も守られる
・現在、骨髄内骨髄移植のフェーズワンの研究中

■非血縁ドナーを選択するときのポイント 愛知県がんセンター 森島泰雄
ドナーのレシピエントの免疫担当細胞が正常細胞を攻撃するのがGVHDでこちらは抑えたい、一方で、白血病細胞を攻撃するのがGVL反応でこちらは望ましい
・HLA型の一部不適合の場合に、どのHLA型のミスマッチが悪い効果をもたらすかを解析し、HLA-CのミスマッチがGVHD重症化と死亡率悪化をもたらすためドナー選択順位のプロトコルに反映。なお、HLA不適合が多い場合はHLA不適合でもGVHDが少ない臍帯血移植を検討する
・さい帯血移植結果のデータベースが不完全で、不適合が多い場合の非血縁ドナーからの骨髄移植との比較(どちらの予後がより良好か)は今後の課題
・日本人間では不適合のあるドナーからの移植でも、白人間における同じ移植よりもなぜか予後がよい、原因は今後の研究課題

■非血縁の抹消血幹細胞移植と骨髄移植の違い 名古屋第一日赤病院 宮村耕一
・BMH:骨髄からの採取では、五十回から百回の穿刺をドナーに行い、一回十ミリリットルを採取
・PBSCT:抹消血からの採取では、G-CSFを打って抹消血内に造血幹細胞やリンパ球に増やし、高齢者へのミニ移植や骨髄繊維症には有用
・G-CSF投与後一ヶ月以内に重篤な副作用が起きたのは、海外では死亡事例もあるものの国内移植プロトコルではそもそもドナーとできない事例も多く、国内では3200件のうち20件程度で回復不能なものはなし。
事例をもとにコレステロール値と血圧からのPBSCTプロトコロルを作成。骨髄バンク基準を当てはめると女性はリスク0.5%未満、男性はコレステロール値により0.5%未満ないし1%未満のリスクにとどまる
・慢性GVHDの発生割合は、抹消血移植の方が10pp以上も多いのは事実ので対応策が今後の課題。ただし、昨年三月に非血縁者間の抹消血幹細胞移植が本邦はじめて実現したばかり
・国内において、ドナー選定から採取まで75日までかかっているのは施設側のキャパシティ問題もあり、PBSCTも増えれば短期化できるのではないか。現在は国内にPBSCT認定施設が35あるが、他先進国では使えるECP導入などの課題もまだ大きい

■ATL特命チームができて進んだ点 九州がんセンター 鴻池直邦
・ATLとは成人T細胞白血病で、HTLV-1によって起き、地域差が多い
(HTLV-1キャリアは日本に100万人以上、キャリアの生涯発症率は2-6%とのこと(Wikipedia))
・化学療法では治らず、十年でほぼ亡くなってしまう。長期生存率は4.7パーセント
・通常の移植では予後が悪い結果が出ており、ミニ移植の可能性を研究している。現状では一期と二期研究ではミニ移植後に五年で34%生存であり決して満足のいく結果ではないが、三年目以降は生存曲線がフラットになっているため完治して社会復帰できているケースが出ている
・免疫療法の開発、抗CCR抗体4といった新たな治療法もでてきている

■移植領域で使える治療薬を増やし、移植後のQOLを高めるには 国立がん研究センター中央病院 福田隆浩
・移植関連死亡は2-3割あるが、ウイルス感染対策薬と免疫抑制薬の海外で使えるものの殆どが、国内で未承認ないし適応がないという課題
・医師が主導する治験という制度もできたが、造血幹細胞移植自体年間三千件ではオーファン扱いであり、医学薬学上公知から公知申請というアプローチが現実的
・医学薬学上公知となるには、海外でのエビデンスと国内のエビデンスが必要。海外では保険未承認ながら移植時には保険で弾力的に運用して使われている場合も多くデータを個別薬ごとに集めないといけない。国内エビデンスでは、臓器移植適応などがある場合は日本人のエビデンスを蓄積しやすい
・「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の設置により検討が進んだが、海外未承認薬についてはエビデンス不足扱いになりやすいという課題は残っている
移植後のQOL低下を補正しても移植の方が期待生存率が高いという統計解析は移植を推進する根拠になるが、QOL指標の重み付けを(死亡をゼロ、健康な生存を1とするときに、GVHDあり生存をどう数値評価するか、など)医者ではなく患者が評価するように急性白血病について研究を開始

2011年9月12日

血液がんの遺伝子発見 東大、骨髄異形成症候群で(共同通信)

同じく希少疾患・難病の骨髄異形成症候群(MDS)の原因となる変異遺伝子を特定したそうです。こういうニュースがあると嬉しいですね。

http://www.47news.jp/CN/201109/CN2011091201000010.html
(以下、転記)
血液がんの遺伝子発見 東大、骨髄異形成症候群で  血液のがんの一種「骨髄異形成症候群」の原因遺伝子を発見したと、小川誠司・東大特任准教授(がん分子遺伝学)らのグループが12日、英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
同症候群の原因遺伝子が判明したのは初めて。新たな診断法や治療薬の開発に役立つという。
グループは、日本、ドイツ、台湾の24~88歳の患者29人の遺伝子を詳しく解析。2人以上に共通して変異していた遺伝子を複数見つけた。
その中には、生体内でDNAの情報をもとにタンパク質がつくられる際に、不要な情報を切り取る編集作業のために働く遺伝子があった。 2011/09/12 05:37 【共同通信】

