2012年3月29日

再発リスクの高いGIST患者にはイマチニブの術後3年間投与で転帰向上(日経メディカルオンライン)

日経メディカルオンラインに、GISTの再発リスクにイマニチブ(グリベック)の術後3年間投与が有意な結果になったようで、つばさ支援基金の支援対象・期間を考える上での一つの目安になりそうです。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201203/524230.html

癌Expertsニュース

2012. 3. 29

再発リスクの高いGIST患者にはイマチニブの術後3年間投与で転帰向上

大西淳子=医学ジャーナリスト
 消化管間質腫瘍GIST)は、原発腫瘍を完全に切除しても再発リスクは高い。スイスNovartis社は、2012年3月27日、再発リスクが高いGIST患者に対する術後のイマチニブ(商品名「グリペック」)投与期間を1年から3年に延長すると、5年無再発生存率と5年全生存率が有意に向上することを示した大規模フェーズ3試験の結果がJAMA誌3月28日号に報告されたと発表した。

 フィンランドHelsinki大学のHeikki Joensuu氏らは、1年投与と比較した3年投与の有意な生存利益を示した研究結果をASCO2011で報告している。

 オープンラベルの多施設試験は、フィンランド、ドイツ、ノルウェー、スウェーデンで行われた。2004年2月から2008年9月まで患者登録を実施。KIT(CD117)陽性のGIST患者で、原発腫瘍の完全切除を受けたが、再発リスクが高い(腫瘍の直径が5.0cm超で高倍率50視野あたりの分裂中の腫瘍細胞数が6個以上、腫瘍の直径が10.0cm超、腫瘍の直径は問わず高倍率50視野あたりの分裂腫瘍細胞数が11個以上、腹腔内播種あり、のいずれか)と判定された400人を登録し、手術から12週後までに400mg/日のイマチニブ投与を開始して3年間使用を継続するグループ(200人)と、1年間で使用を中止するグループ(200人)に割り付けた。2010年12月まで中央値54カ月追跡した。

 5年無再発生存率は、3年投与群で65.6%、1年投与群では47.9%で、ハザード比は0.46(95%信頼区間:0.32-0.65、p<0.01)になった。全生存率もそれぞれ92.0%と81.7%で、ハザード比は0.45(0.22-0.89、p=0.02)だった。

 ほぼ全員が投与期間中に有害事象を経験したが、忍容性は一般に高かった。3年投与群の25.8%、1年投与群の12.6%が、再発以外の理由でイマチニブの使用を中止していた。

 欧州では2012年2月に、これらのデータをもとにラベル改訂が認められ、KIT陽性GIST患者に対する3年間の投与が可能になっている。

2012年3月28日

グリベック(イマチニブ)と一緒に飲んではいけない薬

嫁が見つけてくれました。グループフルーツとセイヨウオトギリソウとアセトアミノフィンは知っていましたが、他にもいろいろあるんですね、病院で薬をもらうときには、医者が把握していない可能性があるので(現に去年風邪で某大学病院の血液内科でアセトアミノフィンを出されました、苦笑)その都度、薬剤師にチェックしてもらわないといけませんね。

