昨年行けなかった(と思う)佐賀大学医学部 血液・呼吸器・腫瘍内科 教授 木村 晋也の1時間を超えるCMLに関するセッションがウェブ上で公開されていました。
未だ観ていませんが、取り急ぎYoutube上の動画を以下に張っておきます。
Diagnosed as Chronic Myelogenous Leukemia (CML) in my late twenties, I've decided to live with what I love and do what I'd love to do. Be yourself; be happy.
2013年2月5日
2012年1月9日
「2012/1/9 造血幹細胞移植研究 公開シンポジウム」の備忘録
造血幹細胞移植研究 公開シンポジウムを聴講して来ました。学会発表の抜粋のようんで手元資料がなく、理解が追いつかなかった点が結構ありましたが、ポイントだけでもメモしておきました。末梢血幹細胞移植についてかなりイメージが湧きましたが、一方で、昨年3月に本邦移植一号という点にも驚きました。
五十回から百回の穿刺をドナーに行い、一回十ミリリットルを採取
抗CCR抗体4といった新たな治療法もでてきている
・移植関連死亡は2-3割あるが、 ウイルス感染対策薬と免疫抑制薬の海外で使えるものの殆どが、国内で未承 認ないし適応がないという課題
・医師が主導する治験という制度もできたが、 造血幹細胞移植自体年間三千件ではオーファン扱いであり、 医学薬学上公知から公知申請というアプローチが現実的
日時 2012年1月9日 3-5pm
場所 東京医科歯科大 湯島キャンパス
■厚生労働省 健康局 疾病対策課 臓器移植対策室 狭間
・とくに内容なし
■最近の移植傾向 名古屋大学 熱田由子
・ 造血幹細胞移植とは難治性の血液悪性腫瘍の根治を目的に造血幹細 胞を移植する再生医療の先駆け。造血幹細胞は骨髄だけでなく臍帯 血、抹消血からも
・1974年から日本では移植開始、 八十年代に免疫抑制剤の進化でドナーがレシピエントの白血病細胞 を攻撃するGVL反応により予後が改善することがわかり、 化学療法との組み合わせが進む
・直近でのおよその年間件数は自家移植が1500、 同種移植が3000。同種移植のうち血縁者間は1000、 非血縁者が2000。これは血縁で完全一致確率が1/ 3なので適正数
・また、同種移植のうち臍帯血移植は1000件でこれはヨーロッパ全土と同水準の多さ
■新しい移植法 関西医科大学 池原進
・骨髄には造血幹細胞、間葉系幹細胞の二種類がある
・ 骨髄移植では血液疾患や免疫不全のみならずリウマチなどの自己免 疫疾患にも効果がある
・現在の骨髄移植の問題点は、 移植片対宿主反応(GVHD)と生着不全(=拒否反応)の二つ
・GVHDを防ぐには、 移植時に抹消血とその中にはいるリンパ球混入するのを防ぐ灌流法 、 従来の腸骨に百本近い穿刺針を指して取らずに点滴ではない骨髄内 骨髄移植
・生着不全を防ぐには、 間葉系幹細胞も合わせて移植することで造血幹細胞も守られる
・現在、骨髄内骨髄移植のフェーズワンの研究中
■非血縁ドナーを選択するときのポイント 愛知県がんセンター 森島泰雄
・ ドナーのレシピエントの免疫担当細胞が正常細胞を攻撃するのがG VHDでこちらは抑えたい、一方で、白血病細胞を攻撃するのがGVL反応でこちらは望ましい
・HLA型の一部不適合の場合に、 どのHLA型のミスマッチが悪い効果をもたらすかを解析し、 HLA- CのミスマッチがGVHD重症化と死亡率悪化をもたらすためドナ ー選択順位のプロトコルに反映。なお、 HLA不適合が多い場合はHLA不適合でもGVHDが少ない臍帯 血移植を検討する
・さい帯血移植結果のデータベースが不完全で、不適合が多い場合の非血縁ドナーからの骨髄移植との比較(どちらの予後がより良好か)は今後の課題
・日本人間では不適合のあるドナーからの移植でも、白人間における同じ移植よりもなぜか予後がよい、原因は今後の研究課題
■非血縁の抹消血幹細胞移植と骨髄移植の違い 名古屋第一日赤病院 宮村耕一
・BMH:骨髄からの採取では、
・PBSCT:抹消血からの採取では、G- CSFを打って抹消血内に造血幹細胞やリンパ球に増やし、 高齢者へのミニ移植や骨髄繊維症には有用
・G-CSF投与後一ヶ月以内に重篤な副作用が起きたのは、海外では死亡事例もあるものの国内移植プロトコルではそもそもドナーとできない事例も多く、国内では3200件のうち20件程度で回復不能なものはなし。
・ 事例をもとにコレステロール値と血圧からのPBSCTプロトコロ ルを作成。骨髄バンク基準を当てはめると女性はリスク0.5% 未満、男性はコレステロール値により0.5%未満ないし1%未満のリスクにとどまる
・慢性GVHDの発生割合は、 抹消血移植の方が10pp以上も多いのは事実ので対応策が今後の課題。ただし、昨年三月に非血縁者間の抹消血幹細胞移植が本邦はじめて実現した ばかり
地域差が多い
・国内において、 ドナー選定から採取まで75日までかかっているのは施設側のキャ パシティ問題もあり、 PBSCTも増えれば短期化できるのではないか。 現在は国内にPBSCT認定施設が35あるが、 他先進国では使えるECP導入などの課題もまだ大きい
■ATL特命チームができて進んだ点 九州がんセンター 鴻池直邦
・ATLとは成人T細胞白血病で、HTLV-1によって起き、
(HTLV-1キャリアは日本に100万人以上、キャリアの生涯発症率は2-6%とのこと(Wikipedia))
・化学療法では治らず、十年でほぼ亡くなってしまう。長期生存率は4.7パーセント
・通常の移植では予後が悪い結果が出ており、 ミニ移植の可能性を研究している。 現状では一期と二期研究ではミニ移植後に五年で34% 生存であり決して満足のいく結果ではないが、三年目以降は生存曲線がフラットになっているため完治して社 会復帰できているケースが出ている
・免疫療法の開発、
■移植領域で使える治療薬を増やし、移植後のQOLを高めるには 国立がん研究センター中央病院 福田隆浩
・医師が主導する治験という制度もできたが、
・医学薬学上公知となるには、 海外でのエビデンスと国内のエビデンスが必要。 海外では保険未承認ながら移植時には保険で弾力的に運用して使わ れている場合も多くデータを個別薬ごとに集めないといけない。 国内エビデンスでは、 臓器移植適応などがある場合は日本人のエビデンスを蓄積しやすい
・「医療上の必要性の高い未承認薬・ 適応外薬検討会議」の設置により検討が進んだが、 海外未承認薬についてはエビデンス不足扱いになりやすいという課 題は残っている
・ 移植後のQOL低下を補正しても移植の方が期待生存率が高いとい う統計解析は移植を推進する根拠になるが、QOL指標の重み付け を(死亡をゼロ、健康な生存を1とするときに、 GVHDあり生存をどう数値評価するか、など) 医者ではなく患者が評価するように急性白血病について研究を開始
2011年12月5日
「2011/12/4 つばさ支援基金報告セミナー」のメモ(前半のみ)
前半部分のみ(=支援基金への申し込み状況と対象3疾患の概要)参加してきました。
CMLについては既知の内容でしたが、MDSとGISTについては全く知らなかったので勉強になりました。先生方、分かりやすいプレゼンをありがとうございます。後半の患者からの声、医療費問題についてもWeb上で簡易の報告があるとありがたいのですが。。。
