2011年7月30日

7/30 つばさ定例フォーラム「血液がん 新たな治療と新たな課題」備忘録

結構今更ながら理解することもあってとても勉強になりました。白血病の種類は、造血幹細胞から分化するどこの細胞が遺伝子異常を起こしているかで異なり、CMLは造血幹細胞という一番根っこの異常(そしてAML、CLL等は違う分化後)という基礎的なところすらわかってなかったことが判明です。苦笑

あとで時間があるときに構造化は直すとして、とりあえずメモをそのままアップしておきます。プレゼンターごとに■マークで区切っています。岡本先生のが論点も明確で面白かった。黒川先生はわかりやすいですが、概論の担当をされていたので、そこまで切り込んでくる感じはなかったです。

■血液と血液がんの病態(東大医学部附属病院 血液・腫瘍内科 黒川峰夫先生)
正常の血液はどのようなものなのか
・血液の成分は血漿が55%、血球が45%。血漿は有機物(蛋白7%など)、無機塩類、水。血球は血小板(15万~35万/ul)、白血球(4,000-10,000/ul)、赤血球(男性は450-550万/ul、女性は400-500万/ul)
・赤血球は寿命が120日くらい。一日あたり2千億個が生まれて同じだけ廃棄。赤血球は全身に酸素を運ぶ
・白血球は病原体から体を守る。リンパ球、好酸球、好塩基球、単球などがあり守備範囲が異なる
・血小板は出血を止める
・骨髄のなかにある造血幹細胞という起源となる細胞が、赤血球・白血球・血小板といった多様な細胞へ分化する。自己複製、増殖能力がある
・成熟した赤血球・白血球・血小板は血管の中を流れているが、成熟する一歩手前(前駆細胞)までは骨髄の中で営まれており血液中に出てこない

血液の異常である病態はどのような病気で、どのように起きるのか
・血液細胞に遺伝子の変化が生じ、異常増殖するようになったもの。異常増殖したがん細胞は、正常な造血や内臓の機能に障害を与える
・血液腫瘍(悪性リンパ腫と白血病)はがんのおよそ3-4%。障害の罹患率は悪性リンパ腫が1%、白血病が0.5-0.7%
・血液腫瘍の5年生存率は、悪性リンパ腫で50%、多発性骨髄腫で25%、白血病で30%とがんの中でも難治な部類。主な造血器腫瘍は、急性骨髄性/リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病。悪性リンパ腫、多発性骨髄腫(成熟リンパ系腫瘍)

更に細かい白血病の説明
・慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞の異常(BCR-ABLキメラ遺伝子が生じる疾患)
・造血細胞の段階でBCR-ABL遺伝子が生じ、無秩序な分化を起こす
・t(9;22); 9番目と22番目の染色体が融合したPh染色体→PCR-ABL融合遺伝子。ABLがキナーゼ活性を高め、血液細胞の増殖を亢進
・キナーゼ活性をブロックするのがイマチニブの役割
・無治療の場合には5~10年の経過で進展し、急性白血病のように未分化な細胞が異常増殖

・急性リンパ性白血病リンパ球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・悪性リンパ腫は、さらに分化したリンパ球に遺伝子異常がおきる

・急性骨髄性白血病は、骨髄球系共通前駆細胞に遺伝子異常が起きる
・遺伝子異常は、増殖シグナルの活性化により増殖が亢進し、正常分化が阻害される
・t(8;21); 8番目と21番目の染色体がちぎれてつながる=転座、他にはt(15;17)など
・遠心分離した時に、赤血球が減って増えた白血球の白色が肉眼でも分かるくらい
・芽球(blast = 白血病細胞)は、形態的には造血細胞の幼弱な状態に似ているが遺伝子異常を起こしており正常な機能を担えない