出所:がんサポート情報センター
http://www.gsic.jp/cancer/cc_21/cml/sp/03c.html

注意すべき併用薬や食品
グリベックは他の薬と一緒に飲むと、その薬の影響を強く出させてしまったり、逆に併用薬がグリベックの作用を強め過ぎたり弱めたりすることがあります。
注意を要する代表的な薬は、抗生物質、高脂血症治療薬、催眠剤、抗不安薬などです。また、一部の健康食品やグレープフルーツジュースなどと一緒に摂取することを避けるよう指示されています。
グリベックの治療を受ける場合、他の薬を飲んでいたり、新しく飲みたい場合は、必ず主治医に相談してください。
[グリベックとの併用に注意する必要のある薬剤と食品]
薬剤名(製品名)薬の種類臨床症状
アゾール系抗真菌剤(フルコナゾール)水虫などカビによる感染症の薬グリべックの血中濃度が上昇し、グリべックの作用が強く出る可能性があります
エリスロマイシン(エリスロシンなど)抗生物質
クラリスロマイシン(クラリシッドなど)
フェニトイン(ヒダントールなど)抗てんかん薬グリベックの血中濃度が低下し、グリベックの効果が落ちる可能性があります
デキサメタゾン(オルガドロンなど)副腎皮質ホルモン剤
カルバマゼビン(テグレトールなど)てんかん、躁病などの薬
リファンピシン(リマクタンなど)抗結核薬
フェノバルビタール(フェノバールなど)不眠症や不安などの薬
セイヨウオトギリソウ
(セントジョーンズワート)含有食品
不安や気分の落ち込みに
よいとされている健康食品
シンバスタチン(リポバスなど)高脂血症(高コレステロール血症)の薬グリベックにより、これらの薬の代謝が抑えられ、これらの薬の血中濃度が上昇する可能性があります
シクロスポリン(ネオーラルなど)免疫機能を抑える薬
ピモジド(オーラップ)統合失調症や自閉症の薬
トリアゾラム(ハルシオンなど)不眠薬の薬
ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗剤
(アダラートなど)
高血圧や挟心症の薬
ワルファリン(ワーファリンなど)血液を固まらないようにする薬ワルファリンの血中濃度が上昇する可能性があります
アセトアミノフェン(ビリナジンなど)非ピリン系の解熱鎮痛剤
(市販のかぜ薬に多く含まれています)
肝臓障害作用が強く出る可能性があります
グレープフルーツジュースグリベックの血中濃度が上昇し、作用が強く出る可能性があります

2012年3月14日

4/26(木)やさしい科学技術セミナー「白血病ねらい撃ち」

4/26(木)やさしい科学技術セミナー@有楽町朝日ホール、で行われるセミナーに参加してこようと思います。タイトルが「白血病ねらい撃ち」とちょっとラブリーです。笑

CMLステーションから来たメールによると、『ラウリー博士の研究は、CML発症の引き金となるフィラデルフィア染色体が 生じるメカニズムを明らかにしたもので、CMLの分子標的治療薬開発の原点となりました。 また、ドラッカー博士とライドン博士は、フィラデルフィア染色体上の遺伝子からつくられる Bcr-Abl蛋白のはたらきを抑えることで、白血病細胞を劇的に減少させる CMLで最初の分子標的治療薬を開発しました。』とのことで、それらの方々にお会い出来るだけでも楽しみです。


http://www.japanprize.jp/seminar.html#CL  
 セミナー概要の転記
4月26日(木) 18:30~20:30
2012年(第28回)日本国際賞受賞記念講演会
テーマ
講師
〈パネルディスカッション〉テーマ
白血病ねらい撃ち
ジャネット・ラウリー博士(シカゴ大学 ブラム・リース特別教授)
ブライアン・ドラッカー博士(オレゴン健康科学大学 教授、ナイトがん研究所長)
ニコラス・ライドン博士(ブループリントメディスン社 創立者、取締役)
コーディネーター:満屋裕明先生(熊本大学医学部血液内科 教授)

〈講演〉テーマ
世界最強「ネオジム磁石」はこうして生まれた
佐川眞人博士(インターメタリックス株式会社 代表取締役社長)
定員定員:500名  ■お申込みはこちら
場所有楽町朝日ホール
http://www.asahi-hall.jp/yurakucho/access/index.html
東京都千代田区有楽町2-5-1有楽町マリオン11階
東京メトロ銀座線C-4出口
参考資料Japan Prize News No.47 (PDF, iPhone, iPad, Androidの方はこちら)

    受賞者発表記者会見の様子

ノバルティス、安価なジェネリック医薬品の排除を狙いインドで訴訟(swissinfo)