■第三期になってからの申し込み状況(日本臨床研究支援ユニット 大西さん)
・生活保護など非課税の方は対象外で、一定以上の所得があり、第三期からは 一方で子供の人数を換算して生活状況を加味
・問い合わせへの対応コールセンターをNPO日本臨床研究支援ユニ ットが受付
・累計で838件の架電中で、宮城・鳥取の二県からはいまだゼロ
・平均すると毎月十件程度の申請申し込み(継続含む)、累計125件を審議
・助成件数は95件で全てCML、MDSとGISTはこれから
■MDS 骨髄異形成症候群(荏原病院 秋山秀樹先生)
・MDSによる骨髄の機能低下に対し、 赤血球は輸血ができるが白血球はできない。 血小板は一時的な輸血は行われることはあるが実際には継続困難
・一定の比率で「白血病」化とでもいうべき病状進行になる
・最近まで有効な寛解維持の薬がなく、唯一の治療法は骨髄移植のみ
・IPSS、国際予後分類によるリスク度合いにより、 2年程度から10年まで死亡に至る時間が異なるので正しい分類が 必要
・ハイリスクの人達は移植によるメリットを受けるが、 ローリスクのひとは移植によるデメリットが大きい
■GIST、消化管間質腫瘍(大阪警察病院 西田俊朗先生)
・GISTとは骨肉腫の親戚、内側の筋肉層にできるのがGIST。ちなみに癌と は粘膜細胞や粘膜下層などの表面細胞の変異
・発生頻度は年間で10万人に1-2人と少ない。ただし、 60代の胃の十人に1人は芽があるらしい
・粘膜下腫瘍は偶然に見つかり、 表面が粘膜で覆われているため潰瘍等にならなければ自覚症状はほ とんどない。気づいたら肝臓転移や腹膜播種ということも。術後三 年は三割が再発で長期には四割程度が再発
・術後の再発防止にキナーゼ阻害剤としてイマチニブ。 効果は遺伝子変異によるので注意が必要。但し、 飲んでもGIST細胞は根絶されないので血中濃度を保ってきちん と飲み続ける必要。
・現在開発が進んでいる新薬(名称聞き漏らし)はグローバル・フェーズ3(大規模な患者の服用によるエビデンスの確立)の段階まで進んでおり、フェーズ2(少数患者の服用による効果・安全性確認)は想定よりも大幅にポジティブな結果
ここまでで別件があり途中退出しましたが、色々考えることができました。特に事業的に考えたキー・クエスチョンは2つです。この2つに対する仮の答えを出したいですね。
2011年7月30日
7/30 つばさ定例フォーラム「血液がん 新たな治療と新たな課題」備忘録
結構今更ながら理解することもあってとても勉強になりました。白血病の種類は、造血幹細胞から分化するどこの細胞が遺伝子異常を起こしているかで異なり、CMLは造血幹細胞という一番根っこの異常(そしてAML、CLL等は違う分化後)という基礎的なところすらわかってなかったことが判明です。苦笑
あとで時間があるときに構造化は直すとして、とりあえずメモをそのままアップしておきます。プレゼンターごとに■マークで区切っています。岡本先生のが論点も明確で面白かった。黒川先生はわかりやすいですが、概論の担当をされていたので、そこまで切り込んでくる感じはなかったです。
■血液と血液がんの病態(東大医学部附属病院 血液・腫瘍内科 黒川峰夫先生)
正常の血液はどのようなものなのか
・血液の成分は血漿が55%、血球が45%。血漿は有機物(蛋白7%など)、無機塩類、水。血球は血小板(15万~35万/ul)、白血球(4,000-10,000/ul)、赤血球(男性は450-550万/ul、女性は400-500万/ul)
・赤血球は寿命が120日くらい。一日あたり2千億個が生まれて同じだけ廃棄。赤血球は全身に酸素を運ぶ
・白血球は病原体から体を守る。リンパ球、好酸球、好塩基球、単球などがあり守備範囲が異なる
・血小板は出血を止める
・骨髄のなかにある造血幹細胞という起源となる細胞が、赤血球・白血球・血小板といった多様な細胞へ分化する。自己複製、増殖能力がある
・成熟した赤血球・白血球・血小板は血管の中を流れているが、成熟する一歩手前(前駆細胞)までは骨髄の中で営まれており血液中に出てこない
血液の異常である病態はどのような病気で、どのように起きるのか
・血液細胞に遺伝子の変化が生じ、異常増殖するようになったもの。異常増殖したがん細胞は、正常な造血や内臓の機能に障害を与える
・血液腫瘍(悪性リンパ腫と白血病)はがんのおよそ3-4%。障害の罹患率は悪性リンパ腫が1%、白血病が0.5-0.7%
・血液腫瘍の5年生存率は、悪性リンパ腫で50%、多発性骨髄腫で25%、白血病で30%とがんの中でも難治な部類。主な造血器腫瘍は、急性骨髄性/リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病。悪性リンパ腫、多発性骨髄腫(成熟リンパ系腫瘍)
更に細かい白血病の説明
・慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の異常(BCR-ABLキメラ遺伝子が生じる疾患)
・造血細胞の段階でBCR-ABL遺伝子が生じ、無秩序な分化を起こす
・t(9;22); 9番目と22番目の染色体が融合したPh染色体→PCR-ABL融合遺伝子。ABLがキナーゼ活性を高め、血液細胞の増殖を亢進
・キナーゼ活性をブロックするのがイマチニブの役割
・無治療の場合には5~10年の経過で進展し、急性白血病のように未分化な細胞が異常増殖
・急性リンパ性白血病リンパ球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・悪性リンパ腫は、さらに分化したリンパ球に遺伝子異常がおきる
・急性骨髄性白血病は、骨髄球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・遺伝子異常は、増殖シグナルの活性化により増殖が亢進し、正常分化が阻害される
・t(8;21); 8番目と21番目の染色体がちぎれてつながる=転座、他にはt(15;17)など
・遠心分離した時に、赤血球が減って増えた白血球の白色が肉眼でも分かるくらい
・芽球(blast = 白血病細胞)は、形態的には造血細胞の幼弱な状態に似ているが遺伝子異常を起こしており正常な機能を担えない
標準療法と臨床治験
・標準治療=ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療。科学的根拠に基づいた観点で、現在理由できる最良の治療(evidence-based)
・エビデンスとは、この薬や治療法、医療行為についてよいといえる証拠。症例報告・大家の意見<分析的研究<ランダム化試験の順で科学的信頼性が高い
・ランダム化試験とは、患者を無索引に割りつけて治療方法を分けて効果を比較
・高いレベルでのエビデンスを得るために臨床試験を行う。その中で治験とは、医薬品の製造・輸入承認を申請するための資料を得ることを目的とした臨床試験
質問:何が原因で血液がんになるのか、何かやってはいけないことをしたのか?
・遺伝子に傷がつくことは日常生活にあるが、通常はそうした異常細胞は体内で処理されるが、その網の目をどうにかくぐり抜けてしまった細胞が増殖する
質問:放射線治療を受けた患者は、福島原発事故の影響でリスクが倍増するのではないか?