2011年7月30日

7/30 つばさ定例フォーラム「血液がん 新たな治療と新たな課題」備忘録

結構今更ながら理解することもあってとても勉強になりました。白血病の種類は、造血幹細胞から分化するどこの細胞が遺伝子異常を起こしているかで異なり、CMLは造血幹細胞という一番根っこの異常(そしてAML、CLL等は違う分化後)という基礎的なところすらわかってなかったことが判明です。苦笑

あとで時間があるときに構造化は直すとして、とりあえずメモをそのままアップしておきます。プレゼンターごとに■マークで区切っています。岡本先生のが論点も明確で面白かった。黒川先生はわかりやすいですが、概論の担当をされていたので、そこまで切り込んでくる感じはなかったです。

■血液と血液がんの病態(東大医学部附属病院 血液・腫瘍内科 黒川峰夫先生)
正常の血液はどのようなものなのか
・血液の成分は血漿が55%、血球が45%。血漿は有機物(蛋白7%など)、無機塩類、水。血球は血小板(15万~35万/ul)、白血球(4,000-10,000/ul)、赤血球(男性は450-550万/ul、女性は400-500万/ul)
・赤血球は寿命が120日くらい。一日あたり2千億個が生まれて同じだけ廃棄。赤血球は全身に酸素を運ぶ
・白血球は病原体から体を守る。リンパ球、好酸球、好塩基球、単球などがあり守備範囲が異なる
・血小板は出血を止める
・骨髄のなかにある造血幹細胞という起源となる細胞が、赤血球・白血球・血小板といった多様な細胞へ分化する。自己複製、増殖能力がある
・成熟した赤血球・白血球・血小板は血管の中を流れているが、成熟する一歩手前(前駆細胞)までは骨髄の中で営まれており血液中に出てこない

血液の異常である病態はどのような病気で、どのように起きるのか
・血液細胞に遺伝子の変化が生じ、異常増殖するようになったもの。異常増殖したがん細胞は、正常な造血や内臓の機能に障害を与える
・血液腫瘍(悪性リンパ腫と白血病)はがんのおよそ3-4%。障害の罹患率は悪性リンパ腫が1%、白血病が0.5-0.7%
・血液腫瘍の5年生存率は、悪性リンパ腫で50%、多発性骨髄腫で25%、白血病で30%とがんの中でも難治な部類。主な造血器腫瘍は、急性骨髄性/リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病。悪性リンパ腫、多発性骨髄腫(成熟リンパ系腫瘍)

更に細かい白血病の説明
・慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の異常(BCR-ABLキメラ遺伝子が生じる疾患)
・造血細胞の段階でBCR-ABL遺伝子が生じ、無秩序な分化を起こす
・t(9;22); 9番目と22番目の染色体が融合したPh染色体→PCR-ABL融合遺伝子。ABLがキナーゼ活性を高め、血液細胞の増殖を亢進
・キナーゼ活性をブロックするのがイマチニブの役割
・無治療の場合には5~10年の経過で進展し、急性白血病のように未分化な細胞が異常増殖

・急性リンパ性白血病リンパ球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・悪性リンパ腫は、さらに分化したリンパ球に遺伝子異常がおきる

・急性骨髄性白血病は、骨髄球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・遺伝子異常は、増殖シグナルの活性化により増殖が亢進し、正常分化が阻害される
・t(8;21); 8番目と21番目の染色体がちぎれてつながる=転座、他にはt(15;17)など
・遠心分離した時に、赤血球が減って増えた白血球の白色が肉眼でも分かるくらい
・芽球(blast = 白血病細胞)は、形態的には造血細胞の幼弱な状態に似ているが遺伝子異常を起こしており正常な機能を担えない

標準療法と臨床治験
・標準治療=ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療。科学的根拠に基づいた観点で、現在理由できる最良の治療(evidence-based)
・エビデンスとは、この薬や治療法、医療行為についてよいといえる証拠。症例報告・大家の意見<分析的研究<ランダム化試験の順で科学的信頼性が高い
・ランダム化試験とは、患者を無索引に割りつけて治療方法を分けて効果を比較
・高いレベルでのエビデンスを得るために臨床試験を行う。その中で治験とは、医薬品の製造・輸入承認を申請するための資料を得ることを目的とした臨床試験

質問:何が原因で血液がんになるのか、何かやってはいけないことをしたのか?
・遺伝子に傷がつくことは日常生活にあるが、通常はそうした異常細胞は体内で処理されるが、その網の目をどうにかくぐり抜けてしまった細胞が増殖する

質問:放射線治療を受けた患者は、福島原発事故の影響でリスクが倍増するのではないか?
・リスクは受けた線量に応じて発症するが、線量の少ない・多いと、がんの程度は相関せず、高い線量だと確率が高まるので被曝をしないほうがよい

■血液がんの治療について(慶應義塾大学病院 岡本真一郎先生)
造血器腫瘍の治療法
1.化学療法(Chemo)
・最初の頃は、インディオの毒矢の成分から作られた。例えば、オンコビンという薬はマダガスカルのニチニチソウという花から作られた
・主な抗癌剤は、DNA/RNAの損傷や合成阻害を起こす薬剤か、微小管の機能を抑制する薬剤
・細胞周期(サーキット)の途中で、異常な細胞は各々のフェーズにチェックポイントがあり異常があれば細胞をもとに戻すメカニズムがある
・白血病細胞では細胞周期チェックポイントの壁が低く正常に機能しない(分裂期崩壊 Mitotic Catastrophe)、そこに働きかけるのが化学療法