3月下旬にインドで係争になっていたイマチニブ(グリベック)の特許判決が出るそうです。短期的な患者の利益(=安価な新薬)と、長期的な患者の利益(=継続的開発による画期的新薬)という難しい相克ですが、3月28日のニュースを忘れずにチェックしようと思います。

http://www.swissinfo.ch/jpn/detail/content.html?cid=32282558

2012-03-13 11:00

ノバルティス、安価なジェネリック医薬品の排除を狙いインドで訴訟

ニューデリーでノバルティスへの抗議デモに参加する人々
ニューデリーでノバルティスへの抗議デモに参加する人々 (Keystone)
 クレア・オデア, swissinfo.ch

インド最高裁判所は3月下旬、スイスの製薬会社ノバルティス(Novartis)が申請していた抗がん剤「イマチニブ(商品名グリベック)」の特許をめぐる争いで判決を下す。

特許が認められれば、インドのジェネリック医薬品(後発医薬品)産業がダメージを受け、薬を買えない人が増えると、多くのNGOが批判している。

 ノバルティスに対するNGOの反対運動は2007年ごろから活発になってきた。NGOは、ノバルティスが既存薬の化学構造をほんの少し変えて特許の有効期限を延長する「エバーグリーニング(evergreening)」を行っていると非難している。

 反対運動を行っているのは、ベルン・デクラレーション(Bern Declaration)、オックスファム(Oxfam)、国境なき医師団(MSF)など国際的なNGOだ。国境なき医師団は、「もしノバルティスが勝訴すれば、インドでも先進国並みに特許が認められることになり、既存薬の化学構造を新しくしただけの医薬品も特許となってしまう。インドは途上国に安価で質のいい薬を供給できなくなるだろう」と訴える。

 一方ノバルティスは、インドは特許制度においてほかの製薬大国と同じラインに立つべきだと話す。また、同社が勝訴した場合でも、ジェネリック医薬品企業は特許が切れた医薬品を今後も製造できると主張する。

 ノバルティスが求めるのは知的財産の保護だ。「何の研究もせずに我が社の医薬品をコピーし、模倣品を安く供給して我々のビジネスを妨げるようなことはしてもらいたくない」。ノバルティス研究部門部長のパウル・ヘルリング氏はスイス国営放送(SRG/SSR)に対しそう話した。

何が新しいのか?

 裁判で特許が争われているのは、ノバルティスが1993年に開発した分子化合物「イマチニブ」。これがさらに発展したものが、医薬品ベストセラー「グリベック(Glivec)」で、世界40カ国で特許を取得している。

 先進国の多くでは特許制度が歴史的に長く確立されているが、インドが医薬品の特許制度を開始したのは2005年と新しい。インドの特許制度で特別なのは、既存薬の化学構造を変えただけの医薬品には特許を認めないとする条項があることだ。ヨーロッパで特許申請される医薬品のほとんどがこの「新しく改良された」医薬品だが、ノバルティスは、グリベックはそうした類ではないと強調している。

 ノバルティスは同社ホームページで次のように主張する。「開発には何年もかかっており、単に漸進的に改良された医薬品ではない。従って、『エバーグリーニング』と捉えることは全くできない」

 しかし、ジェネリック医薬品製造会社やインドがん患者支援協会(Indian Cancer Patients Aid Association)から圧力がかかるインド特許局は2006年1月、グリベックの特許申請を却下。グリベックは既存のイマチニブと同じ構造で、「改善された効果」のある本物のイノベーションではないことを理由とした。

 これがきっかけとなり、法廷紛争が勃発。すべての決着は、3月28日のインド最高裁判所の判決でつけられるが、一体どうしてここまで争いが発展することになったのだろうか?