・リスクは受けた線量に応じて発症するが、線量の少ない・多いと、がんの程度は相関せず、高い線量だと確率が高まるので被曝をしないほうがよい
■血液がんの治療について(慶應義塾大学病院 岡本真一郎先生)
造血器腫瘍の治療法
1.化学療法(Chemo)
・最初の頃は、インディオの毒矢の成分から作られた。例えば、オンコビンという薬はマダガスカルのニチニチソウという花から作られた
・主な抗癌剤は、DNA/RNAの損傷や合成阻害を起こす薬剤か、微小管の機能を抑制する薬剤
・細胞周期(サーキット)の途中で、異常な細胞は各々のフェーズにチェックポイントがあり異常があれば細胞をもとに戻すメカニズムがある
・白血病細胞では細胞周期チェックポイントの壁が低く正常に機能しない(分裂期崩壊 Mitotic Catastrophe)、そこに働きかけるのが化学療法
2.造血幹細胞移植(MTA)
・造血幹細胞の悪いところだけを切り取れないので、細胞をまるごと取り除いてしまい、そのあとで正常な造血幹細胞を移植する
・前処置: 腫瘍細胞の根絶、֭�常造血の破壊、免疫系の破壊
・造血幹細胞の移植: 恒久的造血の回復(2-3週)、恒久的免疫系の回復(3-4月)
・同種免疫反応の制御: 移植片対宿主病(GVHD)、免疫系再構築遅延に伴うウイルス感染症→治療の進化で早期死亡は1割程度にまで減少
・造血幹細胞だけを抽出することは難しいので、骨髄血液を吸引して移植。あるいは、最近では臍帯血にも造血幹細胞が多く含まれているので凍結保存をしておいて使う。また、白血球を増やすG-CSFをドナーに投与して、造血幹細胞が増えるところだけを取り出す末梢血幹細胞を採取
・世界の骨髄バンクでの比較では、骨髄輸出・輸入をしなくても造血幹細胞の「自給自足」が成立
・無菌室のQOLも向上し、現在ではほぼ日常と同じような格好で生活可能
・移植片対白血病効果(GVL): GVHDを起こした人は、その後の再発が少ない。おそら⁏、免疫反応を起こすT細胞が白血病細胞も攻撃して腫瘍を根絶するのではないか。
・骨髄破壊的移植では元気な比較的若い患者しか対象に出来なかったが、骨髄非破壊的移植(ミニ移植、RIST)で高齢者やほかの病気のある人も対象に。ただ、移植後後期合併症(慢性GVHDや二次発性がんなど)の問題は以前抱えている
・慶應病院では、AMLへの移植で、寛解期では生存率85.5%、寛解期でないと生存率は46.7%。移植関連死亡は1年半後までで10.2%
・個々の患者の遺伝子検査による移植の予後予想法の確立が今後の課題
・“No guts no glory, and we made it”、血液内科のチーム医療としての移植
3.分子標的療法(SCT)
・突然変異によって生まれたがん細胞自身やその生存・増殖環境を選択的に対処する(ゴルゴ13w)
・受容体型チロシンキナーゼの異常とは、特定のタンパク質の結合がないのにチロシンキナーゼが常に活性化されている状態であり、その活性を阻害する
・イマチニブは、BCR-ABL蛋白のリン伝達プロセスを阻害。このプロセス以降に細胞死を抑制したり細胞増殖を亢進する他のタンパク質の伝達を全て止めることが可能。このような「アキレスのかかと」を他の造血器腫瘍ではみつかっていない
・ただし、イマニチブは飲み続けないといけないので費用的な問題は存在
今後の方向性
・造血器腫瘍のがん細胞における幹細胞を叩く(蜂の巣における女王蜂)
・Nicheと呼ばれるくぼみに血液がん幹細胞が隠れていると推測されており、取り出して攻撃できないか研究
・現状でそれを実現できるのは現状では造血幹細胞移植のみ
・治療の目的は、根治だけてなく、QOLを保った製造期間を少しでも長く維持する
・EBMだけでなく、Narrative-based Medicine(NBM)。臓器障害・予後因子と異なる患者側の因子(人生観・家族・仕事など)を考慮
“Medicne is an art based on science” 医者と患者が協力して組み上げるart
質問:移植して3年、しびれが厳しいがどうにかならないのか?
しびれは問題として残っている。なかなか対応が難しいがしびれが始まった段階から色々な薬を使う
質問:CMLの22歳女性(12歳で発症)、今後妊娠は可能か?
化学療法・グリベックを含めて治療をしているときには妊娠は薦められない。がいろいろな対策が進んでいる。詳細は分科会で。
質問:多発性骨髄腫でなぜ同種移植の条件が厳しいのか?
比較的高齢者が多いのでなるべくいい生存期間を伸ばそうとすると移植の位置づけはあとになる。若い方の場合は積極的に考えても良い
■CML分科会: 慢性期の治療2011
治療段階の確認
・血液学的寛解(HR): 血球数が正常値に
・細胞遺伝学的寛解(CgR): BCR-ABL遺伝子量(通常ABL遺伝子のうち)が1/100以下。Ph染色体が見えなくなる
・分子生物学的寛解(MMR): BCR-ABL遺伝子量が1/1000以下。コピー数が検出不能な段階まで行くと完全寛解(CMR)。同じレベルの中でコピー数が増えたり減ったりは危なくない。それより前のレベルに戻ると効いていない判斷
第二世代の薬(ダサチニブ、ニロチニブ)
・8年のうちで37%が効果不十分でやめている(CCyR達成できないのが18%、CCyR達成後の効果喪失が8%)ので第二世代を検討
・ただし、第二世代でも20%位は中止になっているので留意が必要
・第二世代の薬は、グリベックとオーバーラップする副作用の程度は軽い。しかし、別の副作用が出る。ニロチニブは高血糖や黄疸、ダサチニブは胸水
・変異ABLの種類によって第二世代の薬を選択。T3151蛋白異常の場合は薬の効きが悪いので、造血幹細胞移植を検討
・第二世代の薬の効果としては、MMRへの移行率は高く、急性転化も少ない。しかし、2年間の治験では生存率では差がない。また、グリベックのジェネリック薬よりもはるかに高い
イマチニブ中止の分析研究(フランス)
・半数近くがMMRを維持。長く飲んでいた患者のほうが効果がよい
・再発後もイマチニブ治療再開で前例が良好な効果(MMR)に戻る
・イマチニブで再治療しないでも再び良好な結果(MMR)に戻る例もある
・増殖細胞は抑えられたが、CMLの造血幹細胞は残存しているのではないか
・Total cell kill (TCK)ではなく、functional cureを治癒の定義にすべきか
質問:第三世代のボスニチブの治験は受けられるか?
治験なので血球数が条件になるので確認が必要。なお、血球の減少は第二世代でも第三世代でも共通の課題であり、CML治療前に正常な造血幹細胞が攻撃を受けているのではないか。だましだましやらないといけない
質問:抗うつ剤を飲む必要があるのだが副作用は大丈夫か?
副作用は検討されているので主治医に確認して欲しい。暗くなる必要はないので薬を飲み続けて欲しい
質問:イマチニブ中止についてどこで受けられるか?
慶應病院だけでなく他の病院でも始まっている。チロシンキナーゼ阻害剤を止められるかの研究をやっているので、二年間CMR維持で止める研究に入ることは可能。6ヶ月で再発する、しないが分かるのは一つでもCML造血幹細胞があるかないかが反映される、数学的にmake senseする問題。
質問:マルクの痛み緩和、頻度減少は可能か?