標準療法と臨床治験
・標準治療=ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療。科学的根拠に基づいた観点で、現在理由できる最良の治療(evidence-based)
・エビデンスとは、この薬や治療法、医療行為についてよいといえる証拠。症例報告・大家の意見<分析的研究<ランダム化試験の順で科学的信頼性が高い
・ランダム化試験とは、患者を無索引に割りつけて治療方法を分けて効果を比較
・高いレベルでのエビデンスを得るために臨床試験を行う。その中で治験とは、医薬品の製造・輸入承認を申請するための資料を得ることを目的とした臨床試験

質問:何が原因で血液がんになるのか、何かやってはいけないことをしたのか?
・遺伝子に傷がつくことは日常生活にあるが、通常はそうした異常細胞は体内で処理されるが、その網の目をどうにかくぐり抜けてしまった細胞が増殖する

質問:放射線治療を受けた患者は、福島原発事故の影響でリスクが倍増するのではないか?
・リスクは受けた線量に応じて発症するが、線量の少ない・多いと、がんの程度は相関せず、高い線量だと確率が高まるので被曝をしないほうがよい

■血液がんの治療について(慶應義塾大学病院 岡本真一郎先生)
造血器腫瘍の治療法
1.化学療法(Chemo)
・最初の頃は、インディオの毒矢の成分から作られた。例えば、オンコビンという薬はマダガスカルのニチニチソウという花から作られた
・主な抗癌剤は、DNA/RNAの損傷や合成阻害を起こす薬剤か、微小管の機能を抑制する薬剤
・細胞周期(サーキット)の途中で、異常な細胞は各々のフェーズにチェックポイントがあり異常があれば細胞をもとに戻すメカニズムがある
・白血病細胞では細胞周期チェックポイントの壁が低く正常に機能しない(分裂期崩壊 Mitotic Catastrophe)、そこに働きかけるのが化学療法

2.造血幹細胞移植(MTA)
・造血幹細胞の悪いところだけを切り取れないので、細胞をまるごと取り除いてしまい、そのあとで正常な造血幹細胞を移植する
・前処置: 腫瘍細胞の根絶、֭�常造血の破壊、免疫系の破壊
・造血幹細胞の移植: 恒久的造血の回復(2-3週)、恒久的免疫系の回復(3-4月)
・同種免疫反応の制御: 移植片対宿主病(GVHD)、免疫系再構築遅延に伴うウイルス感染症→治療の進化で早期死亡は1割程度にまで減少
・造血幹細胞だけを抽出することは難しいので、骨髄血液を吸引して移植。あるいは、最近では臍帯血にも造血幹細胞が多く含まれているので凍結保存をしておいて使う。また、白血球を増やすG-CSFをドナーに投与して、造血幹細胞が増えるところだけを取り出す末梢血幹細胞を採取
・世界の骨髄バンクでの比較では、骨髄輸出・輸入をしなくても造血幹細胞の「自給自足」が成立
・無菌室のQOLも向上し、現在ではほぼ日常と同じような格好で生活可能
・移植片対白血病効果(GVL): GVHDを起こした人は、その後の再発が少ない。おそら⁏、免疫反応を起こすT細胞が白血病細胞も攻撃して腫瘍を根絶するのではないか。
・骨髄破壊的移植では元気な比較的若い患者しか対象に出来なかったが、骨髄非破壊的移植(ミニ移植、RIST)で高齢者やほかの病気のある人も対象に。ただ、移植後後期合併症(慢性GVHDや二次発性がんなど)の問題は以前抱えている
・慶應病院では、AMLへの移植で、寛解期では生存率85.5%、寛解期でないと生存率は46.7%。移植関連死亡は1年半後までで10.2%
・個々の患者の遺伝子検査による移植の予後予想法の確立が今後の課題
・“No guts no glory, and we made it”、血液内科のチーム医療としての移植

3.分子標的療法(SCT)
・突然変異によって生まれたがん細胞自身やその生存・増殖環境を選択的に対処する(ゴルゴ13w)
・受容体型チロシンキナーゼの異常とは、特定のタンパク質の結合がないのにチロシンキナーゼが常に活性化されている状態であり、その活性を阻害する
・イマチニブは、BCR-ABL蛋白のリン伝達プロセスを阻害。このプロセス以降に細胞死を抑制したり細胞増殖を亢進する他のタンパク質の伝達を全て止めることが可能。このような「アキレスのかかと」を他の造血器腫瘍ではみつかっていない
・ただし、イマニチブは飲み続けないといけないので費用的な問題は存在