2.造血幹細胞移植(MTA)
・造血幹細胞の悪いところだけを切り取れないので、細胞をまるごと取り除いてしまい、そのあとで正常な造血幹細胞を移植する
・前処置: 腫瘍細胞の根絶、֭�常造血の破壊、免疫系の破壊
・造血幹細胞の移植: 恒久的造血の回復(2-3週)、恒久的免疫系の回復(3-4月)
・同種免疫反応の制御: 移植片対宿主病(GVHD)、免疫系再構築遅延に伴うウイルス感染症→治療の進化で早期死亡は1割程度にまで減少
・造血幹細胞だけを抽出することは難しいので、骨髄血液を吸引して移植。あるいは、最近では臍帯血にも造血幹細胞が多く含まれているので凍結保存をしておいて使う。また、白血球を増やすG-CSFをドナーに投与して、造血幹細胞が増えるところだけを取り出す末梢血幹細胞を採取
・世界の骨髄バンクでの比較では、骨髄輸出・輸入をしなくても造血幹細胞の「自給自足」が成立
・無菌室のQOLも向上し、現在ではほぼ日常と同じような格好で生活可能
・移植片対白血病効果(GVL): GVHDを起こした人は、その後の再発が少ない。おそら⁏、免疫反応を起こすT細胞が白血病細胞も攻撃して腫瘍を根絶するのではないか。
・骨髄破壊的移植では元気な比較的若い患者しか対象に出来なかったが、骨髄非破壊的移植(ミニ移植、RIST)で高齢者やほかの病気のある人も対象に。ただ、移植後後期合併症(慢性GVHDや二次発性がんなど)の問題は以前抱えている
・慶應病院では、AMLへの移植で、寛解期では生存率85.5%、寛解期でないと生存率は46.7%。移植関連死亡は1年半後までで10.2%
・個々の患者の遺伝子検査による移植の予後予想法の確立が今後の課題
・“No guts no glory, and we made it”、血液内科のチーム医療としての移植

3.分子標的療法(SCT)
・突然変異によって生まれたがん細胞自身やその生存・増殖環境を選択的に対処する(ゴルゴ13w)
・受容体型チロシンキナーゼの異常とは、特定のタンパク質の結合がないのにチロシンキナーゼが常に活性化されている状態であり、その活性を阻害する
・イマチニブは、BCR-ABL蛋白のリン伝達プロセスを阻害。このプロセス以降に細胞死を抑制したり細胞増殖を亢進する他のタンパク質の伝達を全て止めることが可能。このような「アキレスのかかと」を他の造血器腫瘍ではみつかっていない
・ただし、イマニチブは飲み続けないといけないので費用的な問題は存在

今後の方向性
・造血器腫瘍のがん細胞における幹細胞を叩く(蜂の巣における女王蜂)
・Nicheと呼ばれるくぼみに血液がん幹細胞が隠れていると推測されており、取り出して攻撃できないか研究
・現状でそれを実現できるのは現状では造血幹細胞移植のみ
・治療の目的は、根治だけてなく、QOLを保った製造期間を少しでも長く維持する
・EBMだけでなく、Narrative-based Medicine(NBM)。臓器障害・予後因子と異なる患者側の因子(人生観・家族・仕事など)を考慮
“Medicne is an art based on science” 医者と患者が協力して組み上げるart

質問:移植して3年、しびれが厳しいがどうにかならないのか?
しびれは問題として残っている。なかなか対応が難しいがしびれが始まった段階から色々な薬を使う

質問:CMLの22歳女性(12歳で発症)、今後妊娠は可能か?
化学療法・グリベックを含めて治療をしているときには妊娠は薦められない。がいろいろな対策が進んでいる。詳細は分科会で。

質問:多発性骨髄腫でなぜ同種移植の条件が厳しいのか?
比較的高齢者が多いのでなるべくいい生存期間を伸ばそうとすると移植の位置づけはあとになる。若い方の場合は積極的に考えても良い

■CML分科会: 慢性期の治療2011
治療段階の確認
・血液学的寛解(HR): 血球数が正常値に
・細胞遺伝学的寛解(CgR): BCR-ABL遺伝子量(通常ABL遺伝子のうち)が1/100以下。Ph染色体が見えなくなる
・分子生物学的寛解(MMR): BCR-ABL遺伝子量が1/1000以下。コピー数が検出不能な段階まで行くと完全寛解(CMR)。同じレベルの中でコピー数が増えたり減ったりは危なくない。それより前のレベルに戻ると効いていない判斷

第二世代の薬(ダサチニブ、ニロチニブ)
・8年のうちで37%が効果不十分でやめている(CCyR達成できないのが18%、CCyR達成後の効果喪失が8%)ので第二世代を検討
・ただし、第二世代でも20%位は中止になっているので留意が必要
・第二世代の薬は、グリベックとオーバーラップする副作用の程度は軽い。しかし、別の副作用が出る。ニロチニブは高血糖や黄疸、ダサチニブは胸水
・変異ABLの種類によって第二世代の薬を選択。T3151蛋白異常の場合は薬の効きが悪いので、造血幹細胞移植を検討
・第二世代の薬の効果としては、MMRへの移行率は高く、急性転化も少ない。しかし、2年間の治験では生存率では差がない。また、グリベックのジェネリック薬よりもはるかに高い