下手な先生は麻酔を打ってからすぐやってしまうのがいけないのではないか。浸潤麻酔なので少し時間が必要。末梢血で代替できるものもあるが、詳細なデータはマルクが必要なので、慶應病院でも半年に一回はやっている
質問) 角膜の出血の副作用はなんとかならないか
グリベックではなかなか変わらないので、ずっと起こる方はニロチニブの方がよいかもしれない
■血液がんのチーム医療 Multidisciplinary Care
・チームA: 患者、血液内科医、看護師: 医療の提供、エビデンスの確立
・チームB: 患者、患者会、ソーシャルワーカー、ボランティア: 主観的な判斷の尊重
・チームC: 基礎研究者、製薬企業、骨髄バンクなど: 活動のサポート
・患者がチームの中心
■<チーム血液>の緩和ケアと在宅医療(慶応大学病院 緩和ケアチーム 安達先生)
・緩和医療は根本治療ができない終末期だけでなく、がん診断をうけた早期から緩和医療に関わる
・住み慣れた家庭や地域での在宅医療支援の充実
・精神心理的苦痛等を含めた全人敵な苦痛に対する緩和ケア
・ご家族への緩和ケア
在宅医療支援者(医者、看護師)へのアンケート結果
・血液がん(多発性骨髄腫、MDS、等)の在宅支援についてについて質問
・輸血、希望の変化、連携の不足、治療方針、抗癌剤、経験がないなどの問題点はあるが、血液の在宅医療推進については前向き
・退院時カンファレンス、外来通院経過、緊急時の受け入れを含めた病院専門医とのこまめでスムーズな情報共有と連携が必要
・地域、スタッフ、患者・家族、メンバに顔の見える緩和ケアを目指して
■病とともに地域で生きる(あおぞら診療所 川越正平先生)
在宅療養支援の中核をなす考え方=地域を病棟と捉える
・自宅が病院なら病室、地域の道路が廊下。在宅医や訪問看護師が巡回して、病棟に近い機能を提供(検査部、手術室以外)し、24時間365日の安心を提供する
・在宅医や訪問看護師が緊急訪問を保証することが、ライフラインと同様に重要
血液疾患患者の在宅医療導入例
・多発性骨髄腫で身体機能に障害→メルファランやサリドマイドによる治療を継続
・MDSに対して継続的輸血を必要としているが高齢、認知症、身体機能障害がある
・リンパ腫や白血病に対する負担の大きな治療を断念し看取り目的
専門医と在宅医への併診例
・化学療法後の食欲不振、嘔気に対する点滴
・白血球減少時のG-CSF連日投与
・腫瘍の皮膚浸潤に対する頻回の創処置 など
→まず地域の在宅医療機関や人材を把握する必要
治癒が勝利で死亡が敗北だけではない。病と共存する生き方も目標となり得る。生きている間の苦痛が少なく生活の質が高い状態が望ましい
「主治医」の見つけ方
・外来だけでなく往診にも取り組んでいる
・自分と相性がよさそうだという直感がきっかけ
・患者としての自分だけでなく、家族の健康さんに乗ってくれる
・急病の折に時間外でも相談に乗ってくれる
・自分の専門外のことは、きちんと他の専門医を紹介してくれる
■緩和ケアと在宅医療(青葉区メディカルセンター 藤田さん)
訪問看護師・ケアマネージャーであると同時に患者である
2007年2月 CML急性期で発症・入院
同年9月 骨髄移植、3ヶ月後に退院。筋肉量が落ちており、関節の痛みもあって介護保険検討
2008年2月 介護保険申請→要介助2/3と診断されるも申請受理されず
同年3-8月に訪問リハビリ(3割負担で医療保険を利用)→意思の指示が必要、訪問介護ステーションでサービス提供、週2回利用で月2.2-2.5万円
2008年10月 仕事復帰
■血液がんと在宅看護(あこもけあ在宅支援センター 所長・看護学修士 松木満里子)
・箱根の麓に在宅支援センターを設立
・医療保険の枠内だけではできない、保険外サービスで買い物やドライブも提供(外出支援)して、医療依存度が高い在宅患者に全面的なサポートを展開
・退院後の通院に介護タクシーを活用できる
諸問題
・介護保険を使えないと福祉用具は全額実費。但し保険適用外でもレンタル値段は安くなっているので家族への負担も小さくなる。業者に相談してみるといい
・感染症対策は実は病院にも菌はたくさんいる
・痛みや急な状態変化に対応してくれるサービスは広がっている
以上
あとで時間があるときに構造化は直すとして、とりあえずメモをそのままアップしておきます。プレゼンターごとに■マークで区切っています。岡本先生のが論点も明確で面白かった。黒川先生はわかりやすいですが、概論の担当をされていたので、そこまで切り込んでくる感じはなかったです。
■血液と血液がんの病態(東大医学部附属病院 血液・腫瘍内科 黒川峰夫先生)
正常の血液はどのようなものなのか
・血液の成分は血漿が55%、血球が45%。血漿は有機物(蛋白7%など)、無機塩類、水。血球は血小板(15万~35万/ul)、白血球(4,000-10,000/ul)、赤血球(男性は450-550万/ul、女性は400-500万/ul)
・赤血球は寿命が120日くらい。一日あたり2千億個が生まれて同じだけ廃棄。赤血球は全身に酸素を運ぶ
・白血球は病原体から体を守る。リンパ球、好酸球、好塩基球、単球などがあり守備範囲が異なる
・血小板は出血を止める
・骨髄のなかにある造血幹細胞という起源となる細胞が、赤血球・白血球・血小板といった多様な細胞へ分化する。自己複製、増殖能力がある
・成熟した赤血球・白血球・血小板は血管の中を流れているが、成熟する一歩手前(前駆細胞)までは骨髄の中で営まれており血液中に出てこない
血液の異常である病態はどのような病気で、どのように起きるのか
・血液細胞に遺伝子の変化が生じ、異常増殖するようになったもの。異常増殖したがん細胞は、正常な造血や内臓の機能に障害を与える
・血液腫瘍(悪性リンパ腫と白血病)はがんのおよそ3-4%。障害の罹患率は悪性リンパ腫が1%、白血病が0.5-0.7%
・血液腫瘍の5年生存率は、悪性リンパ腫で50%、多発性骨髄腫で25%、白血病で30%とがんの中でも難治な部類。主な造血器腫瘍は、急性骨髄性/リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病。悪性リンパ腫、多発性骨髄腫(成熟リンパ系腫瘍)
更に細かい白血病の説明
・慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の異常(BCR-ABLキメラ遺伝子が生じる疾患)
・造血細胞の段階でBCR-ABL遺伝子が生じ、無秩序な分化を起こす
・t(9;22); 9番目と22番目の染色体が融合したPh染色体→PCR-ABL融合遺伝子。ABLがキナーゼ活性を高め、血液細胞の増殖を亢進
・キナーゼ活性をブロックするのがイマチニブの役割
・無治療の場合には5~10年の経過で進展し、急性白血病のように未分化な細胞が異常増殖
・急性リンパ性白血病リンパ球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・悪性リンパ腫は、さらに分化したリンパ球に遺伝子異常がおきる
・急性骨髄性白血病は、骨髄球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・遺伝子異常は、増殖シグナルの活性化により増殖が亢進し、正常分化が阻害される
・t(8;21); 8番目と21番目の染色体がちぎれてつながる=転座、他にはt(15;17)など
・遠心分離した時に、赤血球が減って増えた白血球の白色が肉眼でも分かるくらい
・芽球(blast = 白血病細胞)は、形態的には造血細胞の幼弱な状態に似ているが遺伝子異常を起こしており正常な機能を担えない
標準療法と臨床治験
・標準治療=ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療。科学的根拠に基づいた観点で、現在理由できる最良の治療(evidence-based)
・エビデンスとは、この薬や治療法、医療行為についてよいといえる証拠。症例報告・大家の意見<分析的研究<ランダム化試験の順で科学的信頼性が高い
・ランダム化試験とは、患者を無索引に割りつけて治療方法を分けて効果を比較
・高いレベルでのエビデンスを得るために臨床試験を行う。その中で治験とは、医薬品の製造・輸入承認を申請するための資料を得ることを目的とした臨床試験
質問:何が原因で血液がんになるのか、何かやってはいけないことをしたのか?
・遺伝子に傷がつくことは日常生活にあるが、通常はそうした異常細胞は体内で処理されるが、その網の目をどうにかくぐり抜けてしまった細胞が増殖する
質問:放射線治療を受けた患者は、福島原発事故の影響でリスクが倍増するのではないか?
