2011年7月22日

つばさ支援基金 これまでの経緯(日経BP)

基金額はほぼ予想(二千万円)通りの金額でした。これまでの経緯が分かりやすくまとまっているので保存しておきます。

ソースは以下に貼り付けた日経BPがんなびの記事より。

(ここから貼り付け)
2011. 5. 2
高額な薬剤費負担を少しでも軽く―支援団体がCML患者を助成 「つばさ支援基金」が報告セミナーを開催
渡辺千鶴=医療ライター

高額な薬剤費負担により、治療継続を断念するがん患者が増えている。そんな患者を救うべく、血液がん患者支援団体「血液情報広場・つばさ」は、経済的問題を抱える慢性骨髄性白血病(CML)に対して医療費の一部を助成する活動を行っている。活動開始から半年が過ぎた今、どんな問題が浮かび上がっているのか。そして今後、がん患者の自己負担分の保障はどうあるべきなのか――。3月27日、東京都内で報告セミナーが開催された。

「つばさ支援基金」を創設し、経済的に困窮するCML患者の支援に乗り出した「血液情報広場・つばさ」理事長の橋本明子氏

高額な薬剤費負担により、治療継続を断念するがん患者が増えている。特に、慢性骨髄性白血病(CML)のように、治療薬を服用すれば飛躍的に生存期間が延びるがん患者にとっては非常に深刻な問題だ。

「失われた命は2度と戻ってこない。国の制度が不備であるという理由で、治療が間に合わないということがあってはならない」。こう訴えるのは、血液がん患者支援団体のNPO法人「血液情報広場・つばさ」理事長の橋本明子氏だ。

「血液情報広場・つばさ」は、CMLで長男を亡くした橋本氏が1994年に立ち上げた患者支援団体で、血液がんの患者やその家族を対象に治療や医療、療養に関する最新情報を提供してきた。さらに97年より電話相談業務にも参画し、患者や家族の悩みを直接聞いてきた。そして2010年10月に「つばさ支援基金」を創設し、経済的に困窮するCML患者の支援に乗り出した。患者支援団体による医療費支援は、わが国では初めての試みだ。

患者支援者、臨床医、学者らの思いが一つになり基金設立へ
3月27日に都内で開催されたつばさ支援基金報告セミナーでは、最初に橋本氏が「つばさ支援基金」発足までの経緯を語った。

橋本氏によると、07年頃から同法人が主催するフォーラムや運営協力する電話相談などで、CMLの薬剤費の高額化が問題になり始めたという。そこで09年12月に厚生労働省に対し、高額療養費の自己負担限度額の見直しを求めた要望書を提出。「しかし、国の制度の見直しを待っている間にもCML患者の経済的状況はさらに悪化し、高額な薬剤費が社会問題として取り上げられるようになりました」と、橋本氏は当時を振り返る。

国の制度改正を待っていては間に合わないと危機感を覚え、民間でできる救済策はないかと考えた橋本氏は、血液内科医をはじめ医療経済や法律の専門家とも話し合いを重ねるようになり、「つばさ支援基金」の構想が生まれたという。

橋本氏らは基金を立ち上げるために募金活動に奔走し、製薬企業や社会事業団、個人などの協力を得て2500万円余りの寄付金を確保。4人の臨床医や研究者で構成される諮問会議を設置し、助成の基準や期間を決めた。

手始めに、10年10月から11年3月を第1期助成期間とし、3つの条件(囲み参照)をすべて満たし、かつ高額療養費の自己負担額が月4万4000円以上になる患者を対象に、月額2万円を助成するという仕組みを作った。

※「つばさ支援基金」第1期助成の条件
(1)CMLと診断されて1年以上の治療を受け、現在も治療が必要な状態であること
(2)70歳未満であること
(3)年間の世帯所得の合計が132万円未満で、高額療養費の所得区分が「一般」に該当すること
そして、実際の対応業務は、電話相談事業などで協力関係にあり、個人情報保護態勢が整備されているNPO法人日本臨床研究支援ユニット(理事長:大橋靖雄氏)に委託することにした。

第2期助成では世帯所得の条件を引き上げ、支援対象者を拡大
「つばさ支援基金」の対応業務を委託されているNPO法人日本臨床研究支援ユニット理事長の大橋靖雄氏が、全国からの問い合わせ件数、助成申請件数、審査件数など、第1期の状況について報告した。

