2011年12月30日

記事紹介:日本人CML患者の研究に関する記事3本(日経メディカルオンライン)

日経メディカルオンラインに、昨年10月の日本血液学会のCMLに関する発表の興味深い記事が載っていたようです。

イマチニブ使用の日本人CMLは予後良好だが欧米に比べlate responderが多い【血液学会2011】
→グリベックで細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)に1年で到達する人は6割程度だが、6年では94%!と高くなり、また7年半後の生存率は95%!と極めて高い(無憎悪生存率=病気進行がない生存も同レベル)ということから、「日本人では3割以上がlate responder(反応が遅い人)である」ということです。これだけ読むと「なんだ、グリベック飲んでればいいじゃん・・・」という気になりますが・・・。

日本人CMLのイマチニブ治療でCMRが24カ月以上あれば投薬中止しても無再発生存率が高い可能性【血液学会2011】
→CMLで薬飲んでいる人がみんな気になっている「いつか薬を止められるのか?」という疑問に対しては、分子遺伝学的完全寛解(CMR、要は白血病細胞が検出限界未満で見つからない状態)を2年以上続けた人が薬を止めた場合には(調査時点での)無再発生存率が78%で、2年未満CMRの人の15%と比べると統計的に有意に高いことが分かったそうです。当然、再発をチェックするために定期的な通院や血液検査は欠かせない生活でしょうが、それでもずっと望ましいことは間違いがないので、早めにCMRまで持っていくことが大事になりそうです。


初発の日本人慢性期CMLに対するニロチニブ、24カ月時の解析でも優れた分子遺伝学的効果【血液学会2011】
→こちらは、グリベックよりもタシグナの方が、CMLのファーストライン治療としても有効ではないか、という発表です(疑問形なのはサンプル数が比較治療ごとに20~30名のため一応)。どれくらいの差があるかというと、2年以内に分子遺伝学的寛解(MMR)に達成した割合が、タシグナが7-8割なのがグリベックだと4割という差があったということです。2年以内の分子生物学的完全寛解(CMR)だと、タシグナが4-5割なのに対してグリベックだと3割未満。

ここまで読んで考えるに、今年一年飲んで治療が進展しないようだったらタシグナに切り替えるかな・・・でも副作用が重そうなのが悩ましい。あと長く生きる前提では、グリベックが効かなくなった時のオプションは残しておくに越したことがない気もします。むー。


なお、無イベント生存、無病生存などの医療論文用語については、がん情報センターのこの表が分かりやすいです。


無イベント生存events free survivalEFS再発、増悪、合併症などがなく生存
無病生存disease free survivalDFSほかの病気が発生することなく生存
無増悪進行生存progression free survivalPFS病気が進行することなく生存
全生存overall survivalOSすべてを含めた生存
無再発生存relapse free survivalRFS病気が再発しないで生存している
治療奏効維持生存failure free survivalFFS治療効果が持続している期間
無進行期間time to progressionTTP進行するまでの期間

2011年12月27日

CML適応四薬の副作用比較(2014年10月ボシュリフ追加)

グリベック(イマチニブ)、タシグナ(ニロチニブ)、スプリセル(ダサチニブ)、ボシュリフ(ボスチニブ)の四薬の副作用を、グラフにして比較できるようにしてみました。(こちらのページも更新)



比べて眺めた要点を以下にまとめておきます。
→は自分の副作用状況を鑑みた個人的なコメントです。

・発疹は3つのどの薬でも3-5割の高い割合の患者で起きている
→幸いにして発症していないのは、肌が強くないことを考えるとありがたい

・血球減少や貧血といった血液系の副作用もどの薬でも出ているが、グリベック・タシグナと比べるとスプリセルの患者に特に多く血球減少は2/3前後の患者に起きている
→これはしょうがないので付き合って生活の中で慣れていくしかない

・嘔気/悪心や嘔吐はグリベック、タシグナでは発生しているがスプリセルにはない
→これは日常生活においては結構なメリット、ただし食後にきちんと飲めばほぼ回避可能というのが経験則

・第二世代のタシグナ・スプリセルは頭痛・発熱といった活動しにくくなる副作用も3割程度の患者で発生しており、さらにタシグナは高ビリルビン血症(黄疸)や高血糖、スプリセルは、浮腫や胸水といった独自の副作用も2-3割の割合で起きている
→副作用が重くなるように思えるので、グリベックが効くならありがたい


2011年12月24日

イレッサ事件判決を受けて(医療ガバナンス学会)

肺がん治療薬イレッサ(一般名・ゲフィチニブ)の副作用を巡る訴訟の控訴審判決で、東京高裁が1審判決を覆して国と企業の賠償責任を否定しました。リンク先の医療ガバナンス学会が導入経緯とその訴訟に至る構造を解説しておりわかりやすかったです。

