2012年8月1日

CML患者が海外留学をするための治療費の問題


まず海外療養費という制度があり、海外で支払った治療費(薬剤含む)と同じ医療行為の日本での治療費(薬剤含む)を比較して安い方をベースにして、自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額が支給されるようです。

(引用)
日本国内の医療機関等で、同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額(実際に海外で支払った額の方が低いときはその額)から自己負担相当額(患者負担分)を差し引いた額を支給します。
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/13,54413,94,151.html
(引用終わり)

例えば、国内での医療費は3カ月ごとにおおよそ100万円(健康保険及び高額療養費制度適用前、3か月分のグリベック含み)ですが、これが海外で仮に200万円の場合は差額の100万円は自己負担!になり、残りの100万円は高額療養費の制度によって自己負担は8万円とかになるんですね。逆に海外で仮に50万円だった場合にはその額が給付のベースになるようですが、3割負担でも15万円の支払いなので、さらに高額療養費適用になるようです。

なので、グリベックの値段が海外の方が相当に高かったら、ロンドン・東京往復15万円くらいの航空券チケット払ってもそちらの方が割安になり、今の先生で継続できるメリットもあるので、半年に一回日本に帰ってくる方式がよさそうですね。これ、高度医療社会において若者の教育機会を妨げない事業、とかで補助金くれるところないかなぁ。ないだろうなぁ。

ところが、現在の為替レートでは海外の方がグリベックが安いことが判明しました。これだと一年当たり薬価で100万円以上安いので、骨髄検査や血液検査の費用入れても総額の医療費は安いかもしれませんね。ただ、結局相当に円高が進まない限り高額医療費の範囲内*なので、支払う額は為替リスク(下記)を除けば変わらないという結論です。

*次段落で£=60円試算していますがそれでも基本的には高額療養費適用

(引用)
外貨で支払われた医療費については、支給決定を行う日の外国為替換算率(売りレート)により円に換算し、支給額を計算します。
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/13,54413,94,151.html
(引用終わり)


為替リスクとしては、現地通貨で医療費支払いしてから、日本で支給決定を受けるまでに急激に円高が進むと、見かけの医療費が下がって支給額が下がるリスクが考えられますが、これはよほどの円高でない限り高額療養費制度の中で吸収されそうです。

例えば、1£=60円(今の円高相場のさらに半分)になっても3ヵ月分グリベックは31万円(ポンド建てで購入前提、£14.37×4錠/日×60円/£×90日)になるので、高額所得者扱いされると普通の3割負担ですが、一般所得者扱いされていれば多数回該当で結局44,000円程度に落ち着くということですね。逆の円安リスクは、3ヵ月分グリベックを購入の前提だと、結局のところ高額療養費の中で吸収されますね。


むしろ薬の3カ月以上の処方の前例を作る方が難しいかもしれません。3カ月処方を2枚もらい、片方を「長期の旅行等特殊の事情」によって半年は有効(んで、途中で両親とかに受け取りお願いして海外輸送)とかじゃないと、さすがに学期の途中に3カ月ごとに日本に戻ってくるとか面倒すぎるので。薬が現在の円高レートのおかげで思いのほか安いことが判明したため、最悪三か月に一回分だけは現地で診察受けて薬も買い、半年に一回は骨髄検査受けに日本に帰ってくるといった組み合わせが一番よいかもしれないですね。

以下、上の結論を導き出すまでに調べた参考情報です。(2012年8月1日時点)

・海外療養費が高額療養費の適用になるのかどうか
会社で入っている健康保険組合に問い合わせた結果、日本の医療費は欧米より安いことが多いので場合によってはかかった費用の1割もお返しできない場合があるとのこと。ただし、日本の標準治療でも3割負担で高額療養費に該当する金額ならば、高額療養費制度は適用されて負担額は抑えられるとのことです。

・民間保険
http://www.aiu.co.jp/travel/price/plan/study-price.html
AIU保険による海外留学保険に問い合わせて確認しましたが、31日を超える長期滞在については、持病による治療費を一切補償できないとのことでした。ま、保険だからそりゃそうやね。

・英国でのグリベックのお値段
https://secure.novartis.co.jp/direct/index.html
ノバルティスダイレクトに問い合わせたら、翌日に電話で回答がありました。さすが大企業。

100mg錠剤と400mg錠剤の二パターンあるらしいですが、100mgの方は一箱60錠で£862.19、400mgの方は一箱30錠で£1,724.39で、結局のところ100mgあたり£14.37と同じ水準のようです。後ほどこれらの値段は、NHS(National Health Services)参加のNeLM(Natioanl electronic Library for Medicens)のページでも確認できました。
http://www.nelm.nhs.uk/en/NeLM-Area/News/2010---December/10/Novartis-announces-7-price-increase-of-imatinib-Glivec/

これを、現行レートの1£=125円で日本円に換算すると1錠約1,800円と、日本の現行の薬価1錠2749円から比べると35%も安くなり、1£=約190円になるまではポンド建てで英国で購入した方がお得なようです。

・投薬/処方期間の限度について(保険医療機関及び保険医療養担当規則)
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S32/S32F03601000015.html
第二十条  医師である保険医の診療の具体的方針は、前十二条の規定によるほか、次に掲げるところによるものとする。
二  投薬
 投薬は、必要があると認められる場合に行う。
 治療上一剤で足りる場合には一剤を投与し、必要があると認められる場合に二剤以上を投与する。
  同一の投薬は、みだりに反覆せず、症状の経過に応じて投薬の内容を変更する等の考慮をしなければならない。
 投薬を行うに当たつては、薬事法第十四条の四第一項 各号に掲げる医薬品(以下「新医薬品等」という。)とその有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が同一性を有する医薬品として、同法第十四条 の規定による製造販売の承認(以下「承認」という。)がなされたもの(ただし、同法第十四条の四第一項第二号 に掲げる医薬品並びに新医薬品等に係る承認を受けている者が、当該承認に係る医薬品と有効成分、分量、用法、用量、効能及び効果が同一であつてその形状、有効成分の含量又は有効成分以外の成分若しくはその含量が異なる医薬品に係る承認を受けている場合における当該医薬品を除く。)(以下「後発医薬品」という。)の使用を考慮するとともに、患者に後発医薬品を選択する機会を提供すること等患者が後発医薬品を選択しやすくするための対応に努めなければならない。
 栄養、安静、運動、職場転換その他療養上の注意を行うことにより、治療の効果を挙げることができると認められる場合は、これらに関し指導を行い、みだりに投薬をしてはならない。
 投薬量は、予見することができる必要期間に従つたものでなければならないこととし、厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬については当該厚生労働大臣が定める内服薬及び外用薬ごとに一回十四日分、三十日分又は九十日分を限度とする。
 注射薬は、患者に療養上必要な事項について適切な注意及び指導を行い、厚生労働大臣の定める注射薬に限り投与することができることとし、その投与量は、症状の経過に応じたものでなければならず、厚生労働大臣が定めるものについては当該厚生労働大臣が定めるものごとに一回十四日分、三十日分又は九十日分を限度とする。
  処方せんの交付
 処方せんの使用期間は、交付の日を含めて四日以内とする。ただし、長期の旅行等特殊の事情があると認められる場合は、この限りでない。
 前イによるほか、処方せんの交付に関しては、前号に定める投薬の例による。

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