今後の方向性
・造血器腫瘍のがん細胞における幹細胞を叩く(蜂の巣における女王蜂)
・Nicheと呼ばれるくぼみに血液がん幹細胞が隠れていると推測されており、取り出して攻撃できないか研究
・現状でそれを実現できるのは現状では造血幹細胞移植のみ
・治療の目的は、根治だけてなく、QOLを保った製造期間を少しでも長く維持する
・EBMだけでなく、Narrative-based Medicine(NBM)。臓器障害・予後因子と異なる患者側の因子(人生観・家族・仕事など)を考慮
“Medicne is an art based on science” 医者と患者が協力して組み上げるart

質問:移植して3年、しびれが厳しいがどうにかならないのか?
しびれは問題として残っている。なかなか対応が難しいがしびれが始まった段階から色々な薬を使う

質問:CMLの22歳女性(12歳で発症)、今後妊娠は可能か?
化学療法・グリベックを含めて治療をしているときには妊娠は薦められない。がいろいろな対策が進んでいる。詳細は分科会で。

質問:多発性骨髄腫でなぜ同種移植の条件が厳しいのか?
比較的高齢者が多いのでなるべくいい生存期間を伸ばそうとすると移植の位置づけはあとになる。若い方の場合は積極的に考えても良い

■CML分科会: 慢性期の治療2011
治療段階の確認
・血液学的寛解(HR): 血球数が正常値に
・細胞遺伝学的寛解(CgR): BCR-ABL遺伝子量(通常ABL遺伝子のうち)が1/100以下。Ph染色体が見えなくなる
・分子生物学的寛解(MMR): BCR-ABL遺伝子量が1/1000以下。コピー数が検出不能な段階まで行くと完全寛解(CMR)。同じレベルの中でコピー数が増えたり減ったりは危なくない。それより前のレベルに戻ると効いていない判斷

第二世代の薬(ダサチニブ、ニロチニブ)
・8年のうちで37%が効果不十分でやめている(CCyR達成できないのが18%、CCyR達成後の効果喪失が8%)ので第二世代を検討
・ただし、第二世代でも20%位は中止になっているので留意が必要
・第二世代の薬は、グリベックとオーバーラップする副作用の程度は軽い。しかし、別の副作用が出る。ニロチニブは高血糖や黄疸、ダサチニブは胸水
・変異ABLの種類によって第二世代の薬を選択。T3151蛋白異常の場合は薬の効きが悪いので、造血幹細胞移植を検討
・第二世代の薬の効果としては、MMRへの移行率は高く、急性転化も少ない。しかし、2年間の治験では生存率では差がない。また、グリベックのジェネリック薬よりもはるかに高い

イマチニブ中止の分析研究(フランス)
・半数近くがMMRを維持。長く飲んでいた患者のほうが効果がよい
・再発後もイマチニブ治療再開で前例が良好な効果(MMR)に戻る
・イマチニブで再治療しないでも再び良好な結果(MMR)に戻る例もある
・増殖細胞は抑えられたが、CMLの造血幹細胞は残存しているのではないか
・Total cell kill (TCK)ではなく、functional cureを治癒の定義にすべきか

質問:第三世代のボスニチブの治験は受けられるか?
治験なので血球数が条件になるので確認が必要。なお、血球の減少は第二世代でも第三世代でも共通の課題であり、CML治療前に正常な造血幹細胞が攻撃を受けているのではないか。だましだましやらないといけない