・リスクは受けた線量に応じて発症するが、線量の少ない・多いと、がんの程度は相関せず、高い線量だと確率が高まるので被曝をしないほうがよい
■血液がんの治療について(慶應義塾大学病院 岡本真一郎先生)
造血器腫瘍の治療法
1.化学療法(Chemo)
・最初の頃は、インディオの毒矢の成分から作られた。例えば、オンコビンという薬はマダガスカルのニチニチソウという花から作られた
・主な抗癌剤は、DNA/RNAの損傷や合成阻害を起こす薬剤か、微小管の機能を抑制する薬剤
・細胞周期(サーキット)の途中で、異常な細胞は各々のフェーズにチェックポイントがあり異常があれば細胞をもとに戻すメカニズムがある
・白血病細胞では細胞周期チェックポイントの壁が低く正常に機能しない(分裂期崩壊 Mitotic Catastrophe)、そこに働きかけるのが化学療法
2.造血幹細胞移植(MTA)
・造血幹細胞の悪いところだけを切り取れないので、細胞をまるごと取り除いてしまい、そのあとで正常な造血幹細胞を移植する
・前処置: 腫瘍細胞の根絶、֭�常造血の破壊、免疫系の破壊
・造血幹細胞の移植: 恒久的造血の回復(2-3週)、恒久的免疫系の回復(3-4月)
・同種免疫反応の制御: 移植片対宿主病(GVHD)、免疫系再構築遅延に伴うウイルス感染症→治療の進化で早期死亡は1割程度にまで減少
・造血幹細胞だけを抽出することは難しいので、骨髄血液を吸引して移植。あるいは、最近では臍帯血にも造血幹細胞が多く含まれているので凍結保存をしておいて使う。また、白血球を増やすG-CSFをドナーに投与して、造血幹細胞が増えるところだけを取り出す末梢血幹細胞を採取
・世界の骨髄バンクでの比較では、骨髄輸出・輸入をしなくても造血幹細胞の「自給自足」が成立
・無菌室のQOLも向上し、現在ではほぼ日常と同じような格好で生活可能
・移植片対白血病効果(GVL): GVHDを起こした人は、その後の再発が少ない。おそら⁏、免疫反応を起こすT細胞が白血病細胞も攻撃して腫瘍を根絶するのではないか。
・骨髄破壊的移植では元気な比較的若い患者しか対象に出来なかったが、骨髄非破壊的移植(ミニ移植、RIST)で高齢者やほかの病気のある人も対象に。ただ、移植後後期合併症(慢性GVHDや二次発性がんなど)の問題は以前抱えている
・慶應病院では、AMLへの移植で、寛解期では生存率85.5%、寛解期でないと生存率は46.7%。移植関連死亡は1年半後までで10.2%
・個々の患者の遺伝子検査による移植の予後予想法の確立が今後の課題
・“No guts no glory, and we made it”、血液内科のチーム医療としての移植
3.分子標的療法(SCT)
・突然変異によって生まれたがん細胞自身やその生存・増殖環境を選択的に対処する(ゴルゴ13w)
・受容体型チロシンキナーゼの異常とは、特定のタンパク質の結合がないのにチロシンキナーゼが常に活性化されている状態であり、その活性を阻害する
・イマチニブは、BCR-ABL蛋白のリン伝達プロセスを阻害。このプロセス以降に細胞死を抑制したり細胞増殖を亢進する他のタンパク質の伝達を全て止めることが可能。このような「アキレスのかかと」を他の造血器腫瘍ではみつかっていない
・ただし、イマニチブは飲み続けないといけないので費用的な問題は存在
今後の方向性
・造血器腫瘍のがん細胞における幹細胞を叩く(蜂の巣における女王蜂)
・Nicheと呼ばれるくぼみに血液がん幹細胞が隠れていると推測されており、取り出して攻撃できないか研究
・現状でそれを実現できるのは現状では造血幹細胞移植のみ
・治療の目的は、根治だけてなく、QOLを保った製造期間を少しでも長く維持する
・EBMだけでなく、Narrative-based Medicine(NBM)。臓器障害・予後因子と異なる患者側の因子(人生観・家族・仕事など)を考慮
“Medicne is an art based on science” 医者と患者が協力して組み上げるart
質問:移植して3年、しびれが厳しいがどうにかならないのか?
しびれは問題として残っている。なかなか対応が難しいがしびれが始まった段階から色々な薬を使う
質問:CMLの22歳女性(12歳で発症)、今後妊娠は可能か?
化学療法・グリベックを含めて治療をしているときには妊娠は薦められない。がいろいろな対策が進んでいる。詳細は分科会で。
質問:多発性骨髄腫でなぜ同種移植の条件が厳しいのか?
比較的高齢者が多いのでなるべくいい生存期間を伸ばそうとすると移植の位置づけはあとになる。若い方の場合は積極的に考えても良い
■CML分科会: 慢性期の治療2011
治療段階の確認
・血液学的寛解(HR): 血球数が正常値に
・細胞遺伝学的寛解(CgR): BCR-ABL遺伝子量(通常ABL遺伝子のうち)が1/100以下。Ph染色体が見えなくなる
・分子生物学的寛解(MMR): BCR-ABL遺伝子量が1/1000以下。コピー数が検出不能な段階まで行くと完全寛解(CMR)。同じレベルの中でコピー数が増えたり減ったりは危なくない。それより前のレベルに戻ると効いていない判斷
第二世代の薬(ダサチニブ、ニロチニブ)
・8年のうちで37%が効果不十分でやめている(CCyR達成できないのが18%、CCyR達成後の効果喪失が8%)ので第二世代を検討
・ただし、第二世代でも20%位は中止になっているので留意が必要
・第二世代の薬は、グリベックとオーバーラップする副作用の程度は軽い。しかし、別の副作用が出る。ニロチニブは高血糖や黄疸、ダサチニブは胸水
・変異ABLの種類によって第二世代の薬を選択。T3151蛋白異常の場合は薬の効きが悪いので、造血幹細胞移植を検討
・第二世代の薬の効果としては、MMRへの移行率は高く、急性転化も少ない。しかし、2年間の治験では生存率では差がない。また、グリベックのジェネリック薬よりもはるかに高い
イマチニブ中止の分析研究(フランス)
・半数近くがMMRを維持。長く飲んでいた患者のほうが効果がよい
・再発後もイマチニブ治療再開で前例が良好な効果(MMR)に戻る
・イマチニブで再治療しないでも再び良好な結果(MMR)に戻る例もある
・増殖細胞は抑えられたが、CMLの造血幹細胞は残存しているのではないか
・Total cell kill (TCK)ではなく、functional cureを治癒の定義にすべきか
質問:第三世代のボスニチブの治験は受けられるか?
治験なので血球数が条件になるので確認が必要。なお、血球の減少は第二世代でも第三世代でも共通の課題であり、CML治療前に正常な造血幹細胞が攻撃を受けているのではないか。だましだましやらないといけない
質問:抗うつ剤を飲む必要があるのだが副作用は大丈夫か?
副作用は検討されているので主治医に確認して欲しい。暗くなる必要はないので薬を飲み続けて欲しい
質問:イマチニブ中止についてどこで受けられるか?
慶應病院だけでなく他の病院でも始まっている。チロシンキナーゼ阻害剤を止められるかの研究をやっているので、二年間CMR維持で止める研究に入ることは可能。6ヶ月で再発する、しないが分かるのは一つでもCML造血幹細胞があるかないかが反映される、数学的にmake senseする問題。
質問:マルクの痛み緩和、頻度減少は可能か?