イマチニブ中止の分析研究(フランス)
・半数近くがMMRを維持。長く飲んでいた患者のほうが効果がよい
・再発後もイマチニブ治療再開で前例が良好な効果(MMR)に戻る
・イマチニブで再治療しないでも再び良好な結果(MMR)に戻る例もある
・増殖細胞は抑えられたが、CMLの造血幹細胞は残存しているのではないか
・Total cell kill (TCK)ではなく、functional cureを治癒の定義にすべきか

質問:第三世代のボスニチブの治験は受けられるか?
治験なので血球数が条件になるので確認が必要。なお、血球の減少は第二世代でも第三世代でも共通の課題であり、CML治療前に正常な造血幹細胞が攻撃を受けているのではないか。だましだましやらないといけない

質問:抗うつ剤を飲む必要があるのだが副作用は大丈夫か?
副作用は検討されているので主治医に確認して欲しい。暗くなる必要はないので薬を飲み続けて欲しい

質問:イマチニブ中止についてどこで受けられるか?
慶應病院だけでなく他の病院でも始まっている。チロシンキナーゼ阻害剤を止められるかの研究をやっているので、二年間CMR維持で止める研究に入ることは可能。6ヶ月で再発する、しないが分かるのは一つでもCML造血幹細胞があるかないかが反映される、数学的にmake senseする問題。

質問:マルクの痛み緩和、頻度減少は可能か?
下手な先生は麻酔を打ってからすぐやってしまうのがいけないのではないか。浸潤麻酔なので少し時間が必要。末梢血で代替できるものもあるが、詳細なデータはマルクが必要なので、慶應病院でも半年に一回はやっている

質問) 角膜の出血の副作用はなんとかならないか
グリベックではなかなか変わらないので、ずっと起こる方はニロチニブの方がよいかもしれない

■血液がんのチーム医療 Multidisciplinary Care
・チームA: 患者、血液内科医、看護師: 医療の提供、エビデンスの確立
・チームB: 患者、患者会、ソーシャルワーカー、ボランティア: 主観的な判斷の尊重
・チームC: 基礎研究者、製薬企業、骨髄バンクなど: 活動のサポート
・患者がチームの中心

■<チーム血液>の緩和ケアと在宅医療(慶応大学病院 緩和ケアチーム 安達先生)
・緩和医療は根本治療ができない終末期だけでなく、がん診断をうけた早期から緩和医療に関わる
・住み慣れた家庭や地域での在宅医療支援の充実
・精神心理的苦痛等を含めた全人敵な苦痛に対する緩和ケア
・ご家族への緩和ケア

在宅医療支援者(医者、看護師)へのアンケート結果
・血液がん(多発性骨髄腫、MDS、等)の在宅支援についてについて質問
・輸血、希望の変化、連携の不足、治療方針、抗癌剤、経験がないなどの問題点はあるが、血液の在宅医療推進については前向き
・退院時カンファレンス、外来通院経過、緊急時の受け入れを含めた病院専門医とのこまめでスムーズな情報共有と連携が必要
・地域、スタッフ、患者・家族、メンバに顔の見える緩和ケアを目指して

■病とともに地域で生きる(あおぞら診療所 川越正平先生)
在宅療養支援の中核をなす考え方=地域を病棟と捉える
・自宅が病院なら病室、地域の道路が廊下。在宅医や訪問看護師が巡回して、病棟に近い機能を提供(検査部、手術室以外)し、24時間365日の安心を提供する
・在宅医や訪問看護師が緊急訪問を保証することが、ライフラインと同様に重要

血液疾患患者の在宅医療導入例
・多発性骨髄腫で身体機能に障害→メルファランやサリドマイドによる治療を継続
・MDSに対して継続的輸血を必要としているが高齢、認知症、身体機能障害がある
・リンパ腫や白血病に対する負担の大きな治療を断念し看取り目的

専門医と在宅医への併診例
・化学療法後の食欲不振、嘔気に対する点滴
・白血球減少時のG-CSF連日投与
・腫瘍の皮膚浸潤に対する頻回の創処置 など
→まず地域の在宅医療機関や人材を把握する必要

治癒が勝利で死亡が敗北だけではない。病と共存する生き方も目標となり得る。生きている間の苦痛が少なく生活の質が高い状態が望ましい

「主治医」の見つけ方
・外来だけでなく往診にも取り組んでいる
・自分と相性がよさそうだという直感がきっかけ
・患者としての自分だけでなく、家族の健康さんに乗ってくれる
・急病の折に時間外でも相談に乗ってくれる
・自分の専門外のことは、きちんと他の専門医を紹介してくれる

■緩和ケアと在宅医療(青葉区メディカルセンター 藤田さん)
訪問看護師・ケアマネージャーであると同時に患者である
2007年2月 CML急性期で発症・入院
同年9月 骨髄移植、3ヶ月後に退院。筋肉量が落ちており、関節の痛みもあって介護保険検討
2008年2月 介護保険申請→要介助2/3と診断されるも申請受理されず
同年3-8月に訪問リハビリ(3割負担で医療保険を利用)→意思の指示が必要、訪問介護ステーションでサービス提供、週2回利用で月2.2-2.5万円
2008年10月 仕事復帰

■血液がんと在宅看護(あこもけあ在宅支援センター 所長・看護学修士 松木満里子)
・箱根の麓に在宅支援センターを設立
・医療保険の枠内だけではできない、保険外サービスで買い物やドライブも提供(外出支援)して、医療依存度が高い在宅患者に全面的なサポートを展開
・退院後の通院に介護タクシーを活用できる