 「ノバルティスが規制環境の整備に向けて先頭を切ることがよくあるからだ」と答えるのは、製薬業界に詳しいアナリストのカール・ハインツ・コッホ氏だ。ノバルティスがインドに関心を示す理由には、インドにジェネリック医薬品産業があるだけでなく、その市場価値が大きいこともあると分析する。「人口の多さだけでも、インドの新興市場は最重要市場の一つ。また、インドの中流階級にはグリベックのような比較的高価な抗がん剤を購入できる余裕がある」

オープンなビジネス環境

 NGOは「ノバルティスは途上国の製薬産業を攻撃している」と批判しているが、ノバルティスは、インドの実態はNGOが主張するようなものではないと否定している。その理由に、インドのジェネリック医薬品企業はどこよりもまず先進国で最も多く医薬品を売りさばいていることを挙げている。

 それに対し国境なき医師団のミッシェル・チャイルズ氏は「馬鹿げている」と切り捨てる。「ノバルティスがこのような主張をするのは極めて予想外。国境なき医師団や国連エイズ合同計画(UN Aids)などの団体はARV(抗レトロウイルス薬)の9割以上をインドに頼っている。抗マラリア剤やワクチンの購入も増えている」

 ノバルティス側の意見を書面で問い合わせたところ、ノバルティスは同社ホームページに書かれた陳述を繰り返した。「インドのジェネリック医薬品企業は製品の大半を利益が見込まれる市場に輸出している。薬が買える購買力があれば医療体制が改善するというわけではない。薬の入手には、政治や経済、物流が障壁となっている」

HIVの危険性

 ノバルティスはグリベックをめぐる訴訟を次のように説明する。「この訴訟はインドでの特許法適用を明らかにするものであり、インド経済の将来にとって重要な意味を持つ」

 インドが今回のように国際法の下で特許権を保護しにくくしようとしているのは偶然ではない。インドはジェネリック医薬品の輸出大国であるため、特許権の拡大は国内のジェネリック医薬品産業への打撃を意味する。そのため、インドは医薬品に特許を安易に認めたくはないのだ。

 一方NGOが危惧するのは、ノバルティスが勝訴した場合、特許権保護が適用される医薬品がインドで増加し、薬が入手できない貧しい患者が世界中で増えることだ。その理由をチャイルズ氏はこう語る。「例えば、我々には2種類以上の薬から成る混合薬や子ども用医薬品が必要だが、法律が変わるとこうした医薬品にも特許が適用できるようになってしまう」

 「それは間違っているうえ、誤解を招く」とノバルティスは反論する。抗HIV薬などの医薬品へのアクセスは今回の訴訟で妨げられることはないと述べ、「2005年以前にインドで販売開始され、今も入手可能なジェネリック医薬品は訴訟の結果に関係なく今後も販売可能だ」と主張する。

 ノバルティスもNGOも全く異なる活動を行っているが、双方ともに人の命を救うをことを生業にしている。判決次第ではどちらも今後の活動が大きく変わるかもしれない。ニューデリーの判事が法廷の席に着く日、ノバルティスもNGOも胸の鼓動を抑えることはできないだろう。

クレア・オデア, swissinfo.ch
(英語からの翻訳・編集、鹿島田芙美)



インドの特許制度事情

インドは2005年1月1日から、世界貿易機関(WTO)が定める知的財産に関する規定を採用している。だが、インドの国内法は1995年以前に特許を取得した医薬品や、既存薬の化学構造を新しくしただけの医薬品には特許を認めていない。

ノバルティスは、「グリベック(Glivec)」の有効成分であるイマチニブのベータ型結晶の特許登録を申請したが、インド当局はこれを既存化合物が改良されたものとみなし、却下。一方、この結晶は40カ国で特許が認められている。

NGOによれば、インドでは毎年2万5000人が慢性骨髄性白血病にかかっている。

グリベック(Glivec)

ノバルティス製造のグリベックは慢性骨髄性白血病におけるがん細胞の広がりを抑え、特定の胃がんの再発リスクを抑える医薬品で、2001年から販売されている。

ノバルティスの発表では、グリベックの昨年の売り上げは47億ドル(約3870億円)。

グリベックはがんを抑制することはできるが、なくすことはできないため、治療は一生涯続ける必要がある。

病状や投薬量に応じて、費用は年間4万ドル(約320万円)から9万8000ドル(約800万円)かかる。