下手な先生は麻酔を打ってからすぐやってしまうのがいけないのではないか。浸潤麻酔なので少し時間が必要。末梢血で代替できるものもあるが、詳細なデータはマルクが必要なので、慶應病院でも半年に一回はやっている
質問) 角膜の出血の副作用はなんとかならないか
グリベックではなかなか変わらないので、ずっと起こる方はニロチニブの方がよいかもしれない
■血液がんのチーム医療 Multidisciplinary Care
・チームA: 患者、血液内科医、看護師: 医療の提供、エビデンスの確立
・チームB: 患者、患者会、ソーシャルワーカー、ボランティア: 主観的な判斷の尊重
・チームC: 基礎研究者、製薬企業、骨髄バンクなど: 活動のサポート
・患者がチームの中心
■<チーム血液>の緩和ケアと在宅医療(慶応大学病院 緩和ケアチーム 安達先生)
・緩和医療は根本治療ができない終末期だけでなく、がん診断をうけた早期から緩和医療に関わる
・住み慣れた家庭や地域での在宅医療支援の充実
・精神心理的苦痛等を含めた全人敵な苦痛に対する緩和ケア
・ご家族への緩和ケア
在宅医療支援者(医者、看護師)へのアンケート結果
・血液がん(多発性骨髄腫、MDS、等)の在宅支援についてについて質問
・輸血、希望の変化、連携の不足、治療方針、抗癌剤、経験がないなどの問題点はあるが、血液の在宅医療推進については前向き
・退院時カンファレンス、外来通院経過、緊急時の受け入れを含めた病院専門医とのこまめでスムーズな情報共有と連携が必要
・地域、スタッフ、患者・家族、メンバに顔の見える緩和ケアを目指して
■病とともに地域で生きる(あおぞら診療所 川越正平先生)
在宅療養支援の中核をなす考え方=地域を病棟と捉える
・自宅が病院なら病室、地域の道路が廊下。在宅医や訪問看護師が巡回して、病棟に近い機能を提供(検査部、手術室以外)し、24時間365日の安心を提供する
・在宅医や訪問看護師が緊急訪問を保証することが、ライフラインと同様に重要
血液疾患患者の在宅医療導入例
・多発性骨髄腫で身体機能に障害→メルファランやサリドマイドによる治療を継続
・MDSに対して継続的輸血を必要としているが高齢、認知症、身体機能障害がある
・リンパ腫や白血病に対する負担の大きな治療を断念し看取り目的
専門医と在宅医への併診例
・化学療法後の食欲不振、嘔気に対する点滴
・白血球減少時のG-CSF連日投与
・腫瘍の皮膚浸潤に対する頻回の創処置 など
→まず地域の在宅医療機関や人材を把握する必要
治癒が勝利で死亡が敗北だけではない。病と共存する生き方も目標となり得る。生きている間の苦痛が少なく生活の質が高い状態が望ましい
「主治医」の見つけ方
・外来だけでなく往診にも取り組んでいる
・自分と相性がよさそうだという直感がきっかけ
・患者としての自分だけでなく、家族の健康さんに乗ってくれる
・急病の折に時間外でも相談に乗ってくれる
・自分の専門外のことは、きちんと他の専門医を紹介してくれる
■緩和ケアと在宅医療(青葉区メディカルセンター 藤田さん)
訪問看護師・ケアマネージャーであると同時に患者である
2007年2月 CML急性期で発症・入院
同年9月 骨髄移植、3ヶ月後に退院。筋肉量が落ちており、関節の痛みもあって介護保険検討
2008年2月 介護保険申請→要介助2/3と診断されるも申請受理されず
同年3-8月に訪問リハビリ(3割負担で医療保険を利用)→意思の指示が必要、訪問介護ステーションでサービス提供、週2回利用で月2.2-2.5万円
2008年10月 仕事復帰
■血液がんと在宅看護(あこもけあ在宅支援センター 所長・看護学修士 松木満里子)
・箱根の麓に在宅支援センターを設立
・医療保険の枠内だけではできない、保険外サービスで買い物やドライブも提供(外出支援)して、医療依存度が高い在宅患者に全面的なサポートを展開
・退院後の通院に介護タクシーを活用できる
諸問題
・介護保険を使えないと福祉用具は全額実費。但し保険適用外でもレンタル値段は安くなっているので家族への負担も小さくなる。業者に相談してみるといい
・感染症対策は実は病院にも菌はたくさんいる
・痛みや急な状態変化に対応してくれるサービスは広がっている
以上
2011年6月19日
2011/6/19 つばさフォーラム 「特集・白血病」備忘録(主に急性白血病について)
6月19日の日曜日に開催されたつばさフォーラム「特集・白血病」に参加してきました。
直接CMLの話はなかったですが色々と勉強になりました。部分的ですが、メモを残しておきます。
■アジェンダ
I 血液と白血病について知ろう
造血の仕組みと白血病の病態
東京慈恵会医科大学附属第三病院 薄井 紀子 先生
II 白血病の治療とその後について学び、考えよう
1)様々な治療と成績、治療選択
杏林大学病院 高山 信之 先生
2)小児白血病治療における晩期障害軽減に向けて
a)小児急性リンパ性白血病の新統一プロトコールにおける予防的頭蓋照射の全廃について
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)急性リンパ性白血病委員会委員長/中通総合病院 渡辺 新 先生
b)小児白血病治療における認知発達への影響とその対処法
国立成育医療センター 臨床研究センター 船木 聡美 先生
III 闘病生活での様々な支援
1)移植中、通院化学療法中の感染症対策ほか、闘病へのアドバイス
移植看護ネットワーク/国立がん研究センター中央病院 荒木 光子 さん
2)より良い生活とより良い治療のために 早期からの緩和ケア
辛い治療をじょうずに乗り越えるために、緩和ケアの基本的考え方をうかがいます。
国立がん研究センター中央病院 緩和医療科・精神腫瘍科 的場 元弘 先生
より良い闘病のために・・・何でも訊こう 講師全員
会場全体とのQ&A
■開催主体
共催:NPO法人日本臨床研究支援ユニット(JCRSU)、JCRSU・がん電話情報センター、
共催:NPO法人白血病研究基金を育てる会
後援:JALSG(日本成人白血病治療共同研究会グループ)
企画・総合司会:NPO法人血液情報広場・つばさ 橋本明子
(ここから個人的な備忘録)
■造血の仕組み
・血液は血漿と血球からできている
・血球は赤血球と白血球と血小板の三種類
・血液細胞すなわち血球は骨髄で造られる、赤血球なら一時間に百億個、白血球なら一から十億個も生成されるプロセス
・白血球の一種である好中球は12-14日間で排出
■白血病とは
・幼若な芽球が血液中に増える、過形成され無秩序な白血球の増加
・原因は細胞の分化、増殖に関わる遺伝子の量的変化、質的変化
・急性acuteと慢性chronic、骨髄性とリンパ性の組合わせで四パターン
・年間発症は十万人に6-7人 うちAML50 ALL25 CML20 CLL5。ALLは子供に多い、CLLは欧米で多い
■白血病治療の基本戦略
・白血病細胞を除去し、正常骨髄機能を回復
・完全寛解を目指した寛解導入療法、寛解を維持するための寛解後療法の大きく二段階
・AMLは完全寛解八割前後、生存率四割前後、ただし予後の結果は染色体異常の種類によって大きく異なる
・例えばAPLは中国で開発された治療法により寛解率九割、生存率八割になった
■AML(急性骨髄性白血病)の治療
・化学療法は最初はよく効くが、再発すると抗がん剤が効かない白血病細胞が増えて効かなくなってしまう
・そこで、造血幹細胞移植という選択があり再発後の生存率は高いが、合併症で亡くなる割合が二割程度存在する
・完全寛解に至る確率は高いが、その後に無治療では二年以内にほぼ全例再発するため地固め療法が必要。白血球が増え始めたころから実施。弱い寛解後治療は維持療法と呼ばれる
・造血幹細胞移植とは、大量化学療法と全身放射線照射により腫瘍細胞と正常細胞と一緒に根絶、その後に造血幹細胞の輸注を通常は点滴で行い2-4週間でドナー由来の造血細胞が働きはじめることを目指す
・HLA型の違いが拒絶反応を引き起こすため一致を確認するが、一般には万分の一程度の低確率で一致していても、マイナー組織適合抗原のミスマッチによりドナーのT細胞がレシピエントの臓器に攻撃を行なう場合がありGVHDと呼ばれる(移植片対宿主病)
・ただし、GVHDが出現した症例は再発の可能性が低くなりGVL効果、移植片対白血病効果で残存白血病細胞の駆逐に役立っていると考えられている
・他の移植後合併症は、臓器障害、感染症、晩期障害
・最も望ましい移植タイミングは寛解期であり、非寛解期の移植成績は二割程度で頭打ち
・第一寛解期に移植をすると化学療法だけで治っていたかもしれないのにリスクを負わせる可能性があり、第二寛解期の移植が望ましいのではないか。将来の再発リスクを判定するやり方について現在も議論がなされている
・論文では移植症例は移植日まで生存していた生存症例カウントされるので割り引いて考える必要
・移植を除いた現実的な化学療法の無病生存率は30-40%、二年程度で半分強が再発、再発後に完全寛解に至ったのは半数
・移植の五年生存率は第一寛解期移植は6割前後、第二寛解期は5割前後、非寛解期は2割前後。非血縁だと5パーセンテージポイント下がる
・遺伝子検査による再発リスク判断からは、予後良好群は化学療法を、予後不良群は第一寛解期に移植を
■ALL(急性リンパ性白血病)の治療方針
・ALLはイマチニブで寛解後に速やかに移植を実施するのが基本方針(Ph遺伝子陽性型)
・化学療法のみの場合、無イベント生存率は四割前後
・思春期(16~20歳)のALLは成人プロトコールより小児プロトコールより圧倒的に生存率がよい(2/3対1/3)
・スタンダードリスク群とハイリスク群に分けると、ハイリスク群では移植と科学治療の差が有意ではない
・ただし、再発後の予後はAMLより悪く、早めの移植が日本での実績も鑑みると適切かもしれない
・ALLにも第二世代のチロキシナーゼ阻害薬の効果は期待されるが、今後の臨床研究が必要
■小児白血病治療の認知発達への影響
・ALLが多い。脳や脊髄などの中枢神経に浸潤しやすいため、それを薬を使って防いでいく(髓注やメソトレキセート大量療法)
・薬のみならず従来は放射線を使っていたが脳に対する副作用があり、新しいプロトコールでは全廃する
・化学療法だけのプロトコールでは、欧米での研究だと、認知的能力の発達するときの治療のため、認知機能変化は出ているが統一見解は生まれていないが、IQ低下が軽度あり読解力や算数の学力の軽度低下はある。しかし成長速度は落ちるが伸びは継続するので、継続的な刺激と教育が必要
・アメリカの実証研究で、一年に四回評価と計画を行なうことで、放置ケースと比べて介入することでIQを回復させられる(90→100)
・一方で、治療によって長期記憶、コミュニケーション能力、言語能力は低下しない!