諸問題
・介護保険を使えないと福祉用具は全額実費。但し保険適用外でもレンタル値段は安くなっているので家族への負担も小さくなる。業者に相談してみるといい
・感染症対策は実は病院にも菌はたくさんいる
・痛みや急な状態変化に対応してくれるサービスは広がっている

以上

2011年6月19日

2011/6/19 つばさフォーラム 「特集・白血病」備忘録(主に急性白血病について)

6月19日の日曜日に開催されたつばさフォーラム「特集・白血病」に参加してきました。
直接CMLの話はなかったですが色々と勉強になりました。部分的ですが、メモを残しておきます。

■アジェンダ
I 血液と白血病について知ろう
造血の仕組みと白血病の病態
東京慈恵会医科大学附属第三病院 薄井 紀子 先生
II 白血病の治療とその後について学び、考えよう
1)様々な治療と成績、治療選択
杏林大学病院 高山 信之 先生
2)小児白血病治療における晩期障害軽減に向けて
a)小児急性リンパ性白血病の新統一プロトコールにおける予防的頭蓋照射の全廃について
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)急性リンパ性白血病委員会委員長/中通総合病院 渡辺 新 先生
b)小児白血病治療における認知発達への影響とその対処法
国立成育医療センター 臨床研究センター 船木 聡美 先生
III 闘病生活での様々な支援
1)移植中、通院化学療法中の感染症対策ほか、闘病へのアドバイス
移植看護ネットワーク/国立がん研究センター中央病院 荒木 光子 さん
2)より良い生活とより良い治療のために 早期からの緩和ケア
辛い治療をじょうずに乗り越えるために、緩和ケアの基本的考え方をうかがいます。
国立がん研究センター中央病院 緩和医療科・精神腫瘍科 的場 元弘 先生
より良い闘病のために・・・何でも訊こう   講師全員
会場全体とのQ&A

■開催主体
共催:NPO法人日本臨床研究支援ユニット(JCRSU)、JCRSU・がん電話情報センター、
共催:NPO法人白血病研究基金を育てる会
後援:JALSG(日本成人白血病治療共同研究会グループ)
企画・総合司会:NPO法人血液情報広場・つばさ 橋本明子

(ここから個人的な備忘録)
■造血の仕組み
・血液は血漿と血球からできている
・血球は赤血球と白血球と血小板の三種類
・血液細胞すなわち血球は骨髄で造られる、赤血球なら一時間に百億個、白血球なら一から十億個も生成されるプロセス
・白血球の一種である好中球は12-14日間で排出

■白血病とは
・幼若な芽球が血液中に増える、過形成され無秩序な白血球の増加
・原因は細胞の分化、増殖に関わる遺伝子の量的変化、質的変化
・急性acuteと慢性chronic、骨髄性とリンパ性の組合わせで四パターン
・年間発症は十万人に6-7人 うちAML50 ALL25 CML20 CLL5。ALLは子供に多い、CLLは欧米で多い

■白血病治療の基本戦略
・白血病細胞を除去し、正常骨髄機能を回復
・完全寛解を目指した寛解導入療法、寛解を維持するための寛解後療法の大きく二段階
・AMLは完全寛解八割前後、生存率四割前後、ただし予後の結果は染色体異常の種類によって大きく異なる
・例えばAPLは中国で開発された治療法により寛解率九割、生存率八割になった

■AML(急性骨髄性白血病)の治療
・化学療法は最初はよく効くが、再発すると抗がん剤が効かない白血病細胞が増えて効かなくなってしまう
・そこで、造血幹細胞移植という選択があり再発後の生存率は高いが、合併症で亡くなる割合が二割程度存在する
・完全寛解に至る確率は高いが、その後に無治療では二年以内にほぼ全例再発するため地固め療法が必要。白血球が増え始めたころから実施。弱い寛解後治療は維持療法と呼ばれる

・造血幹細胞移植とは、大量化学療法と全身放射線照射により腫瘍細胞と正常細胞と一緒に根絶、その後に造血幹細胞の輸注を通常は点滴で行い2-4週間でドナー由来の造血細胞が働きはじめることを目指す
・HLA型の違いが拒絶反応を引き起こすため一致を確認するが、一般には万分の一程度の低確率で一致していても、マイナー組織適合抗原のミスマッチによりドナーのT細胞がレシピエントの臓器に攻撃を行なう場合がありGVHDと呼ばれる(移植片対宿主病)
・ただし、GVHDが出現した症例は再発の可能性が低くなりGVL効果、移植片対白血病効果で残存白血病細胞の駆逐に役立っていると考えられている
・他の移植後合併症は、臓器障害、感染症、晩期障害

・最も望ましい移植タイミングは寛解期であり、非寛解期の移植成績は二割程度で頭打ち
・第一寛解期に移植をすると化学療法だけで治っていたかもしれないのにリスクを負わせる可能性があり、第二寛解期の移植が望ましいのではないか。将来の再発リスクを判定するやり方について現在も議論がなされている

・論文では移植症例は移植日まで生存していた生存症例カウントされるので割り引いて考える必要
・移植を除いた現実的な化学療法の無病生存率は30-40%、二年程度で半分強が再発、再発後に完全寛解に至ったのは半数
・移植の五年生存率は第一寛解期移植は6割前後、第二寛解期は5割前後、非寛解期は2割前後。非血縁だと5パーセンテージポイント下がる
・遺伝子検査による再発リスク判断からは、予後良好群は化学療法を、予後不良群は第一寛解期に移植を