知り合いの医者に聞いたところ、この薬は手術もできない患者に対して効いてどんどんがんが小さくなった、ということがあるらしいので、やはり使い所の問題なのかなと思っています。

この文章では「プロ意識に欠如した医師によるエビデンスに従わない安易な過剰投与」と結論付けられていますが、患者としては「効くかもしれない」のならば薬効外(イレッサの場合は乳がんやすい臓がん)でも自由診療でお金を相当払っても試してみたい、という気持ちは分かりますし、自分が医者、患者どちらの立場になったときにも100%否定できるとはとても思えません。悩むとは思います。

しかしながら分野別に発展を重ねた現代医療においては、目の前の医者が全てをわかっていて白紙委任ですべて委ねても大丈夫ということは残念ながら医者もスーパーマンではないのであり得なく(たまたま担当になった場合や希少疾患の場合は特に)、きちんとした事前説明はあったのだろうと思いますが、そのような切羽詰まった段階ではなく、少なくともリスク(副作用)のないリターン(効果)はない、ということだけでも義務教育のどこかできちんと周知徹底するべきかなと思います。

あと、中立を謳うマスメディアこそ、得意の両論併記をこういうエビデンスベースな科学的な分野にこそ保持して欲しいところです。

2011年12月11日

親知らずとロキソニン

ポップコーンの破片か何かが挟まったかで下顎の親知らずの回りが炎症になってしまい、なかなか治らなくて困っていたところ、ロキソニンを一錠飲んだらぴたっと痛みがやみました。ここまではっきりと効いた薬は久しぶりであります。

歯医者には、親知らずが深く神経まで触っているので結構大掛かりに抜く必要があるがCMLのことも考えるとクリニックでは無理なので大学病院行ってくださいと言われているので、次の検診のときに先生に相談するのを忘れないようにしないといけませんね。

2011年12月5日

「2011/12/4 つばさ支援基金報告セミナー」のメモ(前半のみ)


前半部分のみ(=支援基金への申し込み状況と対象3疾患の概要)参加してきました。

CMLについては既知の内容でしたが、MDSとGISTについては全く知らなかったので勉強になりました。先生方、分かりやすいプレゼンをありがとうございます。後半の患者からの声、医療費問題についてもWeb上で簡易の報告があるとありがたいのですが。。。

■第三期になってからの申し込み状況(日本臨床研究支援ユニット 大西さん)
・生活保護など非課税の方は対象外で、一定以上の所得があり、第三期からは一方で子供の人数を換算して生活状況を加味
・問い合わせへの対応コールセンターをNPO日本臨床研究支援ユニットが受付
・累計で838件の架電中で、宮城・鳥取の二県からはいまだゼロ
・平均すると毎月十件程度の申請申し込み(継続含む)、累計125件を審議
・助成件数は95件で全てCML、MDSとGISTはこれから

■MDS 骨髄異形成症候群(荏原病院 秋山秀樹先生)
・MDSによる骨髄の機能低下に対し、赤血球は輸血ができるが白血球はできない。血小板は一時的な輸血は行われることはあるが実際には継続困難
・一定の比率で「白血病」化とでもいうべき病状進行になる
・最近まで有効な寛解維持の薬がなく、唯一の治療法は骨髄移植のみ
・IPSS、国際予後分類によるリスク度合いにより、2年程度から10年まで死亡に至る時間が異なるので正しい分類が必要
・ハイリスクの人達は移植によるメリットを受けるが、ローリスクのひとは移植によるデメリットが大きい
・2010、11年年になってレナリドミド(レブラミド)、注射用アザシチジン(ビダーザ)という新薬が承認され、長期寛解維持の可能性が出てくるが新薬は非常に高く薬価ベースで月に100万円程度!かかる

■GIST、消化管間質腫瘍(大阪警察病院 西田俊朗先生)
・GISTとは骨肉腫の親戚、内側の筋肉層にできるのがGIST。ちなみに癌とは粘膜細胞や粘膜下層などの表面細胞の変異
・発生頻度は年間で10万人に1-2人と少ない。ただし、60代の胃の十人に1人は芽があるらしい
・粘膜下腫瘍は偶然に見つかり、表面が粘膜で覆われているため潰瘍等にならなければ自覚症状はほとんどない。気づいたら肝臓転移や腹膜播種ということも。術後三年は三割が再発で長期には四割程度が再発
・術後の再発防止にキナーゼ阻害剤としてイマチニブ。効果は遺伝子変異によるので注意が必要。但し、飲んでもGIST細胞は根絶されないので血中濃度を保ってきちんと飲み続ける必要。
・イマチニブ(グリベック)も二年経ったら四割が効かなくなる。セカンドラインはスニチニブ(スーテント)だがより『抗がん剤』らしいといってはあれだが副作用が大きい
・現在開発が進んでいる新薬(名称聞き漏らし)はグローバル・フェーズ3(大規模な患者の服用によるエビデンスの確立)の段階まで進んでおり、フェーズ2(少数患者の服用による効果・安全性確認)は想定よりも大幅にポジティブな結果