質問:抗うつ剤を飲む必要があるのだが副作用は大丈夫か?
副作用は検討されているので主治医に確認して欲しい。暗くなる必要はないので薬を飲み続けて欲しい

質問:イマチニブ中止についてどこで受けられるか?
慶應病院だけでなく他の病院でも始まっている。チロシンキナーゼ阻害剤を止められるかの研究をやっているので、二年間CMR維持で止める研究に入ることは可能。6ヶ月で再発する、しないが分かるのは一つでもCML造血幹細胞があるかないかが反映される、数学的にmake senseする問題。

質問:マルクの痛み緩和、頻度減少は可能か?
下手な先生は麻酔を打ってからすぐやってしまうのがいけないのではないか。浸潤麻酔なので少し時間が必要。末梢血で代替できるものもあるが、詳細なデータはマルクが必要なので、慶應病院でも半年に一回はやっている

質問) 角膜の出血の副作用はなんとかならないか
グリベックではなかなか変わらないので、ずっと起こる方はニロチニブの方がよいかもしれない

■血液がんのチーム医療 Multidisciplinary Care
・チームA: 患者、血液内科医、看護師: 医療の提供、エビデンスの確立
・チームB: 患者、患者会、ソーシャルワーカー、ボランティア: 主観的な判斷の尊重
・チームC: 基礎研究者、製薬企業、骨髄バンクなど: 活動のサポート
・患者がチームの中心

■<チーム血液>の緩和ケアと在宅医療(慶応大学病院 緩和ケアチーム 安達先生)
・緩和医療は根本治療ができない終末期だけでなく、がん診断をうけた早期から緩和医療に関わる
・住み慣れた家庭や地域での在宅医療支援の充実
・精神心理的苦痛等を含めた全人敵な苦痛に対する緩和ケア
・ご家族への緩和ケア

在宅医療支援者(医者、看護師)へのアンケート結果
・血液がん(多発性骨髄腫、MDS、等)の在宅支援についてについて質問
・輸血、希望の変化、連携の不足、治療方針、抗癌剤、経験がないなどの問題点はあるが、血液の在宅医療推進については前向き
・退院時カンファレンス、外来通院経過、緊急時の受け入れを含めた病院専門医とのこまめでスムーズな情報共有と連携が必要
・地域、スタッフ、患者・家族、メンバに顔の見える緩和ケアを目指して

■病とともに地域で生きる(あおぞら診療所 川越正平先生)
在宅療養支援の中核をなす考え方=地域を病棟と捉える
・自宅が病院なら病室、地域の道路が廊下。在宅医や訪問看護師が巡回して、病棟に近い機能を提供(検査部、手術室以外)し、24時間365日の安心を提供する
・在宅医や訪問看護師が緊急訪問を保証することが、ライフラインと同様に重要

血液疾患患者の在宅医療導入例
・多発性骨髄腫で身体機能に障害→メルファランやサリドマイドによる治療を継続
・MDSに対して継続的輸血を必要としているが高齢、認知症、身体機能障害がある
・リンパ腫や白血病に対する負担の大きな治療を断念し看取り目的

専門医と在宅医への併診例
・化学療法後の食欲不振、嘔気に対する点滴
・白血球減少時のG-CSF連日投与
・腫瘍の皮膚浸潤に対する頻回の創処置 など
→まず地域の在宅医療機関や人材を把握する必要

治癒が勝利で死亡が敗北だけではない。病と共存する生き方も目標となり得る。生きている間の苦痛が少なく生活の質が高い状態が望ましい

「主治医」の見つけ方
・外来だけでなく往診にも取り組んでいる
・自分と相性がよさそうだという直感がきっかけ
・患者としての自分だけでなく、家族の健康さんに乗ってくれる
・急病の折に時間外でも相談に乗ってくれる
・自分の専門外のことは、きちんと他の専門医を紹介してくれる

■緩和ケアと在宅医療(青葉区メディカルセンター 藤田さん)
訪問看護師・ケアマネージャーであると同時に患者である
2007年2月 CML急性期で発症・入院
同年9月 骨髄移植、3ヶ月後に退院。筋肉量が落ちており、関節の痛みもあって介護保険検討
2008年2月 介護保険申請→要介助2/3と診断されるも申請受理されず
同年3-8月に訪問リハビリ(3割負担で医療保険を利用)→意思の指示が必要、訪問介護ステーションでサービス提供、週2回利用で月2.2-2.5万円
2008年10月 仕事復帰