・小児白血病の子供を持つ親御さんのためのegonokiクラブ
■移植中、通院化学療法中の感染対策
・昔の写真でみるような、ビニール越しの無菌室のような過度な無菌治療環境はもはや存在しない
・感染対策としての無菌化をやめてより効率化してきたため、感染予防ケアが重要に
・口腔・皮膚・陰部・肛門のケアを日常習慣として普段から行なう
・口腔内細菌数を増やさない→うがい、ブラッシング、食事形態、口内炎による痛みには鎮痛剤
・皮膚→洗浄し清潔に保つ、軟膏等で湿潤環境を保つ、鎮痛剤を使いつつ歩くための工夫
・感染予防ポイント→人ごみにはいかない、埃を吸い込まないようにマスクをする、土いじりはしない、工事現場に近寄らない、こまめに手を洗う、フットケアを行なう、ペットボトルは開けて数時間以内に飲み切る、等々
■緩和ケア palliative care
・患者や家族がつらくないように、がんやがん治療と付き合っていくための方法論
・がんの経過に従って、病変自体の治療から痛みの治療と緩和ケアに移行していく
・緩和ケア=がんの治療を諦めることではない
・肺ガンの論文で、緩和ケアを受けた群の方が生存期間が長かったというスタディ結果もあり
・日本人が終末期に大切にしたいこと→苦痛がない、望んだ場所で過ごす、希望や楽しみがある、医師や看護士を信頼できる、家族の負担にならない、患者ではなく人間性を尊重される
→患者としてではなく、自分として死にたい
・痛い、食欲がない、眠れないので生活ができなくなる様な我慢をしてもしょうがない
・痛みを感じる神経線維には伝わるのが早い遅いの二種類あり、a-delta繊維とc繊維があり、がんの痛みが通じるのは後者でありモルヒネ等はそちら効く
・モルヒネ等は誤解されているが、麻薬中毒にならない、命は縮まない、だんだん効かなくならない、眠気は出るが意識はある、最後の手段ではなく他にもたくさんある、お花畑にはいけない(笑)
・痛みの伝え方→どこが、いつから、どんなふうに(鈍い、刺すような、痺れる、いつも、時々、じっとしている、動くとき)、どれくらい、痛みでできないこと、使っている薬の名前
・苦痛のない生活を維持することも、治療と同じように大事
・苦痛の緩和の治療はがんに対する敗北宣言ではない
・患者自身にしか、つらさがあることを伝えることはできない
■Q&A
・移植は何歳まで可能か?→七十歳あるいは八十歳を超えて挑戦している病院もあるが一般的にいえば効果があるかは何とも言えない、治療抵抗性・難治性でも救援療法はあるが輸血中心に緩和目的の方向転換も重要。在宅輸血治療を定期的に行なう場合、下世話な話だが、保険査定の対象となるので引き受けてもらえない可能性もある
・発酵食品を食べてはいけないのか?→発酵食品を禁止している施設もあるがヨーグルト等は、発熱していて余程白血球が少ない場合でなければ、食べたいものを食べて免疫力えを高めるほうが大事ではないか
・フィラデルフィア遺伝子陽性のAMLで化学療法で寛解後再発したがグリベックを飲んで再寛解した。今後も化学療法で進めるのがベストなのか?→医学的な結論は出ていない問題。五十六歳という年齢は移植医によっては判断が別れる微妙なところだが、全身状態がよくHLA一致ドナーがいることが大前提だが、移植も選択肢にいれたほうがよいかもしれない
・子供への移植と教育について→移植をしたかしないかでその後の生き方はやはり変わる。フル移植をした方は何らかのサポートが必要。成年がんが出やすいかもしれない。子供達には自分の健康は一生自分で見ていくよう何回も強調している。さらに、教育は次の道を開くので、何としてもサポートをしていきたい。どこで引っかかるのか分かってきたので、それをすくい上げるシステムが必要
・司会のまとめ:血液がんの全般を特定疾患にすることは、医療費増大の状況下で難しいが、交通費無料や患者と家族が年に二回ヨーロッパ旅行に行けるなど、なんかしら社会からのサポートがあるとよい
直接CMLの話はなかったですが色々と勉強になりました。部分的ですが、メモを残しておきます。
■アジェンダ
I 血液と白血病について知ろう
造血の仕組みと白血病の病態
東京慈恵会医科大学附属第三病院 薄井 紀子 先生
II 白血病の治療とその後について学び、考えよう
1)様々な治療と成績、治療選択
杏林大学病院 高山 信之 先生
2)小児白血病治療における晩期障害軽減に向けて
a)小児急性リンパ性白血病の新統一プロトコールにおける予防的頭蓋照射の全廃について
日本小児白血病リンパ腫研究グループ(JPLSG)急性リンパ性白血病委員会委員長/中通総合病院 渡辺 新 先生
b)小児白血病治療における認知発達への影響とその対処法
国立成育医療センター 臨床研究センター 船木 聡美 先生
III 闘病生活での様々な支援
1)移植中、通院化学療法中の感染症対策ほか、闘病へのアドバイス
移植看護ネットワーク/国立がん研究センター中央病院 荒木 光子 さん
2)より良い生活とより良い治療のために 早期からの緩和ケア
辛い治療をじょうずに乗り越えるために、緩和ケアの基本的考え方をうかがいます。
国立がん研究センター中央病院 緩和医療科・精神腫瘍科 的場 元弘 先生
より良い闘病のために・・・何でも訊こう 講師全員
会場全体とのQ&A
■開催主体
共催:NPO法人日本臨床研究支援ユニット(JCRSU)、JCRSU・がん電話情報センター、
共催:NPO法人白血病研究基金を育てる会
後援:JALSG(日本成人白血病治療共同研究会グループ)
企画・総合司会:NPO法人血液情報広場・つばさ 橋本明子
(ここから個人的な備忘録)
■造血の仕組み
・血液は血漿と血球からできている
・血球は赤血球と白血球と血小板の三種類
・血液細胞すなわち血球は骨髄で造られる、赤血球なら一時間に百億個、白血球なら一から十億個も生成されるプロセス
・白血球の一種である好中球は12-14日間で排出
■白血病とは
・幼若な芽球が血液中に増える、過形成され無秩序な白血球の増加
・原因は細胞の分化、増殖に関わる遺伝子の量的変化、質的変化
・急性acuteと慢性chronic、骨髄性とリンパ性の組合わせで四パターン
・年間発症は十万人に6-7人 うちAML50 ALL25 CML20 CLL5。ALLは子供に多い、CLLは欧米で多い
■白血病治療の基本戦略
・白血病細胞を除去し、正常骨髄機能を回復
・完全寛解を目指した寛解導入療法、寛解を維持するための寛解後療法の大きく二段階
・AMLは完全寛解八割前後、生存率四割前後、ただし予後の結果は染色体異常の種類によって大きく異なる
・例えばAPLは中国で開発された治療法により寛解率九割、生存率八割になった
■AML(急性骨髄性白血病)の治療
・化学療法は最初はよく効くが、再発すると抗がん剤が効かない白血病細胞が増えて効かなくなってしまう
・そこで、造血幹細胞移植という選択があり再発後の生存率は高いが、合併症で亡くなる割合が二割程度存在する
・完全寛解に至る確率は高いが、その後に無治療では二年以内にほぼ全例再発するため地固め療法が必要。白血球が増え始めたころから実施。弱い寛解後治療は維持療法と呼ばれる