ここまでで別件があり途中退出しましたが、色々考えることができました。特に事業的に考えたキー・クエスチョンは2つです。この2つに対する仮の答えを出したいですね。
1・ビジネスの問題、すなわち付加価値を付けて対価を取りに行くか、再分配の問題、すなわち非営利でコスト回収、どちらを目指すべきか
2・薬価が高すぎる、、、希少疾患はすべてこのようなエコノミクスでないと成立しないのか、既存Pharmacoへのアタッカーとして参入できないか

2011年12月3日

柏レイソル優勝

柏レイソルがJ1初優勝を達成しました。J2優勝=昇格から1年目の優勝は、今後もなかなかありえない記録だと思います。超アウェイの浦和レッズで、敵サポーターのブーイングと大声援にも負けずに勝って優勝を決めてきました。大ファンの嫁が泣いており、僕も嬉しかったです。

試合開始前の一文字。正面でないので見難いですが「柏」です。後半はこの写真に写っているビジター席の上側から応援しました(買った席がバックスタンドのど真ん中で回りがレッズで真っ赤だったので身の危険を感じて)


ビジター席からみるとこんな感じでした。優勝が決まって選手・スタッフ・サポーターが喜びを爆発させているシーン。回りは真っ赤で、ビジター席も半分なので四面楚歌ならぬ三・五面楚歌な雰囲気が伝わるかと。

2011年12月2日

「2011/12/4 つばさ支援基金報告セミナー」のお知らせ

日曜日につばさ支援基金第3期の報告セミナーがあるようなので一部参加してこようと思います。

第3期は対象疾患をMDS(骨髄異形成症候群)、GIST(消化管間質腫瘍)にも拡大して、控除後収入の水準もだいぶ緩和していたので支援結果をお聞きするのが楽しみです。
元リンクはこちら

つばさ支援基金第3期対象(引用)
助成対象疾患:
・CML(慢性骨髄性白血病)
・MDS(骨髄異形成症候群)
・GIST(消化管間質腫瘍)
助成対象条件:
・所得168万円までの家庭の、上記3種いずれかの成人患者
・所得240万円までで、高校生までの子どもが1人以上の家庭の、上記3種いずれかの成人患者 ・所得380万円までで、高校生までの子どもが2人以上の家庭、上記3種のいずれかの成人患者 
※いずれも所得とは総収入ではありません(諸控除後の収入です)。 

(以下貼り付け)

つばさ支援基金報告セミナー
第3期・助成対象を拡大して
これまでの詳細レポートと今後への展望
●参加呼びかけ対象:がん医療費に関心のある全ての方

●配布資料予定:つばさ支援基金寄附状況、事業報告、
●配布資料予定:助成対象疾患ネットワークの諸活動、ほか
日 時:2011年 12月 4日(日)午後1時〜4時
会 場:AP西新宿ビル 会議室
会 場 (東京都新宿区西新宿7-2-4 新宿喜楓ビル)
参加費:無料
プログラム
司会:NPO法人血液情報広場・つばさ 橋本 明子

1. つばさ支援基金の問い合わせ状況等の解析と解説
NPO法人日本臨床研究支援ユニット/JCRSU・臨床研究コールセンター 大橋 靖雄 先生
2.助成対象疾患 —病態と長期寛解維持を可能にした治療についての解説
●慢性骨髄性白血病・CML … 東京大学医学部附属病院血液・腫瘍内科 市川 幹 先生
●骨髄異形成症候群・MDS … 都立荏原病院 内科 秋山 秀樹 先生
●消化管間質腫瘍・GIST … 大阪警察病院 外科 西田 俊朗 先生

3.医療費問題の実感を語り合う
●現場からの治療費実感 —CML患者さんへのアンケート活動から抜粋
慢性骨髄性白血病患者・家族連絡会「いずみの会」 田村 英人 さん
●新規助成対象への想い
GIST・肉腫患者と家族の会「GISTERS.NET」 西舘 澄人 さん
骨髄異形成症候群 MDS連絡会 星崎 達雄 さん
●受給者からの手紙
●医療現場で患者さんに対応してきて ほか

4.医療費と日本の今、これから
●高額な治療と社会保障
早稲田大学法学学術院
菊池 馨実 先生
●いま問われているがん医療費とこれからの日本の医療費
国立保健医療科学院研究情報支援研究センター
福田 敬 先生
5.フリートーク
はじめに つばさ支援基金を運営して、痛切に感じたこと
日本全体で連動していくべき方向性を考える
フロアから / パネラーの方々から
■お問い合わせ

NPO法人血液情報広場・つばさ
03-3207-8503(月〜金 12時〜17時)

つばさ支援基金(NPO法人JCRSU・臨床研究コールセンター)
0120-711-656(月〜金 10時〜17時)