■ALL(急性リンパ性白血病)の治療方針
・ALLはイマチニブで寛解後に速やかに移植を実施するのが基本方針(Ph遺伝子陽性型)
・化学療法のみの場合、無イベント生存率は四割前後
・思春期(16~20歳)のALLは成人プロトコールより小児プロトコールより圧倒的に生存率がよい(2/3対1/3)
・スタンダードリスク群とハイリスク群に分けると、ハイリスク群では移植と科学治療の差が有意ではない
・ただし、再発後の予後はAMLより悪く、早めの移植が日本での実績も鑑みると適切かもしれない
・ALLにも第二世代のチロキシナーゼ阻害薬の効果は期待されるが、今後の臨床研究が必要

■小児白血病治療の認知発達への影響
・ALLが多い。脳や脊髄などの中枢神経に浸潤しやすいため、それを薬を使って防いでいく(髓注やメソトレキセート大量療法)
・薬のみならず従来は放射線を使っていたが脳に対する副作用があり、新しいプロトコールでは全廃する

・化学療法だけのプロトコールでは、欧米での研究だと、認知的能力の発達するときの治療のため、認知機能変化は出ているが統一見解は生まれていないが、IQ低下が軽度あり読解力や算数の学力の軽度低下はある。しかし成長速度は落ちるが伸びは継続するので、継続的な刺激と教育が必要

・アメリカの実証研究で、一年に四回評価と計画を行なうことで、放置ケースと比べて介入することでIQを回復させられる(90→100)
・一方で、治療によって長期記憶、コミュニケーション能力、言語能力は低下しない!
・小児白血病の子供を持つ親御さんのためのegonokiクラブ

■移植中、通院化学療法中の感染対策
・昔の写真でみるような、ビニール越しの無菌室のような過度な無菌治療環境はもはや存在しない
・感染対策としての無菌化をやめてより効率化してきたため、感染予防ケアが重要に
・口腔・皮膚・陰部・肛門のケアを日常習慣として普段から行なう

・口腔内細菌数を増やさない→うがい、ブラッシング、食事形態、口内炎による痛みには鎮痛剤
・皮膚→洗浄し清潔に保つ、軟膏等で湿潤環境を保つ、鎮痛剤を使いつつ歩くための工夫
・感染予防ポイント→人ごみにはいかない、埃を吸い込まないようにマスクをする、土いじりはしない、工事現場に近寄らない、こまめに手を洗う、フットケアを行なう、ペットボトルは開けて数時間以内に飲み切る、等々


■緩和ケア palliative care
・患者や家族がつらくないように、がんやがん治療と付き合っていくための方法論
・がんの経過に従って、病変自体の治療から痛みの治療と緩和ケアに移行していく
・緩和ケア=がんの治療を諦めることではない
・肺ガンの論文で、緩和ケアを受けた群の方が生存期間が長かったというスタディ結果もあり

・日本人が終末期に大切にしたいこと→苦痛がない、望んだ場所で過ごす、希望や楽しみがある、医師や看護士を信頼できる、家族の負担にならない、患者ではなく人間性を尊重される
→患者としてではなく、自分として死にたい

・痛い、食欲がない、眠れないので生活ができなくなる様な我慢をしてもしょうがない
・痛みを感じる神経線維には伝わるのが早い遅いの二種類あり、a-delta繊維とc繊維があり、がんの痛みが通じるのは後者でありモルヒネ等はそちら効く
・モルヒネ等は誤解されているが、麻薬中毒にならない、命は縮まない、だんだん効かなくならない、眠気は出るが意識はある、最後の手段ではなく他にもたくさんある、お花畑にはいけない(笑)

・痛みの伝え方→どこが、いつから、どんなふうに(鈍い、刺すような、痺れる、いつも、時々、じっとしている、動くとき)、どれくらい、痛みでできないこと、使っている薬の名前
・苦痛のない生活を維持することも、治療と同じように大事
・苦痛の緩和の治療はがんに対する敗北宣言ではない
・患者自身にしか、つらさがあることを伝えることはできない

■Q&A
・移植は何歳まで可能か?→七十歳あるいは八十歳を超えて挑戦している病院もあるが一般的にいえば効果があるかは何とも言えない、治療抵抗性・難治性でも救援療法はあるが輸血中心に緩和目的の方向転換も重要。在宅輸血治療を定期的に行なう場合、下世話な話だが、保険査定の対象となるので引き受けてもらえない可能性もある

・発酵食品を食べてはいけないのか?→発酵食品を禁止している施設もあるがヨーグルト等は、発熱していて余程白血球が少ない場合でなければ、食べたいものを食べて免疫力えを高めるほうが大事ではないか

・フィラデルフィア遺伝子陽性のAMLで化学療法で寛解後再発したがグリベックを飲んで再寛解した。今後も化学療法で進めるのがベストなのか?→医学的な結論は出ていない問題。五十六歳という年齢は移植医によっては判断が別れる微妙なところだが、全身状態がよくHLA一致ドナーがいることが大前提だが、移植も選択肢にいれたほうがよいかもしれない

・子供への移植と教育について→移植をしたかしないかでその後の生き方はやはり変わる。フル移植をした方は何らかのサポートが必要。成年がんが出やすいかもしれない。子供達には自分の健康は一生自分で見ていくよう何回も強調している。さらに、教育は次の道を開くので、何としてもサポートをしていきたい。どこで引っかかるのか分かってきたので、それをすくい上げるシステムが必要