■血液がんと在宅看護(あこもけあ在宅支援センター 所長・看護学修士 松木満里子)
・箱根の麓に在宅支援センターを設立
・医療保険の枠内だけではできない、保険外サービスで買い物やドライブも提供(外出支援)して、医療依存度が高い在宅患者に全面的なサポートを展開
・退院後の通院に介護タクシーを活用できる

諸問題
・介護保険を使えないと福祉用具は全額実費。但し保険適用外でもレンタル値段は安くなっているので家族への負担も小さくなる。業者に相談してみるといい
・感染症対策は実は病院にも菌はたくさんいる
・痛みや急な状態変化に対応してくれるサービスは広がっている

以上

2011年7月22日

つばさ支援基金 これまでの経緯(日経BP)

基金額はほぼ予想(二千万円)通りの金額でした。これまでの経緯が分かりやすくまとまっているので保存しておきます。

ソースは以下に貼り付けた日経BPがんなびの記事より。

(ここから貼り付け)
2011. 5. 2
高額な薬剤費負担を少しでも軽く―支援団体がCML患者を助成 「つばさ支援基金」が報告セミナーを開催
渡辺千鶴=医療ライター

高額な薬剤費負担により、治療継続を断念するがん患者が増えている。そんな患者を救うべく、血液がん患者支援団体「血液情報広場・つばさ」は、経済的問題を抱える慢性骨髄性白血病(CML)に対して医療費の一部を助成する活動を行っている。活動開始から半年が過ぎた今、どんな問題が浮かび上がっているのか。そして今後、がん患者の自己負担分の保障はどうあるべきなのか――。3月27日、東京都内で報告セミナーが開催された。

「つばさ支援基金」を創設し、経済的に困窮するCML患者の支援に乗り出した「血液情報広場・つばさ」理事長の橋本明子氏

高額な薬剤費負担により、治療継続を断念するがん患者が増えている。特に、慢性骨髄性白血病(CML)のように、治療薬を服用すれば飛躍的に生存期間が延びるがん患者にとっては非常に深刻な問題だ。

「失われた命は2度と戻ってこない。国の制度が不備であるという理由で、治療が間に合わないということがあってはならない」。こう訴えるのは、血液がん患者支援団体のNPO法人「血液情報広場・つばさ」理事長の橋本明子氏だ。

「血液情報広場・つばさ」は、CMLで長男を亡くした橋本氏が1994年に立ち上げた患者支援団体で、血液がんの患者やその家族を対象に治療や医療、療養に関する最新情報を提供してきた。さらに97年より電話相談業務にも参画し、患者や家族の悩みを直接聞いてきた。そして2010年10月に「つばさ支援基金」を創設し、経済的に困窮するCML患者の支援に乗り出した。患者支援団体による医療費支援は、わが国では初めての試みだ。

患者支援者、臨床医、学者らの思いが一つになり基金設立へ
3月27日に都内で開催されたつばさ支援基金報告セミナーでは、最初に橋本氏が「つばさ支援基金」発足までの経緯を語った。

橋本氏によると、07年頃から同法人が主催するフォーラムや運営協力する電話相談などで、CMLの薬剤費の高額化が問題になり始めたという。そこで09年12月に厚生労働省に対し、高額療養費の自己負担限度額の見直しを求めた要望書を提出。「しかし、国の制度の見直しを待っている間にもCML患者の経済的状況はさらに悪化し、高額な薬剤費が社会問題として取り上げられるようになりました」と、橋本氏は当時を振り返る。

国の制度改正を待っていては間に合わないと危機感を覚え、民間でできる救済策はないかと考えた橋本氏は、血液内科医をはじめ医療経済や法律の専門家とも話し合いを重ねるようになり、「つばさ支援基金」の構想が生まれたという。