大橋氏によると、同基金の対応業務を委託された日本臨床研究支援ユニットのコールセンターには、助成募集を始めた昨年10月から今年3月までの半年間で、409件の問い合わせがあったという。「新聞やテレビで紹介されたことによる反響は大きく、1日に43件の問い合わせを受けた日もありました」と大橋氏は説明した。

409件のうち、患者本人や家族からの問い合わせは359件で、医療関係者や行政からの問い合わせもあった。患者・家族からの問い合わせのうち、CML患者・家族が74%を占めていた。また、1年以上治療を継続している患者からの問い合わせも80%に上った。

ところが、問い合わせは多くても年間の世帯所得の合計を132万円未満という条件を満たす患者が少なく、これまでに全国から申請されたのは32件で、実際に助成が認定されたのは18件にとどまった。「患者や家族から、世帯所得に関する条件を緩和して、支援の対象者を広げてほしいという要望が寄せられた」(橋本氏)。

このような反響や実績を基に、諮問会議で対象疾患や金額、条件、期間を改めて検討した。その結果、年間の世帯所得の合計を132万円未満から168万円未満に引き上げることになった。この見直しによって、この4月にスタートした第2期では月100人のCML患者の支援が見込まれている。

一方、助成対象疾患については、当面はCMLに限定することになった。橋本氏は「助成する対象疾患については引き続き検討したい。将来的には他のがんにも広げていきたいが、まずはCMLで支援の定型を作りたい」と話した。また、同基金では助成金を確保するために継続的に募金活動を行っており、セミナーの参加者からも資金確保のアイデアが提案された。

最適な治療が確実に続けられる環境を
これらの活動報告に続いてセミナーでは、がん患者の高額な薬剤費負担をどうすべきかということについても話し合われた。諮問会議の委員である東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科教授の黒川峰夫氏や、東京大学大学院医学系研究科臨床疫学・経済学准教授の福田敬氏、早稲田大学法学学術院教授の菊池馨実氏も参加し、それぞれ専門的な立場から解説した。

CMLの病態や治療法について解説した黒川氏は、分子標的薬の登場でCMLはコントロールできる病気となったが、現時点では内服薬を中止できるかどうか分かっておらず、医師の指示通りに内服を継続する必要があることを強調。その上で、「最適な治療を確実に続けられる環境を整備することが極めて重要だ」とコメントした。

また、近年、高額ながん治療薬や治療技術が登場し、医療費がさらに増える傾向にあり、その負担方法が課題となっていることを踏まえ、福田氏は日欧の自己負担の現状を比較。「英国では費用対効果に優れる技術や薬剤の使用を推奨し、原則として患者負担もない。フランスは重篤度に応じた自己負担になっており、がんの治療薬は公的医療保険において患者負担はない。このように患者の自己負担は、治療の費用対効果や疾病の重篤度に応じて設定されるべきだが、日本では、費用対効果に関係なく、原則3割の自己負担。高額療養費制度は使えるものの、高額な医療技術を用いる際には自己負担が大きい」と指摘した。

そして、「日本が、費用対効果や疾病の重篤度に応じた対応がすぐに実現できないのであれば、経済的な理由によって有効な治療が受けられないことがないように対策を講じる必要がある。つばさ支援基金はその1つの対策になると考えて、この活動に参加している」と語った。

日本の社会保障と医療費について持論を展開した菊池氏は、「国民の2人に1人ががんに罹患するという一般性を考えると、がん患者の自己負担分の保障は高額療養費制度などで十分に対応できるように見直すべき」と主張。そして「社会保障費や医療費について本格的な財源論を行う時期に来ている」とコメントした。

そして、最後に橋本氏が「薬剤費の高額化はがん医療全体にかかわる問題。多くの人が参加しやすく納得できる基金の体制を作りながら、今、困っている人に、今、支援できる人が支援するという理念に基づいてサポートしていきたい」と、改めて決意を述べた。

「つばさ支援基金」第2期助成 問い合わせ先
NPO法人日本臨床研究支援ユニット・臨床研究コールセンター 
0120-711-656(月~金10時~17時)

(貼り付け終わり)

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