2015年8月28日

記事紹介:慢性骨髄性白血病の再発を防ぐ治療薬の開発へ、広島大学グループが新しい発見(Medエッジ)

これは素晴らしいニュースです。既に治験を通っている安全な抗生物質をチロシンキナーゼ阻害剤(この研究ではイマチニブ)と一緒に取ることで、がん幹細胞をやっつけて再発可能性を下げることができるようです。まだマウス段階なのでこれから人間での治験をどんどん進めてほしいですね。

この研究は、早く治験を進めることでより多くの高額療養費にかかっている医療費を削減できますし、何より多くの患者のQoLが上がると思います。Quality Adjusted Life Years(QALYs)という概念(医療行為によって、健康な1年換算でどれだけ患者にとってインパクトがあるかを、サーベイをもとに指標化したもの。イギリスでは、1年QALYあたり2万ポンドくらいが医療費としてaffordableな限界というコンセンサスがあるようです)をPMDAも導入して、こういうQoLと医療費にインパクトがある治験はどんどん進めてほしいものです。

慢性骨髄性白血病(CML)において、抗がん剤治療後の再発の原因となる幹細胞の維持に必要な栄養源獲得のメカニズムがこのたび解明された。
 この栄養補給の阻害薬を既存の抗がん剤治療と併用することで、再発を防ぐ新しい治療法が期待される。
 広島大学などの研究グループが突き止めたもの。
Source: Med Edge, 2015

論文要旨(英語)のフォーカスはがん幹細胞の増殖メカニズムの解明にあるようです。
Understanding the specific survival of the rare chronic myelogenous leukaemia (CML) stem cell population could provide a target for therapeutics aimed at eradicating these cells. However, little is known about how survival signalling is regulated in CML stem cells. In this study, we survey global metabolic differences between murine normal haematopoietic stem cells (HSCs) and CML stem cells using metabolomics techniques. Strikingly, we show that CML stem cells accumulate significantly higher levels of certain dipeptide species than normal HSCs. Once internalized, these dipeptide species activate amino-acid signalling via a pathway involving p38MAPK and the stemness transcription factor Smad3, which promotes CML stem cell maintenance. Importantly, pharmacological inhibition of dipeptide uptake inhibits CML stem cell activity in vivo. Our results demonstrate that dipeptide species support CML stem cell maintenance by activating p38MAPK-Smad3 signalling in vivo, and thus point towards a potential therapeutic target for CML treatment.
Source: Naka K et al. 2015. 'Dipeptide species regulate p38MAPK-Smad3 signalling to maintain chronic myelogenous leukaemia stem cells.'

2015年8月12日

イギリス生活(9)過去最短の病院滞在時間

レセプションで受付して数分で血液検査、その後20分くらいしたら呼ばれてSpecialist Nurse(専門看護師:すべてを医者が診断するのではなく、診断が確定して慢性期で安定している患者はそれ専門の資格を取ったNurseが診察できる極めて効率的な仕組みになっています)との面談が5分程度、処方箋を待つのに10分程度、処方箋を近くのSainsbury'sの薬局にてグリベックに変えてもらうのに15分程度、全部で驚きの一時間程度ですべてのプロセス(受付、血液検査、診察、薬受け取り)が終わりました。

予約時間が午後3時と病院の中でも最後のほうであったことに加え、制度上会計がない仕組みにせよ(相変わらず妻の配偶者ビザで滞在しているニートに対して一切合切無料です、ありがたやありがたや)、この効率は学ぶべきところがあると思います。NHS自体は、非効率さが良くニュースになったりビジネスケースになったりしているものですが、隣の芝生は青く見える以上の無駄のない国民性を感じました。

診察ではヘモグロビンが減っていることが話題になりまして、過去のデータを取っていなかったのでこのたび昔の血液検査の結果もひっくり返して調べてみましたが、全くもって過去データの範囲内でした。むしろ、白血球数が増えている(正常に戻っている)のが気になるところです。先週おそらく友人からもらった咳の風邪とまだ闘っているのでしょう。