橋本氏らは基金を立ち上げるために募金活動に奔走し、製薬企業や社会事業団、個人などの協力を得て2500万円余りの寄付金を確保。4人の臨床医や研究者で構成される諮問会議を設置し、助成の基準や期間を決めた。

手始めに、10年10月から11年3月を第1期助成期間とし、3つの条件(囲み参照)をすべて満たし、かつ高額療養費の自己負担額が月4万4000円以上になる患者を対象に、月額2万円を助成するという仕組みを作った。

※「つばさ支援基金」第1期助成の条件
(1)CMLと診断されて1年以上の治療を受け、現在も治療が必要な状態であること
(2)70歳未満であること
(3)年間の世帯所得の合計が132万円未満で、高額療養費の所得区分が「一般」に該当すること
そして、実際の対応業務は、電話相談事業などで協力関係にあり、個人情報保護態勢が整備されているNPO法人日本臨床研究支援ユニット(理事長:大橋靖雄氏)に委託することにした。

第2期助成では世帯所得の条件を引き上げ、支援対象者を拡大
「つばさ支援基金」の対応業務を委託されているNPO法人日本臨床研究支援ユニット理事長の大橋靖雄氏が、全国からの問い合わせ件数、助成申請件数、審査件数など、第1期の状況について報告した。

大橋氏によると、同基金の対応業務を委託された日本臨床研究支援ユニットのコールセンターには、助成募集を始めた昨年10月から今年3月までの半年間で、409件の問い合わせがあったという。「新聞やテレビで紹介されたことによる反響は大きく、1日に43件の問い合わせを受けた日もありました」と大橋氏は説明した。

409件のうち、患者本人や家族からの問い合わせは359件で、医療関係者や行政からの問い合わせもあった。患者・家族からの問い合わせのうち、CML患者・家族が74%を占めていた。また、1年以上治療を継続している患者からの問い合わせも80%に上った。

ところが、問い合わせは多くても年間の世帯所得の合計を132万円未満という条件を満たす患者が少なく、これまでに全国から申請されたのは32件で、実際に助成が認定されたのは18件にとどまった。「患者や家族から、世帯所得に関する条件を緩和して、支援の対象者を広げてほしいという要望が寄せられた」(橋本氏)。

このような反響や実績を基に、諮問会議で対象疾患や金額、条件、期間を改めて検討した。その結果、年間の世帯所得の合計を132万円未満から168万円未満に引き上げることになった。この見直しによって、この4月にスタートした第2期では月100人のCML患者の支援が見込まれている。

一方、助成対象疾患については、当面はCMLに限定することになった。橋本氏は「助成する対象疾患については引き続き検討したい。将来的には他のがんにも広げていきたいが、まずはCMLで支援の定型を作りたい」と話した。また、同基金では助成金を確保するために継続的に募金活動を行っており、セミナーの参加者からも資金確保のアイデアが提案された。

最適な治療が確実に続けられる環境を
これらの活動報告に続いてセミナーでは、がん患者の高額な薬剤費負担をどうすべきかということについても話し合われた。諮問会議の委員である東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科教授の黒川峰夫氏や、東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学准教授の福田敬氏、早稲田大学法学学術院教授の菊池馨実氏も参加し、それぞれ専門的な立場から解説した。

CMLの病態や治療法について解説した黒川氏は、分子標的薬の登場でCMLはコントロールできる病気となったが、現時点では内服薬を中止できるかどうか分かっておらず、医師の指示通りに内服を継続する必要があることを強調。その上で、「最適な治療を確実に続けられる環境を整備することが極めて重要だ」とコメントした。

また、近年、高額ながん治療薬や治療技術が登場し、医療費がさらに増える傾向にあり、その負担方法が課題となっていることを踏まえ、福田氏は日欧の自己負担の現状を比較。「英国では費用対効果に優れる技術や薬剤の使用を推奨し、原則として患者負担もない。フランスは重篤度に応じた自己負担になっており、がんの治療薬は公的医療保険において患者負担はない。このように患者の自己負担は、治療の費用対効果や疾病の重篤度に応じて設定されるべきだが、日本では、費用対効果に関係なく、原則3割の自己負担。高額療養費制度は使えるものの、高額な医療技術を用いる際には自己負担が大きい」と指摘した。