・司会のまとめ:血液がんの全般を特定疾患にすることは、医療費増大の状況下で難しいが、交通費無料や患者と家族が年に二回ヨーロッパ旅行に行けるなど、なんかしら社会からのサポートがあるとよい

2011年6月3日

血液がん・高額療養費制度の見直しを提案する連絡会をスタート(がんサポート情報センター)

09年12月3日にメディア向け懇談会を開催、以降で表立っては活動が止まっているようで残念なので、プロボノとして、どっかのコンサルティングファーム(具体的にはヘルスケアに強いマッキンゼーかBCG)とかの知恵をうまく活用できないでしょうか。NPO法人つばさ、CML患者会「いずみの会」に入ってプレゼンスを上げてから色々仕掛けていきたいと思います。とりあえず6月19日の急性骨髄性白血病のセミナーには行こうと思います

なお、がんサポート情報センターの2010年4月の記事はコチラ


一生飲み続ける慢性骨髄性白血病薬の経済的負担は「重い」
医療費負担の軽減のため高額療養費制度の見直しを!

取材・文:菊池憲一(社会保険労務士)
(2010年04月号)
分子標的薬グリベック(一般名イマチニブ)などの登場で、慢性骨髄性白血病患者の生存率は飛躍的に延びた。
しかし、患者は高額な薬を生涯服用しなければならず、その経済的負担は大きい。慢性骨髄性白血病患者・家族の会「いずみの会」など血液疾患支援・患者団体4団体は共同で、医療費負担の軽減のため、高額療養費制度の見直しを訴えている。

負担軽減を課題に掲げた患者・家族の会を発足

写真:田村英人さん
「いずみの会」代表の田村英人さん
慢性骨髄性白血病患者・家族の会「いずみの会」は、「グリベック服用の負担軽減」を大きな課題に掲げて、「高額療養費制度の見直し」を提案している。
代表の田村英人さん自身、2003年4月、53歳のときに、慢性骨髄性白血病を告知された。同年6月から、グリベックを服用している。
幸い、グリベックで寛解()に至ったが、病気が完全に治ったわけではない。寛解は、治癒、根治、完治とは違う。治療をしないでいると、白血病細胞が再び増えてくる可能性がある。そのため、グリベックなどの薬を、生涯服用しなければならない。しかし、薬は高額である。田村さんも、経済的負担に苦しみ続けている。
田村さんは病気になったとき、インターネットなどで情報を探し、いろいろな機会を求めて、フォーラムなどにも参加した。しかし、同じ白血病でも種類によって治療は異なり、病気に対する感じ方も違っていた。
「慢性骨髄性白血病の人だけが集まって、話し合える場がほしい、という意識が強くなりました」と田村さん。
血液がん患者会のNPO法人血液情報広場「つばさ」主催のフォーラムで、その思いを語ったら、代表の橋本明子さんらから応援を得ることができた。
2007年秋、慢性骨髄性白血病患者会発足の準備会を立ち上げて、同年12月、「いずみの会」を発足させた。
同会は、2009年4月、会員やフォーラムの参加者に呼び掛けて、アンケート調査を行った。
慢性骨髄性白血病患者が治療を受けるにあたって日頃から抱いている思いや、治療上困難に感じている点について把握し、よりよい治療方法について、患者さんの家族、または医療者、製薬会社への情報発信を行うことが調査の目的だった。
137人の回答からは、左記のような結果が出た。
慢性骨髄性白血病の治療では、「治療に関わる医療費の負担」を困難と感じる割合がとくに多く、経済的な負担が最も大きな問題であることが明らかとなった。
また、現在ほしい情報については「自身の今後の見通し」に次いで「医療費」が多かった。
田村さん自身、高額な医療費に苦しんできたから、この調査結果はよく理解できた。
寛解=病気の症状が軽減またはほぼ消失し、臨床的にコントロールされた状態

4団体共同で高額療養費の見直しを訴えていく

写真:09年12月、報道機関を対象とした「高額療養費に関する懇談会」を開催した
09年12月、報道機関を対象とした「高額療養費に関する懇談会」を開催した
2001年に登場した慢性骨髄性白血病治療薬グリベックにより、長期生存を期待できる患者は増えた。しかし、この治療には高額の医療費がかかり、また治療期間も生涯と長期にわたる。そのため、患者の経済的負担は大きい。
長期間にわたって、高い治療費を患者が負担しなければならない状況を受けて、昨年12月、「つばさ」「いずみの会」「日本骨髄腫患者の会」「骨髄異形成症候群(MDS)連絡会」の血液疾患支援・患者団体4団体は、「血液がん・高額療養費見直しを提案する連絡会」(代表・橋本さん)を発足させた。 4団体は共同で、高額療養費制度の自己負担上限額の引き下げを訴え、その早期実現を第一に目指す考えだ。
また、連絡会は昨年12月3日に、報道向けの懇談会を開催。
(1)がん・非がんすべての疾病ごとに「高額医療」を知識として集めて共有する、(2)地方自治体に医療費問題での協力を要請する、(3)シンポジウム開催(5月9日早稲田大学井深ホール)――など、今後の活動内容についても発表した。