・造血幹細胞移植とは、大量化学療法と全身放射線照射により腫瘍細胞と正常細胞と一緒に根絶、その後に造血幹細胞の輸注を通常は点滴で行い2-4週間でドナー由来の造血細胞が働きはじめることを目指す
・HLA型の違いが拒絶反応を引き起こすため一致を確認するが、一般には万分の一程度の低確率で一致していても、マイナー組織適合抗原のミスマッチによりドナーのT細胞がレシピエントの臓器に攻撃を行なう場合がありGVHDと呼ばれる(移植片対宿主病)
・ただし、GVHDが出現した症例は再発の可能性が低くなりGVL効果、移植片対白血病効果で残存白血病細胞の駆逐に役立っていると考えられている
・他の移植後合併症は、臓器障害、感染症、晩期障害
・最も望ましい移植タイミングは寛解期であり、非寛解期の移植成績は二割程度で頭打ち
・第一寛解期に移植をすると化学療法だけで治っていたかもしれないのにリスクを負わせる可能性があり、第二寛解期の移植が望ましいのではないか。将来の再発リスクを判定するやり方について現在も議論がなされている
・論文では移植症例は移植日まで生存していた生存症例カウントされるので割り引いて考える必要
・移植を除いた現実的な化学療法の無病生存率は30-40%、二年程度で半分強が再発、再発後に完全寛解に至ったのは半数
・移植の五年生存率は第一寛解期移植は6割前後、第二寛解期は5割前後、非寛解期は2割前後。非血縁だと5パーセンテージポイント下がる
・遺伝子検査による再発リスク判断からは、予後良好群は化学療法を、予後不良群は第一寛解期に移植を
■ALL(急性リンパ性白血病)の治療方針
・ALLはイマチニブで寛解後に速やかに移植を実施するのが基本方針(Ph遺伝子陽性型)
・化学療法のみの場合、無イベント生存率は四割前後
・思春期(16~20歳)のALLは成人プロトコールより小児プロトコールより圧倒的に生存率がよい(2/3対1/3)
・スタンダードリスク群とハイリスク群に分けると、ハイリスク群では移植と科学治療の差が有意ではない
・ただし、再発後の予後はAMLより悪く、早めの移植が日本での実績も鑑みると適切かもしれない
・ALLにも第二世代のチロキシナーゼ阻害薬の効果は期待されるが、今後の臨床研究が必要
■小児白血病治療の認知発達への影響
・ALLが多い。脳や脊髄などの中枢神経に浸潤しやすいため、それを薬を使って防いでいく(髓注やメソトレキセート大量療法)
・薬のみならず従来は放射線を使っていたが脳に対する副作用があり、新しいプロトコールでは全廃する
・化学療法だけのプロトコールでは、欧米での研究だと、認知的能力の発達するときの治療のため、認知機能変化は出ているが統一見解は生まれていないが、IQ低下が軽度あり読解力や算数の学力の軽度低下はある。しかし成長速度は落ちるが伸びは継続するので、継続的な刺激と教育が必要
・アメリカの実証研究で、一年に四回評価と計画を行なうことで、放置ケースと比べて介入することでIQを回復させられる(90→100)
・一方で、治療によって長期記憶、コミュニケーション能力、言語能力は低下しない!
・小児白血病の子供を持つ親御さんのためのegonokiクラブ
■移植中、通院化学療法中の感染対策
・昔の写真でみるような、ビニール越しの無菌室のような過度な無菌治療環境はもはや存在しない
・感染対策としての無菌化をやめてより効率化してきたため、感染予防ケアが重要に
・口腔・皮膚・陰部・肛門のケアを日常習慣として普段から行なう
・口腔内細菌数を増やさない→うがい、ブラッシング、食事形態、口内炎による痛みには鎮痛剤
・皮膚→洗浄し清潔に保つ、軟膏等で湿潤環境を保つ、鎮痛剤を使いつつ歩くための工夫
・感染予防ポイント→人ごみにはいかない、埃を吸い込まないようにマスクをする、土いじりはしない、工事現場に近寄らない、こまめに手を洗う、フットケアを行なう、ペットボトルは開けて数時間以内に飲み切る、等々
■緩和ケア palliative care
・患者や家族がつらくないように、がんやがん治療と付き合っていくための方法論
・がんの経過に従って、病変自体の治療から痛みの治療と緩和ケアに移行していく
・緩和ケア=がんの治療を諦めることではない
・肺ガンの論文で、緩和ケアを受けた群の方が生存期間が長かったというスタディ結果もあり
・日本人が終末期に大切にしたいこと→苦痛がない、望んだ場所で過ごす、希望や楽しみがある、医師や看護士を信頼できる、家族の負担にならない、患者ではなく人間性を尊重される
→患者としてではなく、自分として死にたい
・痛い、食欲がない、眠れないので生活ができなくなる様な我慢をしてもしょうがない
・痛みを感じる神経線維には伝わるのが早い遅いの二種類あり、a-delta繊維とc繊維があり、がんの痛みが通じるのは後者でありモルヒネ等はそちら効く
・モルヒネ等は誤解されているが、麻薬中毒にならない、命は縮まない、だんだん効かなくならない、眠気は出るが意識はある、最後の手段ではなく他にもたくさんある、お花畑にはいけない(笑)
・痛みの伝え方→どこが、いつから、どんなふうに(鈍い、刺すような、痺れる、いつも、時々、じっとしている、動くとき)、どれくらい、痛みでできないこと、使っている薬の名前
・苦痛のない生活を維持することも、治療と同じように大事
・苦痛の緩和の治療はがんに対する敗北宣言ではない
・患者自身にしか、つらさがあることを伝えることはできない
■Q&A
・移植は何歳まで可能か?→七十歳あるいは八十歳を超えて挑戦している病院もあるが一般的にいえば効果があるかは何とも言えない、治療抵抗性・難治性でも救援療法はあるが輸血中心に緩和目的の方向転換も重要。在宅輸血治療を定期的に行なう場合、下世話な話だが、保険査定の対象となるので引き受けてもらえない可能性もある
・発酵食品を食べてはいけないのか?→発酵食品を禁止している施設もあるがヨーグルト等は、発熱していて余程白血球が少ない場合でなければ、食べたいものを食べて免疫力えを高めるほうが大事ではないか
・フィラデルフィア遺伝子陽性のAMLで化学療法で寛解後再発したがグリベックを飲んで再寛解した。今後も化学療法で進めるのがベストなのか?→医学的な結論は出ていない問題。五十六歳という年齢は移植医によっては判断が別れる微妙なところだが、全身状態がよくHLA一致ドナーがいることが大前提だが、移植も選択肢にいれたほうがよいかもしれない
・子供への移植と教育について→移植をしたかしないかでその後の生き方はやはり変わる。フル移植をした方は何らかのサポートが必要。成年がんが出やすいかもしれない。子供達には自分の健康は一生自分で見ていくよう何回も強調している。さらに、教育は次の道を開くので、何としてもサポートをしていきたい。どこで引っかかるのか分かってきたので、それをすくい上げるシステムが必要
・司会のまとめ:血液がんの全般を特定疾患にすることは、医療費増大の状況下で難しいが、交通費無料や患者と家族が年に二回ヨーロッパ旅行に行けるなど、なんかしら社会からのサポートがあるとよい
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