そして、「日本が、費用対効果や疾病の重篤度に応じた対応がすぐに実現できないのであれば、経済的な理由によって有効な治療が受けられないことがないように対策を講じる必要がある。つばさ支援基金はその1つの対策になると考えて、この活動に参加している」と語った。

日本の社会保障と医療費について持論を展開した菊池氏は、「国民の2人に1人ががんに罹患するという一般性を考えると、がん患者の自己負担分の保障は高額療養費制度などで十分に対応できるように見直すべき」と主張。そして「社会保障費や医療費について本格的な財源論を行う時期に来ている」とコメントした。

そして、最後に橋本氏が「薬剤費の高額化はがん医療全体にかかわる問題。多くの人が参加しやすく納得できる基金の体制を作りながら、今、困っている人に、今、支援できる人が支援するという理念に基づいてサポートしていきたい」と、改めて決意を述べた。

「つばさ支援基金」第2期助成 問い合わせ先
NPO法人日本臨床研究支援ユニット・臨床研究コールセンター 
0120-711-656(月~金10時~17時)

(貼り付け終わり)

2011年7月21日

最近のランチ事情

6月28日以降の一月弱(24日分)のランチ記録がございませんが、本日まで副作用が殆ど一切ございませぬ。久しぶりに一応覚えている範囲で書き記しておきます。

7/9: おにぎり、パン→母校の高二向け進路懇親会(職業紹介)に参加したためお昼は移動中に軽食。懇親会は「もしあなた達が校長になったら?」と​軽いワークショップをやったら、期待以上に学生の経営的センスが​高く、学生間の質疑応答も面白かったです
7/10: 炎天下の河原で野球練習後(久しぶりに20本くらい連続でノック受けたらへろへろ)に野菜カレー
7/16: 冷麺・チャーハンセット@日高屋
7/17: 法事後に豪華懐石ランチ、日本酒で気分良く酔っ払う@広島県 日本料理屋 三嵋
7/18: 徹夜での女子ワールドカップ観戦(最期まで諦めない、なでしこ達の素晴らしい試合でした。これ以外の勝ち方は漫画でも想像できない。事実は漫画より奇なり。)のため睡眠不足だったので、軽食で済ませたら予想通り気持ち悪くなりましたが、帰りの新幹線でiPad2でゲーム(FF3)をして紛らわしていたら大丈夫になりました。ビバ、スクエア・エニックス。
7/19: 夏野菜天せいろ大盛り
7/20: ちくわ・ホタテ・エビお茶漬けセット
7/21: おにぎり・唐揚げ弁当

来週水曜日に、5月の骨髄検査の結果を確認できるので、その数値が2月よりよくなっているといいなぁ。

2011年7月8日

グリベック持ち歩き用に、デスクに置いても格好いいドラッグケース

飲み忘れを防ぐため数日分のグリベック(とミオナール;筋肉のコリを解す薬)を入れる用のドラッグケースを探していて、結局楽天でこちらを購入しました。

サイズは38x38x19mmと小さいので、ポケットに入れても全然かさばりません。

ご覧のように3日分程度のグリベック+ミオナールだったら余裕で入ります。グリベックだけなら5-6日分位入ります。

あと、毎日携帯のアラームを設定して、飲み忘れ防止策にしております。

全国健康保険協会 東京支部 住所

高額療養費申請先の住所を備忘録的に残しておきます。申請書はこちらから。
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/9,0,123.html

とりあえず3月と5月分を申請したので数カ月後には50万円弱は帰ってくるはず!

〒141-8585
品川区大崎5-1-5 高徳ビル
全国健康保険協会 東京支部 宛

http://www.kyoukaikenpo.or.jp/13,0,84.html