高額療養費の払い戻し額は病院の領収書で予想できる

日本の健康保険法と国民健康保険法には、高額療養費制度がある。これは、被保険者()または被扶養者が同一の医療機関(薬局を含む)に対して、同一の月に、窓口で支払った医療費が自己負担限度額という一定の額を超えた場合、その超えた額を還付する制度である。
自己負担限度額は、40頁表のように年齢や所得によって多少異なる。また、高額療養費の支給要件、払い戻し額などは、医療機関から全国健康保険協会や健康保険組合などの保険者()に提出されたレセプト(診療報酬明細書)1件ごとに、保険者が確認する。そのため、高額療養費制度による払い戻しがあるかどうかは、患者側にはわかりにくい。それでも、病院の領収書と薬局の領収書を見れば、予想はできる。
例えば、所得が「一般」に区分される50歳代の被保険者Aさんが外来通院をした場合、次のようになる。
外来診療費の領収書の合計保険点数と、薬局の領収書の合計保険点数を足した保険点数に10円をかけた額が表の「医療費」となる。この額を表の計算式に入れて計算すると、「自己負担限度額」が出てくる。実際に医療機関の窓口で支払った額から自己負担限度額を差し引いた額が「高額療養費」として、Aさんの個人口座に払い戻されることになる。
被保険者=健康保険に加入し、病気やけがなどをしたときなどに必要な給付を受けることができる人
保険者=健康保険事業を運営するために保険料を徴収したり、保険給付を行ったりする運営主体
[70歳未満の方の高額療養費自己負担限度額]
(70歳以上の方と70歳未満の方の世帯合算を含む)

区分表記自己負担限度額12カ月の間に4回以上対象となる場合の
4回目からの自己負担限度額
一般B80,100円+(医療費-267,000円)×1%44,400円
上位所得者
(国民健康保険税の算定の
基礎となる基礎控除後の所得が
600万円を超える世帯)
A150,000円+(医療費-500,000円)×1%83,400円
市民税非課税世帯C35,400円24,600円
[70歳以上の方の高額療養費自己負担限度額]
区分自己負担限度額
外来
(個人ごとに計算します)
世帯単位で入院と外来が
複数あった場合は合算します
一般12,000円44,400円
現役並み所得者44,400円80,100円+(医療費-267,000円)×1%
(4回目から44,400円)
市民税非課税世帯II8,000円24,600円
I15,000円
医療費の総額(10割)となります

患者負担は薬代だけで年間約60万円!

グリベックの「薬剤料(薬価)だけ」にしぼって、試算してみると――。
グリベックの薬価は、3128.5円。標準的には、1日4錠服用する。外来通院で、医師からグリベックを1日4錠、4週間分(28日分)を処方してもらうと、保険点数にカウントされる薬剤料だけで35万円ほどになる。患者の自己負担割合が3割なら、Aさんが医療機関の窓口で支払う額は、薬剤料だけで10万5000円ほどになる。
表の式で計算すると、自己負担限度額は8万0930円。窓口で支払った額10万5000円から、自己負担限度額8万0930円を差し引いた2万4070円があとで払い戻される。
Aさんは、10月中、11月中、12月中に、外来通院で、グリベックの4週間分の処方を受けた。3回とも、同じ計算式にもとづいて、高額療養費が払い戻された。翌年1月中の外来通院のときは、「多数該当」となり、自己負担限度額は4万4400円に軽減された。診療を受けた月以前12カ月以内にすでに3回以上高額療養費が支給されているときは、4回目から自己負担限度額が軽減される。Aさんの場合、翌年1月中に受診したとき、この多数該当が適用された。窓口で支払った10万5000円から、自己負担限度額4万4400円を差し引いた6万0600円があとで払い戻された。もし、翌年2月中、3月中……という月1回の外来通院リズムで、4週間処方を受け続けたら、毎回、自己負担限度額4万4400円が適用される。
しかし、自己負担限度額が4回目以降、4万4400円となっても、薬代だけで年間の負担額は約60万円(4回目以降、4万4400円×12回=53万2800円)にものぼるのだ。

処方間隔を3カ月にすることで負担は減少

薬の投与量は、厚生労働省の「規則」「告示」などで、1回14日分、30日分、90日分を限度とする、などと決められている。この「規則」「告示」などを調べた結果、グリベックには投与期間の上限が定められていないことがわかった。
「直近12カ月の間に、4回以上対象となる場合の自己負担限度額は4万4400円と定められています。そのため、現状制度での経済的負担額の低減方法としては、処方間隔を3カ月(90日分)にすることで患者さんの負担はとてもミニマムになります」(田村さん)
この方法を、Aさんのケースで試算してみると……。
Aさんが、医師の理解と協力を得て、3カ月処方に切り替えると、年間の自己負担限度額は17万7600円(4回目以降、4万4400円×4回)となり、4週間処方に比べて、年間35万5200円(53万2800円-17万7600円)も医療費負担が軽くなる。

現状制度での負担軽減法を周知徹底していく

「まずは、グリベックの3カ月処方で慢性骨髄性白血病患者さんの医療費負担が軽減できるように、この方法を周知徹底するための広報活動に取り組んでいきたい。また、今後は、長期治療中の患者さんの負担軽減のために、高額療養費制度の自己負担限度額をもう少し生活実感に近い金額まで引き下げられないか、など制度そのものの改定を訴えていきたいと思っています」と田村さん。
1疾病、1剤、1治療法に焦点を当てるのではなく、高額療養費制度自体の改定を、連絡会として訴えていきたいという。
「最終的な夢は、慢性骨髄性白血病の治癒につながる薬が開発されることです。そうすれば、薬を一生服用する必要もなくなり、経済的な問題もなくなります。患者、医療従事者、製薬会社が協力し合い、情報交換をして、思いが1つの方向にまとまるように今後も努力していきたいと思います」(田村さん)